花と果実のある暮らし in Chiang Mai

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第10回:チェンマイ、ゆるめの手術体験!?
2014年02月21日

【written by 馬場容子(ばば・ようこ)】東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
【最近の私】"静養生活もほぼ一ヶ月に。入院当初はパートナーのナリンも「僕が面倒見るから!」とはりきって車椅子を借りてきたり、おぶって2階へ連れてってくれたり...そんな甘い時期もどこへやら。今は放り出された感が否めず。自分の足で歩ける日を恋しく思う日々。。。
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"ブチッ"という音。テニスをしていた私は、へとへとっとコートにしゃがみこみました。駆けつけてくれたベテランプレーヤーの「すぐに病院へ!」というアドバイスのもと、パートナーのナリンにおぶられ、即病院へ。10数年ぶりにテニスを楽しんだのもつかの間、アキレス腱断裂、即手術、ギブス生活6週間という診断結果・・・。

■特効薬はドラえもんの歌!?

海外生活で初めての手術。そう言われてもピンとこないし、悠々と構えていた私も、いよいよストレッチャーに乗せられて緑の布と帽子を被る段階になると、急に心臓がドキドキばくばく。

手術室へ向かう途中、女性の看護士さんが「大丈夫?」としきりにタイ語で話しかけてくれましたが、心細さは増すばかり。そんな時、横についてくれた男性の看護士さんが突然、「こんにちは、のび太」と日本語で話しかけてきて、ドラえもんの歌を歌い始めたのです。

確かにタイで日本の大人気アニメといえばドラえもん。日本人患者への心遣いでしょうが、この場面に? しかも大人の私に?と、初めは困惑したものの、やっぱり心が暖まるものです。このドラえもんパワーのおかげで私の中のピークに達していた緊張はほぐれ、手術室に入った時にはすっかり肝が座ったのでした。

タイ語と英語で段取りを説明されながら、麻酔でウトウト。眠ってしまったかと思ったら、ほんの一時間で手術は無事終了。
当初の入院予定は3日でしたが、術後先生にいただいたのは「小さな傷で済んだし安定しているので、もう退院したければしてもいいですよ」というゆるいアドバイス。その通り、1日で退院できました。

そして家での安静生活がスタートしたのです。

Photo1. 道端に咲く小花.JPG
 道端に咲き誇る花たち。チェンマイでは日常の風景

■ローギアな時間

とにかく、ゆっくりと、安静に。頭ではわかっているのですが、実際にやってみると、せっかちな私にはいかに苦痛なことか。松葉杖を持ってきて、脇の下に当てて、なんてやってる暇があったら、片足ケンケンで行っちゃおう。でもその結果、右足のひざに痛みが・・・。

それならとハイハイで移動してみたら、両ひざに打ち身、さらには手の筋まで痛める始末。(片足一本をカバーするのってこんなに負担がかかるんだ)とか、(体の一つ一つの器官すべてにはちゃんと機能と役割があるんだ)とか、試行錯誤を繰り返しながら悶々としていた時のことです。

そばで見ていたナリンが一言。
「なんでそんなに急ぐの?」

その言葉でようやく我に返った私。現実に向き合い、生活スピードのギアをローに落として行こう。あわてず、一つ一つの動作をゆっくりと。玉ねぎ一つ切ること、洗濯物一枚たたむこと、犬に水をあげること。己との戦い。まるで新たな作法を体得するための厳しい修行のようです。

でも同時に、良く言えばスピード任せに、悪く言えば、いかに雑に、いろいろなことをやり過ごしてきたのか、考えるきっかけが生まれました。

そう、自分は何を生き急いでいたのだろう?

Photo2. 水に映る雲.JPG
チェンマイの空を流れる雲のように、ゆっくりと・・・

こうして3週間が過ぎ、ようやく抜糸の日。初めてギブスを開けて傷口と対面!

先生の言った"小さな傷"と、私の目に飛び込んできた約20センチの傷跡には大きなギャップが・・・。しかも傷跡にはシワが寄ってるような。こんな大雑把さに若干の不安を感じつつも、(この傷跡は私が人生の一部を確かにチェンマイで生きたという証になったんだなあ)と、ちょっとしみじみしたのでした。

Photo3.思いっきり走る犬たち.JPG
 愛犬ダムたちと駆け回れる日も近いかも・・・