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「旬」な映画コラム アーカイブ

      

ミステリーからラブ・ストーリーに昇華する『ドラゴン・タトゥーの女』

                                                 Text by 鈴木純一

ドラゴンタトゥー.JPGデヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴン・タトゥーの女』予告編を観て、「世界的ベストセラー三部作、完全映画化!」のテロップで「もう映画化されているよ!」と思ったのは自分だけではあるまい。

スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンが書いたミステリー小説『ミレニアム』3部作は、2009年の『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』を始めとする映画三部作としてすでに製作されている。『ドラゴン・タトゥーの女』はリメイクなのだ。自分は原作の小説を読んでいないが、オリジナル版の映画を観て、それほど面白く感じなかった。これは長い原作をすべて描ききれていないのが原因かもしれないが。というわけでフィンチャーは好きな監督だが、一抹の不安を持って観た。その結果、リメイク版は期待を(いい意味で)裏切る面白さでした。

まずオープニング・タイトル。黒い人影がうごめく不気味な映像と、レッド・ツェッペリンの曲「移民の歌」のカバーがうまく交わっている。フィンチャーはミュージック・ビデオの監督出身なので、音楽と映像を組み合わせるのは得意だ。このオープニングで観客の心をグッと掴みます。

40年前に富豪一族の娘が失踪した事件を追うというストーリーは、それほど目新しい設定ではない。しかし事件を捜査するジャーナリストと天才ハッカーを演じる2人の俳優が素晴らしい。まずは挫折したジャーナリスト、ミカエル演じているダニエル・クレイグ。ダニエルはジェームス・ボンドに扮して強いヒーローの印象がある。本作では挫折して枯れた雰囲気で、なかなかいい味を出しています。そして最も魅力を発しているのが天才ハッカーのリスベット役のルーニー・マーラだ。つらい過去を背負い、他人との触れ合いを拒絶する孤独なリスベットを見事に演じている。ルーニーのリスベットは、オリジナル版を超えていると言っても過言ではない。ルーニーは本作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも納得だ。

オリジナル版とフィンチャー版を比べると、フィンチャー版ではいくつかのエピソードを刈り込んでおり、スッキリした感じがする。フィンチャー版で印象に残ったのは、ミカエルが拷問を受けるシーンで流れる曲がエンヤの「オリノコ・フロウ」という点。癒し系といわれるエンヤの曲を残酷な場面で流すフィンチャーの皮肉な演出で、不謹慎ながら笑いそうになった。

あと、終盤の展開だが、フィンチャー版はオリジナル版とはで大きく異なっている。富豪一族で起こった事件を解き明かすミステリーは、恋の物語として終わるのだ。このエンディングも含めて、深い余韻を残すフィンチャー版の方が好きです。原作を読んだ人もそうでない人も、映画館で観ていただきたい作品である。

      

挫折した異端者の抵抗が
やがて大きな変化を起こす映画『マネーボール』

                                               Text by 鈴木純一    

マネーボール01.jpg『マネーボール』というタイトルから「ビジネスと野球を結びつけた映画なの?野球も詳しくないし、『もし高校野球のマネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』も読んでないし」と思った人、安心してください!ビジネスに疎くても『もしドラ』を読んでなくても『マネーボール』は楽しめます。

主人公のビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は野球チーム、アスレチックスのゼネラルマネージャーを務めている。ところが、アスレチックスは予算が少ないため、成績が良い選手を雇いたくても、お金を持っているチームに高いお金で先に契約されてしまう。そこで「お金の無いチームでも勝てるチームを作る」ために彼が考えたのが「マネーボール理論」だ。これは、ホームランを打てる年俸の高い選手を雇う代わりに、年俸は高くないが出走率の高い選手をスカウトするというもの。そして過去の打率などの詳細な数字上のデータを基に選手をトレードして強固なチームに変えていく、という理論だ。
イエール大学卒業のピーター(ジョナ・ヒル)をアシスタントにし、「マネーボール理論」を元に次々とチーム改革を行っていくビリー。誰の目から見ても無謀な彼の戦略は「数字や理論だけで野球に勝てるものか!」とチームのスタッフや監督から反発を買うが、そんな中アスレチックスに少しずつ変化が起こってくる...。

ビリーはかつて将来を約束され、大金でメジャーリーグにスカウトされた選手だった。しかし周囲から期待される重圧に勝てず、好成績を残せずに挫折してしまう。過去の経験から「大切なことはお金で判断しない」を自分に課してチームを育てるビリーを、ブラッド・ピットが好演している。


マネーボール02.jpg『マネーボール』は実話を基にした映画。脚本を手がけたのは『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキンと、『シンドラーのリスト』のスティーヴ・ザイリアン。どちらも実在の人物を主人公にした映画だ。そして本作の監督ベネット・ミラーも『カポーティ』で実在の作家トゥルーマン・カポーティを描いていた。3人の共通点は、実在の人物を描くことに長けていることだ。『カポーティ』でアカデミー主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマンが『マネーボール』ではアスレチックスの監督役で登場している。せっかくアカデミー賞俳優を出演させているのに、彼は常に腕を組んで唸っている役なので、もったいない感じもするが。

『マネーボール』は、挫折した異端者が独自のアイディアを持ってメジャーリーグ界に大きな変化をもたらす人間ドラマとして、野球が詳しくなくても見応えのある作品となっている。ビリーが行ったチーム改革の結果はどうなったのか?その結末は映画館で観てください。

      

『トーキョードリフター』 トークショー潜入レポート&映画レビュー

                                                  
2011年5月、過ぎ去った東京の姿。
『トーキョードリフター』

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第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞した『ライブテープ』を制作した松江哲明監督と主演の前野健太のコンビが帰って来た。今回、2人が引っ提げてきた作品は『トーキョードリフター』。3月11日の東日本大震災から2ヵ月たった後の「ネオンの消えた東京」をテーマにした作品だ。
この映画を今年の10月22日(土)~10月30日にかけて行われた第24回東京国際映画祭の上映会に日本映像翻訳アカデミーの修了生が潜入。
映画を観ての感想をここでレビューする。

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                                                text by好中由起恵

トーキョドリフタ.jpg3月11日の東日本大震災から7ヵ月が過ぎた。その爪跡はまだ残るものの、東京や関東近辺の人々の多くは日常を取り戻しつつある。しかし、震災直後はこうではなかった。きっと皆さんも覚えているだろう、ネオンが消えて暗くなった東京の街を。

『トーキョードリフター』で描かれているのは、まさにその「傷ついた東京の姿」だ。震災から約2ヵ月がたった5月の東京の街で、陽が落ちてから昇るまでの約10時間、アーティストの前野健太がバイクで移動を続けながら歌い歩く。そんな前野さんの姿を追い72分間の映像にまとめ上げたドキュメンタリーだ。ただし、そこにセリフは一切ない。あるのは前野さんの歌と傷ついた東京の姿。その2つだけだ。

なぜ、「傷ついた東京」と「前野さん」なのか。一見ミスマッチに思えるこの2つを組み合わせた監督の意図は何なのだろうか。前野さんが歌う歌詞も震災そのものとは関係なく、"この街が好き"とか"おっさんの夢"とか"ファックミー"とか、どれも前野さんがいつも歌っている歌だ。このミスマッチの第一印象にも関わらず、私は最初から最後まで飽きることなく画面に見入ってしまった。そして不思議なことに、観終わった後にとても温かい気持ちに包まれた。一体、なぜなのだろうか。最初は分からなかったその理由が、上映後に行われた前野さんの挨拶で明らかになった。

映画の上映後の挨拶で、主演の前野さんはこう語ったのだ。

「撮影中は、きっと面白い映画になるだろうという予感はあったものの、正直言って具合も悪かったし、やりたくないという気持ちが強かった。雨でずぶ濡れになるし、すごくつらかったから。こんなことをやらせる、松江さんはなんてひどい人なんだと思っていたくらいです。でも、さっき映画を観ていたらやっぱりよかったんだなぁ、と思って思わず隣にいる松江さんに握手をしてしまいました(笑)。きっと、このスタッフ陣以外だとこんないい作品にならなかったと思うし、僕はこのメンバーじゃなければ映画には出なかったと思います」

前野さんがメンバーと呼ぶのは総勢7名のスタッフだ。共に「ライブテープ」を作り上げお互いに厚い信頼関係で結ばれた7人。恐らく私は、この7人の「絆」を映画の世界観の中に感じたのだろう。特にドラマのようなストーリー性のないドキュメンタリー作品においては、カメラを回す人間の息遣いや現場の空気感までもがもろに伝わってくる時がある。ましてや、セリフが1つもない『トーキョードリフター』では、言語を超えて心や体で感じ取れるものしか存在しない。そして私はそこに、「信頼のおける人同士の強い結びつき」を感じ取ったのだ。

震災後、多くの人が考えさせられたのは「人生における優先順位」だろう。あらゆるものを失った時、人にとって一番大事なものが見える。もちろん、この優先順位は人それぞれでいい。でも、震災後に私が人生で一番大事にしたいと思ったのは「家族や、身近にいる大切な人との繋がり」だった。それだけに、「信頼のおける仲間たちの絆」が垣間見える本作を観て、とても温かい気持ちに包まれたのだろう。

「信頼のおける仲間同士の絆」が描かれた『トーキョードリフター』は、12月10日より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開となる。震災発生時からしばらく時間が経って記憶が薄れつつある今こそ、ぜひ観てほしい映画だ。


『トーキョードリフター』の公式HPはコチラ
http://tokyo-drifter.com/


東京国際映画祭の公式HPはコチラ
http://2011.tiff-jp.net/ja/

      

『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』
トークショー潜入レポート&映画レビュー

                                                  text by 鈴木純一

『ドラゴン 怒りの鉄拳』にオマージュを捧げたカンフー・アクション大作
『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』!


ドニー表.jpg新宿武蔵野館で"香港アクション列伝BIG4"と称し、香港映画4本が連続上映されている。その第2弾として上映されている『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』を観てきました!『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』は、ブルース・リー主演の『ドラゴン 怒りの鉄拳』の続編だ。『怒りの鉄拳』のラスト、虹口道場で宿敵の日本人を倒したチェン・ジェン(ブルース・リー)は銃弾に倒れたが、『レジェンド』ではチェンは生きていて......という物語である。

『レジェンド』の舞台は、1925年に日本やイギリスなど各国が策略を進める上海。チェン(ドニー・イェン)は日本軍に対抗する運動を進めるが、日本軍は抵抗する人間たちを次々に処刑していく。EXILEのAKIRAが日本軍の暗殺隊長として出演しているが、この時代に髪型がポニー・テイルの軍人はいないだろ!というツッコミはやめましょう。これは映画ですから(笑)。しかし、日本軍が中国人に対して非道の限りをつくすシーンは日本人の自分から見ても「日本人って、ひどい......」と思わせるほどだ。

そしてチェンは黒い詰襟服とマスクをつけた仮面の戦士として、日本軍人たちを倒していく。この黒ずくめの衣装は、60年代のテレビドラマ『グリーン・ホーネット』でブルース・リーが演じたカトーの衣装にそっくりだ。今年になって映画版『グリーン・ホーネット』が公開されたが、ドニーが「カトーをやるなら、こうやれよ!」といわんばかりの大活躍である。でも、もしドニーがカトー役だったら、強すぎてグリーン・ホーネットは必要ないんですけれどね。映画の中盤、新聞社の室内でド派手に周りのモノを壊しながら繰り広げられるバトルは凄い迫力。ここで展開されるドニー対AKIRAの対決は見ものです。

そしてクライマックスでは、チェンは白い詰襟服を着て再び虹口道場へ向う。白い衣装は『怒りの鉄拳』の冒頭でリーが着ていた白い詰襟服と同じである。そして大勢の日本人たちを相手にただ1人、最後のバトルを繰り広げる。アクション映画好きとしては、このシーンで興奮が沸点に達しました。チェンが「アチョー!」というリーばりの怪鳥音と共に蹴りやパンチを繰り出す。そしてヌンチャクを振り回すのも『怒りの鉄拳』でリーがヌンチャクを使っていたことへのオマージュですね。自分は日本人なのに「ドニーがんばれ!日本人を倒せ!」と応援しました。そしてドニーが「中国人はアジアの病人ではない!」とオリジナル版でリーが言ったセリフを発する。そして戦う途中でジャケットを脱ぐが、48歳とは思えない筋肉!宇宙最強の48歳です。
『レジェンド』はドニーが敬愛するブルース・リーの『怒りの鉄拳』にオマージュを捧げた"怒りの続編"となった。そしてアクションだけではなく、『インファナル・アフェア』のアンソニー・ウォンやショーン・ユー、『トランスポーター』のスー・チーなど豪華な共演者たちが脇を固めて、歴史に翻弄される人間ドラマとしても見応えのある作品になった。香港映画ファンだけではなく、映画好きなら見逃す手はない。


EXILEのAKIRAは20歳のバンドマン!?
出演者によるトークショーは笑いが盛りだくさん

11-09-30_006.jpg上映後は、『レジェンド』で山崎中尉を演じた舟木壱輝さんと、武術指導を担当した谷垣健治さんが登場してトークショーが始まった。谷垣さんは1993年に香港に渡り、香港映画でアクション指導を担当してきた。日本でも数多くの映画で活躍しており、現在撮影中の実写版『るろうに剣心』でアクション監督を担当している。

谷垣さんは「ドニーは1995年に香港で放送された人気ドラマ『精武門』(『怒りの鉄拳』の原題)に主演し、それから再び『怒りの鉄拳』を作ろうとしていた。1999年に製作する話が出て、日本で製作の準備もしていた(共演者の候補は中山美穂だったそうだ)。しかしその話がなくなり、2009年に『レジェンド・オブ・フィスト』として製作されることになった」と、ドニーの本作にかける情熱を語った。舟木さんはドニーについて「ドニーさんはクライマックスで服を脱ぐので、このシーンのために撮影の合間に腕立て伏せをするなど、絶えず筋肉を鍛えていた」と、彼の俳優としてのプロフェッショナルぶりについて話した。

そしてEXILEのAKIRAが出演したことについて谷垣さんは「中国のスタッフから、日本人のバンドマンが出演することになった、年齢は20歳と言われていた。でも来たのはAKIRAさんだった。EXILEはバンドじゃないし、それに彼は20歳じゃないから(笑)!
でも、アクションシーンでのAKIRAのリアクションは予想外で面白いってドニーがほめていたよ」と撮影の様子について話した。

ドニー裏.jpgまた、ドニーはAKIRAと戦うシーンで、AKIRAに最後の一撃を打たずに終わるのだが、この理由としてドニーは「あまりAKIRAを殴ったら、日本のAKIRAファンに俺がひどいヤツだと思われるから」と話していたのだそうだ(谷垣さん談)。しかし映画が完成し、AKIRAの悪役キャラぶりが際立っているのを観ると、「もっと殴っとけばよかった」と思わず後悔の声を漏らしていたのだそうだ。

さらに『レジェンド』でドニーは黒い仮面と服を着た仮面の戦士となるが、谷垣さんは「当初はドニー演じるチェンはバットマンのようなヒーローで、彼の妹役のチョウ・ヤンがバット・ガールになって、ドニーと一緒に活躍する予定だった」と意外な裏話も教えてくれた。

このように、トークショーは現場の裏話が満載の中身の濃い時間となった。『レジェンド』以降も、武蔵野館では『アクシデント』『密告・者』が上映される。香港映画が連続して上映されるイベントは少ないので、この機会に観に行ってはいかがでしょうか。

      

第4回したまちコメディ映画祭クロージング作品
『モンスター上司』のジャパンプレミア上映は大盛況の内に終了!

                                     Text by 日本映像翻訳アカデミー編集部

IMG_0808.jpg9月19日(月・祝)、浅草公会堂にて第4回したまちコメディ映画祭のクロージングとして特別招待作品『モンスター上司』のジャパンプレミア上映が行われた。当日は、映画祭の最終日ということもあり、大勢の来客でにぎわった。映画の上映前には本映画祭のチーフディレクター大場しょう太氏ら関係者4名が登壇。『モンスター上司』という映画にちなんで、自分だったらどういう上司が嫌いか、という話に及んだ際には「ずっと仕切っていたくせに、事業がうまくいかなくなると、部下に責任を押し付ける上司」などと話して、会場を沸かせていた。


また、来場者プレゼントとして、ジェニファー・アニストンと部下役の主演3名のサイン入りポスターが提供され、じゃんけん大会が急遽行われることに。接戦の末、コリン・ファレルが好きだという女性が見事獲得し、歓喜の表情を見せていた。

IMG_0833.jpg映画の内容はまさにタイトル通り。ニック、カート、デイルの3人は、パワハラ、セクハラ、バカハラ上司と、それぞれ耐えがたい上司の下でうんざりする日々を送っていた。自ら会社を辞めるつもりはない3人は少しでも仕事をマシにするため、バーで知り合った見るからにムショ帰りの強面の助言を受け「上司殺害計画」を練る。ところが、いざ計画を実行に移そうとすると、そこには大きな落とし穴が待っていた......。


イメージ画像.JPG見所はなんと言ってもニック、カート、デイルのおバカ3人による連携の取れたコメディだが、同じくおバカな3人の上司も見逃してはならない。自身の権力を誇示したいがために、部下にめちゃくちゃな要求を浴びせるパワハラ上司に、毎日息をつかせぬほど部下にワイセツ行為を働くセクハラ女上司。そして、先代の社長の急死により社長の座につくことになった放蕩息子のバカハラ上司。それぞれ、絵にかいたようなとんでもない上司だ。

特に注目したいのは、ドラマ『フレンズ』のレイチェル役でもお馴染の人気女優ジェニファー・アニストン演じるセクハラ上司だ。歯科医師である彼女のセクハラぶりは、とにかくぶっ飛んでいる。突然、部下を呼び出し、裸にエプロンならぬ裸に白衣で迫ったり(しかも遠隔操作で部屋に鍵をかけて部下を逃げられなくする。一体、どんな病院だ・笑)、麻酔薬を悪用して悪戯したりと「ジェニファー、本当にそこまでやっちゃっていいの!?」と思わず心配してしまうが、コメディの女王の貫録を堂々と見せつけている。ある意味、ジェニファーファンにとっては嬉しい映画かもしれない。

作中に登場する3タイプのダメ上司は三者三様だが、その中にきっと誰もが「私の職場にもいる!こういう人」と、あなたの身近なダメ上司の姿を見つけられることだろう。

本作は10月29日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて全国ロードショーになるため、ぜひ映画館に足を運んで自身の目で確かめてみてほしい。

『モンスター上司』公式HP

      

最強のアクション『導火線(FLASH PONT)』で
心の導火線に火をつけろ!

                                              Text by 鈴木 純一


B5チラシ-1-01.jpg中国では"宇宙最強"と呼ばれるほどの人気を博しているアクション俳優ドニー・イェン。しかし日本では2007年の『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』以降、ドニーの映画が劇場で上映されていない。このままでは日本はドニー後進国になってしまう!と思っていたら、今年になって『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』『孫文の義士団』『処刑剣』とドニー映画が立て続けに日本で公開される。そしてDVD『導火線 FLASH PONT』が6月にリリースされる。この『導火線』をスクリーンで観たいというファンの声と、映画を上映したいという映画館の思いが実を結び、奇跡の上映が実現した。スクリーンで観る機会を逃してはならぬと、シネマート六本木に行ってきました!

映画はドニー演じるマー刑事が「悪党を捕まえるのが警官の任務」と言うシーンから始まる。マーは毎月40人の犯罪者に重傷を負わせるという、正義のためなら暴力もためらわない男だ。

このマー刑事が追っているのはベトナム人のアーチャー、トニー、タイガーの凶悪3兄弟。前半は、3兄弟の組織に潜入した刑事ウィルソン(ルイス・クー)のおとり捜査が描かれるが、ウィルソンが兄弟に瀕死の重傷を負わされ、ついにドニーの怒りの導火線に火がついた!中盤以降はドニーの怒りの鉄拳が炸裂して、一気に熱い展開になっていく。

3兄弟とのバトルは、食堂でのタイガーとの戦いで始まる。『導火線』では総合格闘技を取り入れたアクションが登場するが、柔道、関節技、寝技などを取り入れた映画は珍しいのではないだろうか。しかもマーとタイガーはビシバシと本気でパンチとキックの応酬、さらにマーが素早い動きでタイガーのバックを取って、アスファルトの上でバック・ドロップ!危険すぎてあり得ないですよ。タイガー役のシン・ユーは、この映画の撮影中に耳の鼓膜が破れたというが、それも納得できる激しさである。

B5チラシ-裏面カラー.jpgそして、クライマックスはドニー対トニー(コリン・チョウ)のバトルである。これは本当にすごいです。コリン・チョウは『マトリックス』シリーズなどに出演し、現在ハリウッドで活躍しているが、『導火線』で7年ぶりに香港映画に帰ってきた。ハリウッド映画と比べて『導火線』の撮影はかなり厳しかったので、コリンは「もう香港映画には出演したくない」と言ったほどだ。ドニーとコリンが力の限りを尽くして戦うシーンは、映画で表現できる肉体アクションの限界に到達したと言っても過言ではない。観ている自分も熱くなって、心の導火線に火がつきました。

シネマート六本木での上映は7月16日~22日(好評のため24日まで延長した)の期間限定だったが、でも大丈夫!『導火線』はDVDで観ることができる。ちなみに、このDVDは日本映像翻訳アカデミー(JVTA)の修了生が制作に携わっているので、その点も注目だ。そして『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』もDVDで観られます。ドニーの新作『レジェンド・オブ・フィスト -怒りの鉄拳-』も9月公開が決まったので、この機会にぜひドニーの最強アクションを堪能していただきたい。
            

      

『ザ・キング・オブ・ファイターズ』
トークショー潜入レポート&映画レビュー

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7月9日(土)、六本木ヒルズのTOHOシネマズにて映画『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の上映会が開催された。当日は猛暑にも関わらず、大盛況。たくさんの観客がヒルズに訪れた。この日は映画の上映前に吹き替えを担当した声優の小清水亜美さん、杉田智和さん、手塚ヒロミチさんの3人が壇上に登場してのトークショーも行われた。このトークショー及び上映会にJVTAの修了生ライターの鈴木純一さんが参加。当日の様子をレポートする。
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                                        Reported by 鈴木純一

■モデル並みのスタイリッシュな声優陣による
トークショーは笑いが盛りだくさん

ko-1.JPGトークショーが始まると、3人の声優陣が順に登壇。すると、まずそのオシャレさに驚いた。「この人たちはモデルですか?」と思うほど、なんともスタイリッシュな3人なのだ。手塚さんは、オシャレ眼鏡をかけ、男性用ファッション雑誌に出てきそうなパーマのかかったアシンメトリーな髪形に原宿や代官山で見かけそうな服装に身を包んでいる。紅一点の小清水さんはスラリとのびた足を大胆に見せて、これから「パリコレ」に参加してきます、とでも言うような雰囲気。髪もアップにしていて、夏らしい。最後に杉田さんだが、ボーダーシャツに薄いデニム、リストバンドなど、同じく格好良さ満点なのだ。

最近の声優さんはこんなにオシャレなのかぁ、と驚きつつも、様子を見守っていると更に驚かされることに。この3人、オシャレなだけじゃなくトークが上手いのだ。ちょっとした会話の間で杉田さんが「(映画の主人公の)舞は陰のある男に惹かれる偏愛な役柄だから、(声を担当する)小清水さんにピッタリだよね」などと言うと、小清水さんはすかさず「なに~?」と突っ込む。絶妙な3人の掛け合いが、3人のスタイリッシュな感じを更に洗練された雰囲気に見せていた。

ko-2.JPG本作の見どころとして杉田さんは「テリーさんが浮浪者を殴って帽子を被るシーン」とコメント。テリーさんって誰ですか?と疑問が湧いたが、映画を観たら分かりました。テリーさんはCIA捜査官として登場する人ですが、このシーンについては映画を観てください。
手塚さんは「収録ではゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ』が好きな出演者やスタッフたちがいたので、それで絆が深まった」とゲームでつながった現場の様子について話していた。小清水さんは「映画はゲームとは設定が異なっている。そしてギャグがちりばめられている。映画ではゲームのキャラ、アンディーが登場していないので、パート2が製作されると思う」と話していた。確かに笑えるシーンはあった。例えばゲームでは日本人の設定である草薙京が、映画では明らかにアメリカ人だろ!な俳優ショーン・ファリスが演じていたのはギャグなのか分からないが、笑えました。最後に手塚さんの「見どころがいっぱいある映画です。ぜひ多くの人たちに観てほしい」という締めのコメントでトークショーは終わった。


■3人の役者のアクションがキラリと光る
本格派の格闘映画!

ko-3.JPG『ザ・キング・オブ・ファイターズ』は有名な格闘ゲームの映画化だが、格闘といえばアクション。アクション映画好きから観た本作の見どころとして、3人の俳優に注目したい。まずは不知火舞(しらぬいまい)を演じたマギー・Q。彼女はモデルだったが、香港に渡って『ジェネックスコップ2』に出演する。この映画でジャッキー・チェンに見出されて『レディ・ウェポン』で主演し、その後はハリウッドでジャッキー主演の『ラッシュアワー2』『80デイズ』に出演。さらにトム・クルーズ主演の『Mi:Ⅲ』ではスパイメンバーの1人を演じ、さらにドラマ『ニキータ』では主役のニキータを演じている。ジャッキー仕込みのアクションとモデル出身の美貌を備えた俳優として注目の存在である。

そしてルガール役のレイ・パーク。彼は幼少時からカンフーを習い、スタントマンとしてキャリアをスタートした。本来なら顔が出ない裏方であるスタントマンだったレイが俳優として注目されたのは、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』で演じたダース・モールだ。以降は『X-メン』『G.I.ジョー』など数々の映画で活躍している。

そして最後に、八神庵(やがみいおり)に扮するウィル・ユン・リーだ。彼は『エレクトラ』で剣術アクションを披露していたが、父親がテコンドーの師範で、自身もテコンドーを学んでいるという武術の人である。

この3人に共通するのは"アクションができる人たち"である点だ。この映画のために俳優にアクションの特訓を積ませました!より、もともと動ける人たちを起用することでアクションに激しさとリアルさが増しているのである。

さらに監督は香港映画界の才人ゴードン・チャン。ゴードンはブルース・リー主演の傑作『ドラゴン 怒りの鉄拳』のリメイク『フィスト・オブ・レジェンド/怒りの鉄拳』を監督しているが、他にもジャッキー・チェン主演の『メダリオン』など、アクション映画を得意とする監督である。
『ザ・キング・オブ・ファイターズ』は香港のアクション映画監督と、香港映画でアクション修行した女優がハリウッドでコラボレーションを遂げたアクション映画となったのである。これだけでも十分観る価値はある。

もう1点、日本映像翻訳アカデミー的な見どころを指摘するなら、ウィル・ユン・リーはMTCのディレクター石井清猛さんに似ている......と個人的に思う。この点でも注目して観ていただきたい作品だ(笑)。

      

ゾンビ映画をこよなく愛する修了生ライターが潜入レポート!
第1回東京国際ゾンビ映画祭2011

                                            Reported by 鈴木純一
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45ポンド(約6000円)という超低予算で制作されたゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』が3月5日から公開される。この映画の公開記念として2/26~3/4まで、第1回東京国際ゾンビ映画祭2011が開催中だ。日本初のゾンビ映画の祭典となる本映画祭では、古典的な名作から新作まで、16本のゾンビ映画が上映される。旧作のほとんどは既に観ているものの、スクリーンの大画面で観られるとあっては、大のゾンビ好きの自分も行かない選択肢はない。早速27日と28日に行って来たので、当日の様子をレポートする。
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■"ゾンビ肉ジャーキー"は即完売!
ゾンビを食らいながら『悪魔の墓場』を鑑賞!?

zonbi1.jpg映画祭の会場となった映画館はヒューマントラストシネマ渋谷。27日は、イタリア・スペイン合作の『悪魔の墓場』を観た。

会場は、ほぼ満席。ロビーでは『ゾンビ』を始めとする映画のDVDや『ゾンビランド』などのゾンビ映画のパンフレットが並び、ホラー好きの自分としては、沢山のゾンビに囲まれて思わず心が高揚してしまった(笑)。また、"ゾンビ肉ジャーキー"なるものが販売されると聞いていたので、買おうと思ったが探しても見つからない。スタッフの方に聞いたら、すでに売り切れたとのこと。残念!!!

本編上映前には映画祭のプロデューサーでもある映画評論家の江戸木純氏と、『ゾンビ映画大辞典』の著者にしてゾンビ映画ウォッチャー伊東美和氏のトークショーが行われた。トークショーでは江戸木氏が本作についてこう語っていた。

「この映画はジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を無断でリメイクした映画なんですが、ヨーロッパで制作されると不思議なことに全く異なるテイストになる。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は社会派ゾンビ映画ですが、『悪魔の墓場』は純粋に恐怖を追及した作品に仕上がっています。ゾンビ映画でも国によって違いが出るのが面白いですよね」


zonbi2.jpg『悪魔の墓場』は英国マンチェスターを舞台に、害虫駆除の超音波で死者が蘇り人間を襲うという物語。映画全体を覆う不気味さとリアルな特殊メイクが魅力の映画だが、前述のトークショーで話していたように『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にはなかった、ゾンビが他の死体に自分の血を分けて仲間を増やすという、吸血鬼のような設定が加えられていたのも面白かった。レンタル屋にDVDがあるはずなので、純粋な恐怖を味わいたいという方にはオススメだ。


■思わず脱力する愛すべき作品
『アイランド・オブ・ザ・デッド』は広い心で鑑賞せよ!

翌28日にはイタリア映画『アイランド・オブ・ザ・デッド』を観た。上映前のトークショーには、前日の江戸木氏と伊東氏に加えて『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ 血塗られたハッタリの美学』の著者である映画ライター山崎圭司氏の3人が登壇した。

山崎氏によれば本作は、甘いシビレがくる映画。観始めて3秒で"観るのをやめればよかった"と思うのだそうだ。山崎氏の意見に同調しながら、江戸木氏は本映画について「この作品は怖がるのではなく笑ってください。今回の映画祭でぜひ入れたかった映画で、内容的には東京国際ファンタスティック映画祭でも上映を断られる作品ですから、広い心で観てほしい」と愛のある言葉を述べていた。


zonbi3.jpg上映が始まると、トークショーの話の通り予想以上にすごい映画だと納得した。ある島に着いたトレジャーハンター(宝探し)たちが、その島にいるゾンビたちと戦うという物語なのだが、俳優のひどい演技やアクションの緊張感のなさはもはや脱力もの。しかも建物が炎上するようなお金のかかるシーンは、他の映画のフィルムを(間違いなく無許可で)使っていると思われる。(どうやら本作の監督ブルーノ・マッティ(2007年に没)は、他の映画のフィルムを勝手に使う人らしく、同監督の遺作『ゾンビ2009』でもハリウッド映画『クリムゾン・タイド』のフッテージが無許可で使われている。)更に、ゾンビ映画の傑作『サンゲリア』に出てくる眼球を突き刺すという場面の再現シーンに至っては、なんと刺さらずに終わるといった肩透かし。その他、ゾンビがフラメンコを踊るなど、観ている者がひきつった笑いと脱力感に襲われる作品で、心が広くなった...というよりダラリと伸びた気がした。

この「ま~たダメ映画を観ちゃったよ」感は、高校生の頃に『吐きだめの悪魔』や『トロル2 悪魔の森』などのトンデモ映画を観た頃を思い出した(両方とも好きだが)。本作を観ながら、高校生時代のような「やっちまった」感に浸って甘酸っぱいシビレに酔ったのだった。『アイランド~』は3月にDVDがリリースされるので、ホラー映画好きで心の広さに自信がある方は是非。

zonbi4.jpg今回は第1回目の映画祭ということで、ゾンビ映画の教科書ともいうべき作品を選んだと語っていた江戸木氏だったが、確かにこれだけの数のゾンビ映画が集まる機会はそうない。レポートした2作品の他にも『サンゲリア』『ゾンビ』『死霊のえじき』などの名作や、日本から世界に向けて放つ注目のゾンビ映画『ヘルドライバー』などの作品が勢ぞろいしていた。

映画祭そのものは4日で終わりだが、興味を持った人はぜひDVDなどでチェックしてほしい。そして3/5から公開される『コリン LOVE OF THE DEAD』にも注目!

『コリン』公式サイト「東京国際ゾンビ映画際2011」告知:
http://www.colinmovie.jp/zombiefes/index.html

      

豪華キャストに釘付け ノスタルジー溢れる
アメコミ・ヒーローの痛快アクションコメディ『グリーン・ホーネット』

                                                 Text by 水野弘子グリーンホーネット1.jpg

60年代のTVドラマとアメリカン・コミックスの人気ヒーロー「グリーン・ホーネット」がスクリーンによみがえった。今回のリメイク版は、鬼才ミシェル・ゴンドリー監督の手で、アクションコメディに仕上がった。ブルース・リーの出世作だったドラマ版を懐かしむ往年のファンにとっても、懐かしい仕掛け満載の作品だ。

主人公の放蕩息子ブリット・リードは父の急死により、急遽、大新聞社のトップとなる。LA社会の腐敗を目の当たりにし、憤ったブリットは、お抱え運転手カトーとともに緑マスクで変装し、ハイテクマシン「ブラック・ビューティー」を駆って、麻薬組織を大掃除する。

魅力はずばり多彩なキャスト陣だ。麻薬組織の黒幕クリストフ・ヴァルツは「イングロリアス・バスターズ」でランダ大佐を演じた、あの怖いヒト。背筋も凍る演技で、あまたの賞を総なめしたヴァルツだが、本作の悪党ぶりはややキュートな味付け。スーツをけなされると逆上するところが可笑しい。
主演・脚本のセス・ローゲンは北米で人気のコメディアン。今回、セレブな御曹司役に臨むために厳しくダイエットしただけあって、「恋するポルノグラフィティ」で演じたおデブでエッチなコーヒー店員とは別人のよう。本作では過激な下ネタは封印したが、毒舌満載のツッコミは健在。日本での知名度は低いが、ぜひブレイクしてほしい俳優である。

また台湾ポップ界のプリンス、ジェイ・チョウの相棒ぶりも頼もしい。ブルース・リーの当たり役というプレッシャーを跳ねのけ、アクションからピアノ、エンドロールのラップまで多才にこなしてみせた。最近はシリアスな役どころが目立つキャメロン・ディアスも、本作では美人秘書役でコメディエンヌの本領を発揮している。

さらにチョイ役でカメオ出演している「スパイダーマン」のジェームズ・フランコが素晴らしい。短いシーンながら、新興ギャング役のチンピラぶりがハマっており、存在感を示した。フランコの新境地を充分に予感させるシーンだった。また、「ターミネーター2」の美少年エドワード・ファーロングが麻薬売人役で顔を出しているが、こちらは見紛うほどの老け込みようだ。思わず過酷なショウビズ界の時の流れを実感・・・。

また、オリジナル版のドラマを意識した趣向が随所に散りばめられ、こちらも大きな見せどころとなっている。ブリットが悪党退治に出る際に毎回つぶやく"Let's roll Kato"(カトー、出かけるぞ)は、オリジナル版ファンお待ちかねの決めゼリフ。ダークでシリアスだったドラマ版ヒーローの名文句を、セス・ローゲンはややパロディ風な味付けでカバーしている。また、カトーが発明した愛車「ブラック・ビューティー」の登場シーンが実にレトロでいい感じだ。ガレージ床がくるりと反転し、普通車と表裏に現れる「ブラック・ビューティー」。この四谷怪談の「戸板返し」みたいな仕掛けは、ドラマ版で大きな話題を呼んだもの。オールドファンの郷愁をくすぐる旺盛なサービス精神を評価したい。偉大なスターへのオマージュとして、ブルース・リーの素描がカトーのスケッチに混じっているシーンもお見逃しなく。

ちなみにクールなカスタムマシン「ブラック・ビューティー」は、全米から掻き集めたクライスラー・インペリアルの1964~1966年ビンテージモデルを地元ロスで改造したもの。カスタム装備に注目すれば、敵の体当たりを撃退する「ベン・ハー」ドリルや、走行中にドアを半開きするだけでぶっ放せる、ドア装備のマシンガンは、いかにも便利なアイテム。その他にもフロントグリルに仕込んだ火炎放射器やミサイル発射装置など、装甲マシン好きにはたまらないスペックがてんこ盛りだ。このカスタムカーをシーン別に29台用意したらしいが、撮影終了後に「生き残った」のは僅か3台。パトカーなどの車両にいたっては100台近くが廃車送りとなったという。こんなハチャメチャなカーチェイスを3Dで楽しめるのだから見逃す手は、ない。

「グリーン・ホーネット」は、多くの作り手の思いがこもった贅沢な娯楽作品だ。キャストの多彩な顔ぶれやマニアックな演出を、ぜひ劇場で堪能してほしい。

      

LAを悪党から守るのはスキだらけの"ゆるキャラ"ヒーロー!?
映画『グリーン・ホーネット』

                                                 Text by M.Saito

グリーンホーネット2.jpg去る1月20日、都内で3D映画『グリーン・ホーネット』のジャパン・プレミアが行われた。寒風吹きすさぶ会場に集ったのは約1200人もの熱心なファン。映画の題名にちなみ、レッド・カーペットならぬ "グリーン"カーペットを通って監督のミシェル・ゴンドリー、続いて主演のセス・ローゲンとジェイ・チョウが登場。ステージでは日本でのヒットを祈願し、グリーン色をした餅つきが行われる。更には3D上映にあやかって配られたおもちゃのグリーンのメガネを身に付けた一同の前には、映画で活躍する"ブラック・ビューティー"号が壁を突き破り、白煙をあげて登場。その他、ゲストに女優の篠原涼子や昨年末のM1グランプリで準優勝となったスリムクラブが登場するなど、華やかなイベントとなった。

映画の主人公は新聞社の二代目社長、ブリット。創業者の父がハチに刺され急逝したことをきっかけに、自らを"グリーン・ホーネット(緑のハチ)"と名乗り、これまでの放蕩生活を改めロサンゼルスから悪を一掃する活動に乗り出す。父の運転手だったアジア人で武芸の達人、カトーを相棒に愛車ブラック・ビューティーを駆り夜ごとロスの街で暗躍する。

テンポよく進むストーリーの中で際立っていたのはブリットとカトーが織りなす絶妙なコンビネーションだ。セス・ローゲン演じるブリットは根がピュアだが、ボンボン育ちのワガママで何かとツメが甘い。グリーン・ホーネットの活躍も実の所すべてカトーのおかげなのだが、自らの手柄にしようとする。自分では何もできないダメダメ男だが、どこか憎めない。一方、そんなブリットをスマートにフォローするカトーはクールな切れ者。強くて、頭が良くて、優しい......と三拍子揃えば、マドンナ役で登場するキャメロン・ディアスも思わずなびくが、ブリットはそれがまた気にいらないのだった。

TVシリーズではかの有名なブルース・リーが演じていたカトー役。台湾出身のミュージシャン/俳優のジェイ・チョウにとっては当たり役とも言えるだろう。劇中、天才発明家でもあるカトーが自作のマシンで手際良くいれるカプチーノが何度か登場するが、このカプチーノの美味しそうなことといったら!3D効果も手伝ってか、スクリーンから香りがこぼれてきそうなほどだった。

個人的に笑ったのは、ブリットとカトーの口論から始まる大喧嘩のシーン。カトーに嫉妬するブリットが、自分こそがヒーローだと主張するのだが、ここでのブリットのセリフにも彼のヘナチョコぶりが絶妙に表現されている。


「俺とお前はそもそも格が違う。ヒーローと運転手だ!」
「インディとショーティー("兄弟"の意)だ!」
「サイモン&ガーファンクルだ!」
「スクーピー&ドゥ」


恐らく、ブリットが言いたかったのは最初のセリフだけ。あとは言葉の響きだけでちっとも脈絡がない。「スクーピー&ドゥ」なんて、ナンセンスな所がバカバカしくて笑える。ブリットの子供っぽいキャラやゆるさが全面に出ている。結局、ブリットはストリートで鍛えた武道の達人カトーにさりげなく手加減されながらも一方的にボコボコに殴られることになる。でもカトーには1つだけ、ブリットには到底かなわない弱点もあったのだ・・・。

最後は、どたばたアクションの末に分解寸前のブラック・ビューティー号から"脱出シート"で飛び出した2人。この"脱出シート"は、実はブリットのアイディアをカトーがこっそり実現したもの。子供っぽい"ゆる"キャラヒーローでも、こんな風に密かに役に立っていたりするのだ。こんな2人の関係性があるからこそ、ロスの夜空をパラシュートで降りてくるブリットとカトーの後姿も、まるで幼い子供たちがブランコに乗っているかのように見えてしまうのである(笑)。

現在、公開中の3D映画『グリーン・ホーネット』。絶妙なコンビネーションの中に見える2人の友情に注目して観てほしい。

      

ブンブン行くぜ!なりきりヒーローが
悪を討つアクション・コメディ超大作『グリーン・ホーネット』

グリーンホーネット1.jpg

             Text by 鈴木純一

新聞社デイリー・センチネル創始者の息子であるブリット・リード(セス・ローゲン)は、父の急死により新聞社の2代目社長になる。父の死をきっかけに正義に目覚めたブリットは、父親の運転手だったカトー(ジェイ・チョウ)と共に"グリーン・ホーネット"として悪と戦う決意をするのだった...。

「最近、ヒーロー映画って多いよね」と思う人もいるだろうが、グリーン・ホーネットはちょっと違います。ブリットはパーティーと女の子が大好きで、上海が日本にある街だと思っているボンクラ男。このブリットを演じるセス・ローゲンは『スーパーバッド 童貞ウォーズ』や『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』などのコメディ映画に出演しており、何歳になってもモラトリアムな男を演じさせたら抜群に面白い俳優である。でも実際のセスは脚本も書く才人で、『グリーン・ホーネット』では脚本、製作総指揮も務めているのだ。プロデューサーとして、今までセス自身が演じてきたキャラを本作でも押し出した彼の目論見は成功したといえる。

ブリットが改造車ブラック・ビューティーを見て「すげーっ!」と興奮する姿は、精巧に作られたプラモデルを見て「すげーっ!」と喜ぶ中学生みたいだ。そしてヒーローとして初出動して街のチンピラを見つけるが、ブリットはカトーに「お前が先に行けよ」と煽るなど、全然ヒーローっぽくないのである。でもね、今まで遊びほうけていた男が急にヒーローになるというのは無理というもの。このダメでユルいけど、ヒーローになりきろうという気持ちだけは十分あるブリットに共感しました。

そして、注目はカトー役のジェイ・チョウ!ジェイは台湾出身のミュージシャンで、俳優としても活躍しているが、映画『言えない秘密』を監督するなど、セスと同じマルチな才能を持った人。『グリーン・ホーネット』ではピアノを弾くシーンもあるし、エンド・クレジットにはジェイが歌う「双截棍(ヌンチャク)」も流れます。
セスとジェイのズッコケ・ヒーローぶりは観ていて楽しく、かなり笑わせる。2人の相性はよく、『48時間』や『リーサル・ウェポン』のようなバディ・ムービー(登場人物がコンビを組む相棒映画)に仕上がった。

セスとジェイ以外でも、面白いキャスティングが揃っている。犯罪組織のリーダーであるチュドノフスキー(言いづらい名前)に扮するのは、『イングロリアス・バスターズ』でアカデミー助演男優賞を受賞したクリストフ・バルツ。本作でもバルツは饒舌な悪党を好演している。そしてキャメロン・ディアスはブリットとカトーに好かれる役で映画を盛り上げてくれます。他にも冒頭に登場するマフィアをノンクレジットで演じているのはジェームズ・フランコだ。彼はセスが主演した『スモーキング・ハイ』に出演していたので、その繋がりでセスに「出てくれない?」と頼まれたのではと思わず推測してしまう...(もちろん、勝手な推測だが)。また、ドラッグディーラー役にエドワード・ファーロングが扮している。『ターミネーター2』の時の姿とは別人のような汚れっぷりで、本物のドラッグディーラーかと思いました(←失礼)。

個人的にブリットとカトーのどちらが好きかといえば、ブリットでしょう。だって悪党と戦うのは大変だからカトーに任せて、カワイイ女の子(キャメロン・ディアス)と話してる方が楽しいし。あれ?でも、これってブリットのキャラそのままだ!この映画を観て、自分がダメ人間だと認識させられました(笑)。

ホーネットとカトーの活躍をユーモアとド派手なアクションを交えて描き、冒頭から最後まで観る者を飽きさせないアクション・コメディ『グリーン・ホーネット』。世界的なヒットで続編も作られると思うが、パート2もブンブン行ってください!

      

「シンデレラになる前の若き女」と「シンデレラになった後の成熟した女」
それぞれに足りないものを教えてくれる映画『バーレスク』

                                                Text by 野口みゆき

バーレスク大.jpgクリスティーナ・アギレラとシェールはともにグラミー賞受賞の経験があるアメリカの歌手。生粋のエンターテイナーだ。年齢もショウビズ界でのキャリアの長さも違う2人が、歌手としてのパフォーマンスさながら歌って踊る映画が誕生した ― 『バーレスク』だ。

田舎からスターを夢みてロサンゼルスに来た主人公のアリ(クリスティーナ・アギレラ)。そこで出会ったのは、セクシーな女性ダンサーたちが夜ごとショーを繰り広げている大人のためのクラブ"バーレスク"だった。アリはそのステージに魅せられ、舞台に上がることを夢みる。今も現役のダンサーであり、クラブの経営者でもあるテス(シェール)に自分をアピールするが、なかなか取り合ってもらえない。しかし、アリには、1つ強力な武器があった。類まれな歌唱力だ。やがて主役の座を射止め、スターへと上り詰めていくアリ。ところが、クラブの経営難や、引き抜きの誘いといった難題が押し寄せ、アリそしてテスも決断をせまられることになる ――。

主人公の若い女性が洗練されたゴージャスな女性に生まれ変わる映画はよくある人気のシンデレラ・ストーリーだ。例えば、『プラダを着た悪魔』、『プリティーウーマン』『マイ・フェア・レディー』など、時代や舞台が変わっても、永遠に人気のテーマと言えるだろう。

しかし、本作『バーレスク』がこれまでの作品と違うのは、単に女の子がシンデレラになるまでの道のりが描かれているのではないこと。本作では、「シンデレラになる前の女」と「シンデレラになった後の女」が同時に描かれているのだ。

「シンデレラになる前の女」とは、もちろんアリのこと。彼女は、若さゆえの純粋さと、時に無謀にも思えるひたむきさで夢への道を切り開いていく。しかし、彼女のように若く、夢を追い求める者が陥りやすい落とし穴に一時ハマってしまう。それは、自分にとって本当の味方は誰なのか? ということを見失いかけるのだ。類まれな歌唱力を持ち、スターの階段を駆け上る彼女には、当然たくさんの人間が寄ってくる。その中で本当に自分の幸せを願っている人間と、単に道具として自分を利用しようとする人間の区別がつかなくなってしまう。まさに、「夢を叶える前の若き女」が陥りやすいウィークポイントと言えるだろう。

一方、「シンデレラになった後の女」とは、かつてクラブの大スターを誇ったダンサーであり、現在は経営者でもあるテス(シェール)だ。若き日にダンサーとしての夢を叶え、経営者としてクラブそのものも手に入れたテス。彼女はまさに「アリのその後」つまり、若い女性が夢を叶えたその後の人生と言えるだろう。

この映画ではテスのウィークポイントもしっかりと描かれている。夢を実現させ地位を手にいれた者が陥りやすいウィークポイント、それは過去の栄光に捕らわれて、周囲の変化を受け入れられなくなることだ。

かつて全盛を誇ったクラブ『バーレスク』は、今や借金が膨れ上がり、どの銀行も出資してくれないという最悪の経営難に陥っていた。クラブの共同経営者である元夫は度々助言をするが、テスは一向に耳を貸さないのだ。

この作品では「夢を叶える前の若い女性」と「夢を叶えた後の成熟した女性」のそれぞれの生き方が描かれている。若い女性の夢物語だけでもなければ、成熟した女性だけの話でもない。そして、それぞれの年代に足りないものを教えてくれる。あらゆる年代の女性に、ぜひとも観てほしい。

      

セクシーでカッコイイ"バーレスク"の魅力を
臨場感とともに体感できる映画

                                                 Text by 落合佑介

バーレスク裏.jpgバーレスクとは、ダンスと歌、寸劇を組み合わせた女性たちによるセクシーなショーのこと。アメリカでは1920年代に広まった「大人の社交場」である。ダンサーたちはキラキラした宝石を身につけ、ランジェリーやコルセットなどの衣装に身を包み、歌やダンスを披露する。

映画の主人公は、歌手になる夢を追いかけて地方からロサンゼルスにやって来たアリ(クリスティーナ・アギレラ)。引退した歌手のテス(シェール)が経営する「バーレスク・クラブ」で働き始めたことをきっかけに、バ―レスクショーへの情熱を胸に卓越した歌唱力で成功をつかんでいくという話だ。

この作品を観て一番感じたのは、作品の要所、要所で登場する「バーレスク」の舞台のシーンの臨場感のすごさだ。まるで、自分が本当にその場に行って舞台を見ているのでは、と錯覚するほど、迫りくる勢いと立体感があった。

この迫りくる臨場感は何なのだろうか? 思えば、「シカゴ」や「ムーランルージュ」など過去の作品でも、バーレスクという世界は登場していた。しかし、いずれの作品も、バーレスクの世界を部分的に切り取ってストーリーに挿入したように感じたのに対し、本作品はバーレスクの魅力を全面に押し出している。

この「差」を生み出しているものの1つは、キャスティングだろう。これまでの作品でバーレスクで歌って踊っていた人たちは、あくまで役者だった。つまり、歌も踊りもプロではなく、作品のために役者が訓練してパフォーマンスを見せていた。しかし、今回はクリスティーナ・アギレラやシェールといった本物のプロのシンガー、なかでもグラミー賞 受賞経験のある「プロ中のプロ」が演じている。実際、映画の中でアギレラは、細く綺麗なプロポーションからは想像もつかないほどパワフルな歌声と激しいダンスを披露している。また、シェールもアギレラとは違うショービズ界の第一線で長く活躍する王者ならではの貫録を見せつけていた。この2大スターを持ってして、歌や踊りのシーンに臨場感が生まれないわけはないのだ。

もう1つは、監督のこだわりだろう。本作の監督、スティーブン・アンティンは、かつてバーレスクで働いていたことがある。バーレスクについて、「すごく特殊だけど、魅力的な世界」と描写したアンティン監督は、映画の記者会見で映画を制作した目的を「バーレスクという素晴らしい世界を世の中に紹介すること」と話していた。その監督のこだわりが、衣装、小物、メイクの全てに生かされ、「生のバーレスク」の雰囲気を創り出しているのだ。

僕自身、バーレスクという世界のことはあまり知らず、セクシーな女性の舞台ならば、ストリップのようなものかと思っていた。ところが、本作を見てバーレスクはストリップやヌードとは全く違うことをはっきりと知らされた。衣装は脱いでも、羽で出来た扇子などを使って局部や胸を巧みに隠す。下品ではなく、スタイリッシュでカッコいい。「いやらしさ」ではなく「カッコよさ」を感じる、あくまで女性のセクシーな魅力を芸術的に表現したショーなのだ。

観る者をこんな気持ちにさせるくらいなのだから、「バーレスクという素晴らしい世界を世の中に紹介したい」という監督のもくろみは見事成功した、と言えるだろう。

女性のみならず男性にも、是非ともお勧めしたい作品だ。

      

野太い歌声と可憐な素顔でクリスティーナ・アギレラが放つ
シズル感あふれる映画『バーレスク』

                                                  Text by 綾部歩

バーレスク大.jpg「シズル感」という言葉になじみがない人も多いだろう。「シズル(sizzel)」という英語が語源となっている広告業界用語で、従来は食品がとてもおいしそうに映っている様を表現する言葉だ。今では物事がリアルでビビッドである様子を表す言葉としても使われる。この言葉がふと頭をよぎるほど、映画バーレスクはシズル感が溢れる作品だった。

物語はクリスティーナ・アギレラ演じる田舎娘のアリがロサンゼルスにあるクラブ、バーレスクでいじめや恋に悩みながらも前向きに歌手への夢に向かい突き進むサクセスストーリー。話自体はよくあるシンプルなものだ。映画を見慣れた人ならすぐ次の展開が想像できてしまうだろう。

つまり、この作品に期待するべきはストーリーではない、というのが私のはっきりとした見解だ。では私の感じた「シズル感」の正体は一体何なのだろうか。

1つはクリスティーナの力強い歌声だ。特に最初のナンバー"Something`s Got A Hold On Me"の歌声は、156センチほどの華奢で小柄な姿からはイメージできないほど野太く力強い。その歌声からは「自分はプロのシンガーである」というプライドと、本映画にかける彼女の想いを強く感じた。ふと自分の腕に鳥肌が立つのをみて、心で感じる圧倒感は本物だと実感したほどだ。劇中で歌われる8曲のうち、3曲はクリスティーナ本人が作詞しているという事実からも、いかに彼女が本作に入れ込んでいるかを伺い知ることができる。

そして、もう1つ注目してもらいたいのが純粋な役柄を演じるクリスティーナの新たな一面だ。クリスティーナ・アギレラといえば、普段アーティストとしてテレビや雑誌で見せる顔は破天荒なイメージが強く、真っ赤な口紅につけまつ毛というビビッドなメイクやファッションに身を包んでいる印象がある。しかしこの作品中のクリスティーナは、ステージ以外のシーンでは純粋でかわいらしい役柄に徹している。実はプライベートはこんな感じなのかな、と思いを巡らせてしまうほど、その役柄がピタリとハマり、普段の姿とギャップがあって魅力的なのだ。特にナチュラルメイクの力強いまなざしが心に残る。男性ならきっと皆ノックアウトされてしまうだろう。

クリスティーナの圧倒的な歌唱力とあどけない役柄に徹した演技力、この二つが絶妙に相乗効果を成し「シズル感」を生み出しているのがこの作品、「バーレスク」なのだ。

実は、恥ずかしながらクリスティーナについて何も知らずにこの作品を鑑賞した私。ところが、いまや完全に彼女の魅力にメロメロだ。彼女をよく知るファンだけでなく、まだ彼女を知らない人々にクリスティーナ・アギレラという多才なアーティストの魅力を伝える作品として、是非お勧めしたい。

      

ネット・ビジネスに翻弄される
人間の"心の闇"を描く『ソーシャル・ネットワーク』

                                                Text by 鈴木純一

ソーシャル表.jpgFacebookは全世界で5億人が登録している世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)である。Facebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグの物語をデヴィッド・フィンチャーが監督すると聞いて違和感があった。フィンチャーといえば、絶望的なラストを迎える『セブン』、実在の連続殺人犯を追う『ゾディアック』など、独自の映像美とダークな世界観を持つ監督である。『ソーシャル・ネットワーク』を観る前は、正直に言って「SNSってよく分からないし、ネットビジネスで億万長者になった学生の話を映画化して面白いの?」と思い込んでいた。でも映画を観たら面白かったのである。フィンチャーごめんなさい。

ハーバード大学に通うマーク・ザッカーバーグは、大学の学生たちがお互いに情報交換できるサイト、Facebookを完成させる。やがて、 Facebookは大学という枠を超え、更には大陸を超えて、世界中に浸透していく。ところが、ある学生たちに「ザッカーバーグは俺たちのアイディアを盗んだ」と言われ、訴訟へと発展する。

メインの登場人物は3人。主人公であるザッカーバーグは「俺は特別な人間」だと他人を見下し、女友達から「最低(asshole)」と呼ばれている。そんな最低の男ザッカーバーグを、友情のためと資金面で支える真面目なエドゥアルド・サベリン。そしてもう1人、Facebookに目をつけたナップスター(音楽データの交換をするアプリケーション)の創設者ショーン・パーカー。このパーカーの存在が、ザッカーバーグとエドゥアルドに思わぬ影響を与えていく。

この映画を観ていて、フィンチャー監督の『ファイト・クラブ』を思い出した。『ファイト・クラブ』は殴り合って痛みを感じることで、「自分は生きている」と実感できる男たちの物語。殴り合う仲間たちの"ファイト・クラブ"がアメリカ中に広がっていったように、インターネットを通じて仲間を増やす" ネット・クラブ"Facebookはハーバード大学の寮から、大学を超え、更には大陸を超えて、世界中に浸透していくのだ。

『ファイト・クラブ』との共通点で本作に"フィンチャーらしさ"を感じた自分だが、他にも"フィンチャーらしい"と感じる部分は随所に散りばめられている。まずは、独自の映像スタイルについてである。ザッカーバーグを訴える学生の中心にいるのがスポーツ万能、エリートで金持ちという双子の学生なのだが、実はこの双子は1人の俳優が演じている。双子の俳優を使って撮影したように見せかけて、CGで合成して双子にしているのだ。

こうした映像スタイルは、監督の過去の作品でも見られる。『ベンジャミン・バトン ~数奇な人生~』ではブラッド・ピットの顔を子供の体に合成したり、さらにブラッド・ピットを10代まで若返らせていた。また、『ゾディアック』でも70年代のサンフランシスコの街並みをCGで再現している。もともとジョージ・ルーカスの特撮工房ILMで働いていたフィンチャーは、特殊効果に並々ならぬこだわりを持っているのだろう。

次に注目したいのが音楽だ。この映画でアクセントを効かせている音楽を担当したのは、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーである。思えば、『セブン』の不気味なオープニング・タイトルで流れていたのもナイン・インチ・ネイルズの「Closer」だった。フィンチャーとレズナーのコラボレーションが再び実現した音楽にも注目(注聴)だ。また、ストーリーの中で、キーマン的な役割を担うパーカー役に、グラミー賞を受賞したミュージシャンのジャスティン・ティンバーレイクを振ったのも、音楽つながりで面白い。ティンバーレイクは軽薄だが話術が巧みなカリスマ性のあるパーカーを好演している。

最後に"フィンチャーらしさ"として特筆したいのが、"人間の心の闇"だ。『セブン』では殺人犯を捜そうと奔走する刑事たち、そして『ファイト・クラブ』は暴力に魅せられた男たち。両作とも登場人物が殺人と暴力という暗闇に引きずり込まれていく物語だった。『ソーシャル・ネットワーク』では、ネット時代のビジネスに翻弄される若者たちが名声に酔い、お互いを疑い、傷つけ合っていく様が鮮やかに描かれている。Facebookの栄光に魅せられ、闇に飲みこまれていく男たちがどのような結末を迎えるのか。ぜひ映画館で見届けてほしい。

      

鶏が偉いか? 卵が偉いか?
フェイスブックの立ち上げ秘話に迫る『ソーシャル・ネットワーク』

                                             Text by Kenji Shimizu

ソーシャル裏.jpg現在では全世界に5億人のユーザーを抱えるSNS(ソーシャルネットワークサービス)フェイスブックは、ハーバード大学寮の一室で作られたものだった。創ったのは、ハーバードの学生である19歳のマーク・ザッカーバーグ。しかし、その過程の裏で、様々なトラブルを抱えていた。

映画はザッカーバーグが女の子にフラれた腹いせに「カワイイ女の子比較サイト」を驚異的なスピードで立ち上げるところから始まる。そのサイトの評判は瞬く間に学内に広まり、ザッカーバーグは一躍有名人となる。そんな折、その噂を聞きつけた双子の金持ち学生から新しいSNSの制作を依頼される。寝る間を惜しんでサイトのプログラムを書いたザッカーバーグだったが、それは双子の学生とは無縁の自身のSNS、フェイスブックのためだった...。



映画「ソーシャル・ネットワーク」の中で描かれる「フェイスブックを創ったのは誰か?」を巡る論争は、知的財産の所有権に関するスタンスの取り方で見え方が全く異なってくる。

例えば、インターネット検索エンジンで有名なグーグル社では、アイデアを思いついただけでは評価されない。つくって実現させて初めて評価を得る。それがまだ創立12年に満たないグーグル社の社風だ。「新興」ゆえ、まだ一般的とは言えない考え方だが、グーグル的視点に立つとザッカーバーグはヒントをもらっただけ、つまり、フェイスブックの創始者は間違いなくザッカーバーグなのだ。

一方で、アイデアが無くては何も生まれないこともまた事実。現代社会では、知的財産の所有権は特に尊重される。一般的な常識に照らし合わせれば、ザッカーバーグが双子の上級生からアイデアを「盗んだ」と言える。

さて、どちらの見方が正しいのか? 個人的にはザッカーバーグだと思うが、こうした考えは恐らくはまだ少数派だろう。「人のアイデアをパクっておいて何が正しいんだ?」と反発されるかもしれない。しかし、価値観の変容が著しい現在、多数派だから正しいとも限らない。特にIT、デジタルの世界ではそれが顕著だ。あまり頑なな態度を取ると、置いてけぼりを食らいかねない。何故かそんな危機感を感じた映画だった。


      

哲学者ニーチェへ捧ぐオマージュ
映画『ベストセラー』

                                                     by 樋口孝一

bestseller1.jpg盗作疑惑をかけられた女流作家ペク・ヒスは、再起をかけて娘と2人、人里離れた洋館にこもって執筆活動に専念する。村の人々は親切に迎え入れてくれたものの、どこか違和感を感じていた。そんな中、娘が村で出会った"お姉さん"に聞いたという話を元に、ヒスは新作『深淵』を書き上げる。この作品で、再びベストセラー作家に返り咲いたヒス。ところが、この作品までもが盗作だと疑われてしまう。

周囲に狂気を疑われながらも、無実を晴らすために村に戻って調査を始めたヒスは、村に隠されたある秘密に気付き始める。そして調査を進める内に、次第にその秘密に巻き込まれ、自らがその当事者となっていく......。

この映画、実はドイツの哲学者ニーチェへのオマージュなのではないだろうか。私にはそう思えて仕方ない。そう感じさせるポイントは、2つある。


まず1つ目。それは、ヒスが書きあげた小説のタイトル『深淵』だ。
ニーチェの言葉に、次のようなものがある。

怪物と戦う者は、その際に自分が怪物にならないように、注意するがいい。また、君が長いこと深淵をのぞきこむならば、深淵もまた君をのぞきこむ。

                                         〔白水社『ニーチェ全集』より〕

正義を貫くために悪を追及するあまり、自分が悪に染まってしまうという人間の弱さに警鐘を鳴らした内容だ。これはまさに、ヒスが村に隠された秘密の真相を探るうちに自らもその秘密に巻き込まれ、次第にその当事者になっていくことを暗示しているかのようである。

そして、もう1つは「狂気」だ。作品の中で、常に「狂気」を疑われ続けていたヒス。果たして彼女は本当に気が違っていたのだろうか? あるいは、「狂気」は他にあったのか?

ニーチェは「ツァラトゥストラの序説」の中で、最も望ましくない人間の姿を表すものとして「最後の人間」という言葉を繰り返し使っている。ここで言う「最後の人間」を、彼は「民主主義的な価値観にまい進し、他人と競争することを嫌い、気概を失った人間」と定義している。これは噛み砕いて言えば、「多数決で数が多い方=正義」とする「集団主義的な考え方をする人間」のことを指している。

作品中に出てくる村は、まさにこの集団主義を重視する共同体の象徴に他ならない。そしてこの映画では、個人主義よりも集団主義を重要視するその共同体の中に見え隠れする「狂気」を浮き彫りにしている。

狂気は個人の場合には滅多にないことである、――しかし集団、党派、民族、時代の場合には定例である

                                               〔『ニーチェ全集』より〕

ニーチェのこの言葉に、村に隠された秘密の真相に迫るカギがありそうだ。

      

緻密な構成の中に "仕掛け"がキラリと光る
韓国映画『ベストセラー』

                                                    bestseller2.jpgby岩屋圭典

恐らく自分以外にもいると思うが、映画を見ていると時折、途中でだらけてしまって内容が入ってこなくなる時がある。ソワソワしたり、時間をやたらと気にしてしまったり......。

どんなにストーリーが良くても、なるときはなる。プツンと糸が切れるかのように、ふいに集中力が切れてしまうのだ。問題は、ストーリーではなく構成にある。構成が平板だと、"中だるみ"してしまうのだ。

しかし、今回の韓国映画、『ベストセラー』はそんな"中だるみ"を一切許さない。緻密に計算され、作りこまれた構成になっているのだ。

2年前に盗作疑惑をかけられて以来、スランプに陥ってしまったベストセラー作家ペク・ヒス(オム・ジョンファ)。再起をかけ、彼女は執筆活動に専念するため1人娘のヨニ(パク・サラン)と共に、小さな村のとある別荘にこもることにする。

しかし、その別荘は、家全体に奇妙な音が響いたり、2階の奥に固く閉ざされた部屋があったりと、異様な雰囲気に包まれていた。村の人たちも、親切だがどこかよそよそしく不自然。ある日、娘のヨニが"お姉さん"と呼ぶ、謎の人物との会話の内容をヒスに話す。ヨニの話に魅入られたヒスは、その話を題材に新作を書き上げる。しかし、その作品に、またしても盗作疑惑がかけられてしまうのだ。無実を主張するヒスは、再び村に戻って調査を開始する......。

前半で描かれているのは、ぺクが怪奇現象を元に小説を書き上げるまで。ここまでは、いわばホラー映画の要素が強い。娘が話している"お姉さん"とは一体誰なのか? ペクが屋敷で見た怪奇現象とは何だったのか? 様々な謎が秘められ、非常に難解なストーリーになっている。能動的な姿勢で必死に謎ときを強いられ、セリフの1つ1つに集中して観なければすぐに展開についていけなくなってしまう。

一方 後半では、ペクが盗作の疑いを晴らすために調査を開始し、村の秘密が明らかになっていく。こちらはいわば、サスペンスの要素が強い。スピード感があり、グイグイと視聴者を引っ張っていってくれる。話が2転3転する意表を突く展開の連続だが、謎が次々とひも解かれていくため、受け身の姿勢で見られるようになっている。

そして特筆すべきは、前半と後半の境目に埋め込まれたちょっとした"仕掛け"だ。この仕掛けによって、前半を見ていた時に感じた違和感の正体が、明らかになる。ここで前半の流れが覆り、あっと言う間に後半に突入する。本来なら、ホラー映画がサスペンスに変わるなど、違和感を感じる所だろう。ところが、この映画では、前半のホラー部分と後半のサスペンス部分の間に粋な仕掛けを盛り込むことで、視聴者にその違和感を一切感じさせることなく、一気に結末まで展開させている。

恐らく、前半のホラーの要素だけで最後まで行く映画だったら、中だるみして飽きていただろう。逆に、後半のサスペンスの中に見られる激しいシーンばかりだったら、間違いなく疲れてしまっていただろう。しかし、この映画は、ホラーの要素の強い前半とサスペンス色の強い後半、そしてその両者の間に緻密に計算され、植え込まれた "仕掛け"の3つが揃うことにより、絶妙なバランスを生み出し、誰もが最後まで集中力を切らさずに見れる映画になっているのだ。

それにしてもこんなにも思い切った構成にしてしまうとは、実はイ・ジョンホ監督も映画の途中でソワソワし始める1人なのではないだろうか? しかもこの大胆さから察するに、その症状は案外深刻なのかもしれない...。

東京国際映画祭出展の『ベストセラー』、集中力がある人も無い人も、ぜひとも映画館へ足を運んでほしい。

      

ホラー? サスペンス? アクション?
盛りだくさんで満足度100%のコリアンシネマ

                                                    by松澤友子 

bestseller1.jpg韓国のベストセラー作家として脚光を浴びるぺク・ヒス(オム・ジョンファ)は、盗作疑惑をかけられ、スランプに陥ってしまう。その後、彼女は再起をかけて執筆活動に専念するため、娘を連れてソウルを離れ、ある静かな村の別荘に滞在することにする。そこは、かつてアメリカ人宣教師が住んでいたという古い洋館。村の住人は彼女を歓迎するが、どことなく奇妙な雰囲気が漂っていた。

別荘での生活が始まっても、なかなか筆が進まないぺクだったが、娘がその洋館で出会った"お姉さん"から聞いたという話を元に、見事な作品を書きあげる。しかし、何とこの作品が再度盗作疑惑をかけられてしまう。果たして彼女は本当に盗作をしたのか? 娘のヨニが村の洋館で出会った "お姉さん"とは一体誰だったのか? 真実を知るために行動を起こすぺクを悲惨な運命が待ち受ける......。


映画は冒頭から、ぺク・ヒスが盗作疑惑をかけられて泣き叫ぶシーンが続き、波乱に満ちた展開を想像させる。更に、彼女が執筆活動のために滞在することになった洋館は、薄暗い森に囲まれて、何とも言えない不気味な雰囲気を醸し出していた。ここまで観ただけでも、いかにも「何か起こりそう」な予感。もちろん、その期待は裏切られることなく、洋館や村では奇妙な出来事が続く。特に物語の前半部分は、先の展開が全く読めず、驚きの連続だ。

加えて、ぺク・ヒスを演じるオム・ジョンファの演技が一級だ。目の周りを黒く縁取ったメイクに猫背、更にぼさぼさパーマの髪の毛がダラリと顔の上に垂れ落ちている。この外見を見ただけでも、まるで何かに取り憑かれているかのようだが、この不気味な外見に更に拍車をかけるのが、彼女の演技だ。執筆活動が思うように進まないシーンでノートパソコンを破壊したり、娘にどなり散らしたりする演技は迫真に迫り、思わず一緒に叫んでしまいそうになった。

ホラー映画の雰囲気で始まった本作品だが、後半は一転して、激しいアクションの連続。2度目の盗作疑惑をかけられて、真実を確かめるために調査を始めたヒスは、思いもよらぬ事件に巻き込まれていく。真実を明らかにしようとするヒスと、それを隠そうとする者たち。両者が文字通り、激しい死闘を繰り広げる。物語の前半では、背筋が凍るような恐怖を感じて手に汗を握りっぱなしだったが、後半では激しいアクションに、やはり手に汗を握りっぱなしだった。

作品の所要時間は約2時間。その中にホラー、サスペンス、アクション等、様々な要素が盛り込まれている。加えて、謎に満ちた物語の展開からは片時も目が離せず、気づいたらエンドロールが流れていた。

      

アクションの迫力とゾンビの恐怖を3Dで体感せよ!
『バイオハザードⅣ アフターライフ』

                                                 Text by 鈴木純一

ちらしバイオハザード.jpg人間とアンデッド(ゾンビ)が戦う『バイオハザード』の最新作は、シリーズ初の3D映画だ。近年は3Dがブームになっているが、『バイオハザードⅣ』は3Dカメラで撮影された、"本物の3D映画"である。

本物の3D映画とは何か? それにはまず、最近の映画産業の3D事情から説明する必要があるだろう。例えば、3D映画として公開された『タイタンの戦い』。これは1台のカメラで通常通り撮影した映像をコンピューターで3Dに変換した、いわば"3D化映画"である。

一方、本作品は撮影の段階から3Dだ。2台のカメラを人間の目と同じように横に並べて撮影するフュージョン・カメラという機材を使うことで、撮影の段階から立体的な映像を撮ることが可能になったのだ。こうして撮影された"真の3D映画"は、"3D化映画"と比べると、立体感と奥行きに歴然とした差が出る。


実はこれは、ジェームズ・キャメロン監督が『アバター』を制作する際に使用したもの。本作の監督であるポール・W・Sアンダーソンがキャメロンにアドバイスを求めたことで、『バイオハザード』シリーズで初めての "本物の3D映画"が実現したのである。


ところで、近年の3D映画の中には「わざわざ3Dにする必要はないのでは?」 と思うような作品も多い。特に字幕版で観る場合、字幕までが浮き上がって見えて読みづらいという経験をした人もいるだろう。また、長時間に及ぶ映画の上映中ずっと3D眼鏡をかけて大画面を見ていると、しまいには頭がクラクラすることすらある。

ところが、『バイオハザードⅣ』は違う。約1時間半という適度な上映時間に加え、3Dで観ることにより、一種のアトラクション(ゲーム)感覚が味わえるのだ。それも当然、元はと言えばこのシリーズは人気ゲームを映画化した作品。ゲームセンターで、迫りくるゾンビたちを次々と銃で撃ち落としていくリアル・ガンシューティング・ゲームのような、アトラクション(ゲーム)感覚のシーンが盛りだくさんなのだ。ゾンビ(アンデッド)やアクションといったキーワードから考えてみても、これこそ3Dで見るべき映画と言えるだろう。

実際、本作には、渋谷を舞台にした銃撃戦と大爆発のオープニングに加え、手裏剣、斧、銃弾や割れたガラスなどが観客めがけて飛んでくる3D映画のお約束な演出もある。特に中盤の刑務所でアンデッドとアリス(ミラ・ジョボヴィッチ)が戦うアクションシーンは、本作屈指の緊迫感ある見せ場だ。逃げるアリスの背後に迫るアンデッドの大群に、思わず「アリス、後ろ!後ろ!」と言いたくなる。

アンダーソンは『モータル・コンバット』『エイリアン VS プレデター』などアクションを得意とする監督だが、本作で3D映画に新たな表現方法があると確信したのか、現在ミラ・ジョヴォビッチ主演で『三銃士』を3Dで撮影中だ。ちなみにご存じの方も多いだろうが、アンダーソンとジョボヴィッチは夫婦である。


そして、もう一つ注目したいのはキャスティングだ。本作では、ドラマ『プリズン・ブレイク』で人気を得たウェントワース・ミラーが登場するが、ミラーが演じるクリスは最初、刑務所に閉じ込められているという設定だ。『プリズン・ブレイク』で刑務所から脱走する囚人を演じたミラーを再び刑務所に入れるというシナリオは、ドラマファンへの目配せか。

さらに、前作から引き続きクレアを演じるのは、ドラマ『HEROES/ヒーローズ』でもお馴染のアリ・ラーター。他にも少女Kマートに扮したスペンサー・ロックも再び登場する。さらに『Ⅱ』で活躍したジル・バレンタイン役のシエンナ・ギロリーも復活! 一体、どこで彼女に会えるのかは......観てのお楽しみである(笑)。


前作までの登場人物が新たな役割を担ってお目見えする本作は、シリーズの集大成にして新しいステージの始まりともいえる。そして3D技術によってアクションとスリルが満載のアトラクション映画となった『バイオハザードⅣ アフターライフ』、ぜひ映画館で体感してほしい。

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