気ままに映画評

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2009年3月 アーカイブ

『おもちゃの国』 by 鈴木純一(2005年4月期実践クラス修了生)

字幕をつけた作品がアカデミー賞で快挙達成!


先月の米アカデミー賞授賞式では日本の作品「おくりびと」が外国語映画賞、「つみきのいえ」が短編アニメーション賞を受賞しました。さらに今回のアカデミー賞でもう1つ嬉しかったのは、短編実写部門を 「Toyland(おもちゃの国)」というドイツの作品が受賞したことです。

この作品は、2008年に東京で開催された「ショートショートフィルムフェスティバル」で上映された際に私が字幕を担当させていただいた作品でもあります。 自分が字幕という形で関わった作品が評価を受けたことは、本当に嬉しいことでした。

「おもちゃの国」は第二次世界大戦中のドイツ人とユダヤ人の絆を描いた作品です。上映時間は約14分ですが、人と人のつながりや、なぜ同じ人間なのに差別があるのかなどを考えさせられ、観終わったあとも余韻が深く残る作品となっています。


短編映画というと新人監督が作る習作というイメージがありますが、必ずしもそうではありません。例えば短編作品として有名な「10ミニッツ・オールダー」ではヴィム・ヴェンダースやスパイク・リー、「それでも生きる子供たちへ」ではリドリー・スコットやジョン・ウーなどベテラン監督たちが参加し、1つのテーマに基づいたオムニバス作品を作り上げています。また他にもジム・ジャームッシュ監督の「コーヒー&シガレッツ」も味わいのある短編を集めた作品で、おすすめです。

短編映画は、長編と比べると監督のメッセージが強く出ます。また、最後にひねったオチを加えてニヤリとさせる作品もあります。監督の「これを伝えたい」という思いが凝縮されているので、長編にも負けない力強さを持った作品も数多くあるのです。

こうした短編映画をスクリーンで観られる機会は、それほど多くはないでしょう。そんな中、「ショートショートフィルムフェスティバル」は、たくさんの短編映画と出会える貴重な機会です。この映画祭では大勢の監督がゲストとして会場を訪れますので、上映後、ロビーで監督たちと直接話すチャンスもあります。

2年前の映画祭では、自分が字幕を担当させていただいた作品の監督とお話しすることができました。"観る人と作る人の距離が近い映画祭"である「ショートショートフィルムフェスティバル」、まだ行ったことがなければぜひ一度訪れてみてはいかかでしょうか。