気ままに映画評

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2009年7月 アーカイブ

『2012』 by 鈴木純一(2005年4月期実践クラス修了生)


日本で皆既日食(東京では部分日食)が見られた2009年7月22日、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント様より、2009年12月公開予定の映画「2012」の先行映像お披露目イベントにご招待いただきました。
当日は、六本木ヒルズスカイラウンジでのパーティや宇宙学者によるセミナー、さらには本作のテーマに関連するマヤ文明研究家の講演、世界のメディアが注目する記者会見で大いに盛り上がりました。
このイベントに同席したプロ翻訳者でもあり、映画コラムニストでもある当校修了生、鈴木純一さんに鑑賞後の感想をいただきました。


「2012」、世界の終わりがやってくる!?
 ローランド・エメリッヒ監督のパニック超大作再び!


         
by 鈴木純一(2005年4月期実践クラス修了生、翻訳者、映画コラムニスト)

"実際にあったら大変だけど、エンターテイメントとして観る分には面白い映画"はたくさんある。サメが人を襲う映画、恐竜が現代に甦って暴れる映画などだ。このジャンルではスティーヴン・スピルバーグが代表的な監督だろう。そしてもう1人、人類が遭遇する試練をエンターテイメント大作に作り上げる監督がいる。それがローランド・エメリッヒだ。

エメリッヒ監督は、エイリアンによる地球総攻撃を描いた「インデペンデンス・デイ」、それから地球が異常気象に襲われる「デイ・アフター・トゥモロー」など、特殊効果をふんだんに使ったスペクタクル映画を得意としている。「ゴジラ」のハリウッド版「GODZILLA/ゴジラ」は、最初はスピルバーグに監督のオファーがあった。しかし最終的にはエメリッヒが「GODZILLA」を、スピルバーグが「ジュラシックパーク」を撮っている。お互いに怪獣と恐竜の映画を作っていたことも面白い共通点だ。

エメリッヒ監督が新作「2012」を撮影しているというニュースは聞いていた。今度も地球が大変な目に遭うらしいというウワサも。「2012」とは、古代マヤ文明の暦をヒントに、2012年に起こる世界の滅亡を描いたパニック超大作だ。

先日、エメリッヒ監督が来日して、12月に公開される「2012」の9分間のフッテージが"世界初上映"されるイベントが行われた。アカデミーからのお誘いで、イベントに出席してフッテージを観ることができた。最近のCGが多く使われている映画を見慣れたせいもあり、たぶん「デイ・アフター・トゥモロー」みたいな作品なのではと思っていたのだが...

すごい。本当にすごい映像で圧倒された。観終わった時にはグッタリするぐらいの体験だった。地面が割れ、高層ビルが倒れてくる。隕石が空から大量に落ちてきて、空母が大波にのまれて転覆する。世界が崩壊する圧倒的な描写がこれでもかとスクリーンから観る者に迫ってくるのだ。大きなスクリーンで観ると、これはもう"映画アトラクション"である。

フッテージ上映後に行われた記者会見では、監督が「さまざまな特殊効果を組み合わせて、考えうるすべての技術を使った」と語っていた。その言葉にウソはない。エメリッヒは最高レベルの撮影技術を駆使して、誰も見たことのない究極の映像世界を創造した。9分間の映像でこれだけの迫力なら、本編に期待するなというほうが無理だろう。しかも、見所は映像だけではない。家族を守ろうとする作家を演じるのはジョン・キューザック、それからアメリカ大統領にはダニー・グローヴァーと、実力派の俳優がキャスティングされている。人間ドラマにも力が注がれているようなので、さらに期待は高まるのだ。

世界の終わりは実際には起きてほしくないが、世界の終わりを描いた映画が公開されるのを今から楽しみにしている。