気ままに映画評

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豪華キャストに釘付け ノスタルジー溢れる
アメコミ・ヒーローの痛快アクションコメディ『グリーン・ホーネット』

                                                 Text by 水野弘子グリーンホーネット1.jpg

60年代のTVドラマとアメリカン・コミックスの人気ヒーロー「グリーン・ホーネット」がスクリーンによみがえった。今回のリメイク版は、鬼才ミシェル・ゴンドリー監督の手で、アクションコメディに仕上がった。ブルース・リーの出世作だったドラマ版を懐かしむ往年のファンにとっても、懐かしい仕掛け満載の作品だ。

主人公の放蕩息子ブリット・リードは父の急死により、急遽、大新聞社のトップとなる。LA社会の腐敗を目の当たりにし、憤ったブリットは、お抱え運転手カトーとともに緑マスクで変装し、ハイテクマシン「ブラック・ビューティー」を駆って、麻薬組織を大掃除する。

魅力はずばり多彩なキャスト陣だ。麻薬組織の黒幕クリストフ・ヴァルツは「イングロリアス・バスターズ」でランダ大佐を演じた、あの怖いヒト。背筋も凍る演技で、あまたの賞を総なめしたヴァルツだが、本作の悪党ぶりはややキュートな味付け。スーツをけなされると逆上するところが可笑しい。
主演・脚本のセス・ローゲンは北米で人気のコメディアン。今回、セレブな御曹司役に臨むために厳しくダイエットしただけあって、「恋するポルノグラフィティ」で演じたおデブでエッチなコーヒー店員とは別人のよう。本作では過激な下ネタは封印したが、毒舌満載のツッコミは健在。日本での知名度は低いが、ぜひブレイクしてほしい俳優である。

また台湾ポップ界のプリンス、ジェイ・チョウの相棒ぶりも頼もしい。ブルース・リーの当たり役というプレッシャーを跳ねのけ、アクションからピアノ、エンドロールのラップまで多才にこなしてみせた。最近はシリアスな役どころが目立つキャメロン・ディアスも、本作では美人秘書役でコメディエンヌの本領を発揮している。

さらにチョイ役でカメオ出演している「スパイダーマン」のジェームズ・フランコが素晴らしい。短いシーンながら、新興ギャング役のチンピラぶりがハマっており、存在感を示した。フランコの新境地を充分に予感させるシーンだった。また、「ターミネーター2」の美少年エドワード・ファーロングが麻薬売人役で顔を出しているが、こちらは見紛うほどの老け込みようだ。思わず過酷なショウビズ界の時の流れを実感・・・。

また、オリジナル版のドラマを意識した趣向が随所に散りばめられ、こちらも大きな見せどころとなっている。ブリットが悪党退治に出る際に毎回つぶやく"Let's roll Kato"(カトー、出かけるぞ)は、オリジナル版ファンお待ちかねの決めゼリフ。ダークでシリアスだったドラマ版ヒーローの名文句を、セス・ローゲンはややパロディ風な味付けでカバーしている。また、カトーが発明した愛車「ブラック・ビューティー」の登場シーンが実にレトロでいい感じだ。ガレージ床がくるりと反転し、普通車と表裏に現れる「ブラック・ビューティー」。この四谷怪談の「戸板返し」みたいな仕掛けは、ドラマ版で大きな話題を呼んだもの。オールドファンの郷愁をくすぐる旺盛なサービス精神を評価したい。偉大なスターへのオマージュとして、ブルース・リーの素描がカトーのスケッチに混じっているシーンもお見逃しなく。

ちなみにクールなカスタムマシン「ブラック・ビューティー」は、全米から掻き集めたクライスラー・インペリアルの1964~1966年ビンテージモデルを地元ロスで改造したもの。カスタム装備に注目すれば、敵の体当たりを撃退する「ベン・ハー」ドリルや、走行中にドアを半開きするだけでぶっ放せる、ドア装備のマシンガンは、いかにも便利なアイテム。その他にもフロントグリルに仕込んだ火炎放射器やミサイル発射装置など、装甲マシン好きにはたまらないスペックがてんこ盛りだ。このカスタムカーをシーン別に29台用意したらしいが、撮影終了後に「生き残った」のは僅か3台。パトカーなどの車両にいたっては100台近くが廃車送りとなったという。こんなハチャメチャなカーチェイスを3Dで楽しめるのだから見逃す手は、ない。

「グリーン・ホーネット」は、多くの作り手の思いがこもった贅沢な娯楽作品だ。キャストの多彩な顔ぶれやマニアックな演出を、ぜひ劇場で堪能してほしい。