気ままに映画評

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2011年3月 アーカイブ

ゾンビ映画をこよなく愛する修了生ライターが潜入レポート!
第1回東京国際ゾンビ映画祭2011

                                            Reported by 鈴木純一
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45ポンド(約6000円)という超低予算で制作されたゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』が3月5日から公開される。この映画の公開記念として2/26~3/4まで、第1回東京国際ゾンビ映画祭2011が開催中だ。日本初のゾンビ映画の祭典となる本映画祭では、古典的な名作から新作まで、16本のゾンビ映画が上映される。旧作のほとんどは既に観ているものの、スクリーンの大画面で観られるとあっては、大のゾンビ好きの自分も行かない選択肢はない。早速27日と28日に行って来たので、当日の様子をレポートする。
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■"ゾンビ肉ジャーキー"は即完売!
ゾンビを食らいながら『悪魔の墓場』を鑑賞!?

zonbi1.jpg映画祭の会場となった映画館はヒューマントラストシネマ渋谷。27日は、イタリア・スペイン合作の『悪魔の墓場』を観た。

会場は、ほぼ満席。ロビーでは『ゾンビ』を始めとする映画のDVDや『ゾンビランド』などのゾンビ映画のパンフレットが並び、ホラー好きの自分としては、沢山のゾンビに囲まれて思わず心が高揚してしまった(笑)。また、"ゾンビ肉ジャーキー"なるものが販売されると聞いていたので、買おうと思ったが探しても見つからない。スタッフの方に聞いたら、すでに売り切れたとのこと。残念!!!

本編上映前には映画祭のプロデューサーでもある映画評論家の江戸木純氏と、『ゾンビ映画大辞典』の著者にしてゾンビ映画ウォッチャー伊東美和氏のトークショーが行われた。トークショーでは江戸木氏が本作についてこう語っていた。

「この映画はジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を無断でリメイクした映画なんですが、ヨーロッパで制作されると不思議なことに全く異なるテイストになる。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は社会派ゾンビ映画ですが、『悪魔の墓場』は純粋に恐怖を追及した作品に仕上がっています。ゾンビ映画でも国によって違いが出るのが面白いですよね」


zonbi2.jpg『悪魔の墓場』は英国マンチェスターを舞台に、害虫駆除の超音波で死者が蘇り人間を襲うという物語。映画全体を覆う不気味さとリアルな特殊メイクが魅力の映画だが、前述のトークショーで話していたように『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にはなかった、ゾンビが他の死体に自分の血を分けて仲間を増やすという、吸血鬼のような設定が加えられていたのも面白かった。レンタル屋にDVDがあるはずなので、純粋な恐怖を味わいたいという方にはオススメだ。


■思わず脱力する愛すべき作品
『アイランド・オブ・ザ・デッド』は広い心で鑑賞せよ!

翌28日にはイタリア映画『アイランド・オブ・ザ・デッド』を観た。上映前のトークショーには、前日の江戸木氏と伊東氏に加えて『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ 血塗られたハッタリの美学』の著者である映画ライター山崎圭司氏の3人が登壇した。

山崎氏によれば本作は、甘いシビレがくる映画。観始めて3秒で"観るのをやめればよかった"と思うのだそうだ。山崎氏の意見に同調しながら、江戸木氏は本映画について「この作品は怖がるのではなく笑ってください。今回の映画祭でぜひ入れたかった映画で、内容的には東京国際ファンタスティック映画祭でも上映を断られる作品ですから、広い心で観てほしい」と愛のある言葉を述べていた。


zonbi3.jpg上映が始まると、トークショーの話の通り予想以上にすごい映画だと納得した。ある島に着いたトレジャーハンター(宝探し)たちが、その島にいるゾンビたちと戦うという物語なのだが、俳優のひどい演技やアクションの緊張感のなさはもはや脱力もの。しかも建物が炎上するようなお金のかかるシーンは、他の映画のフィルムを(間違いなく無許可で)使っていると思われる。(どうやら本作の監督ブルーノ・マッティ(2007年に没)は、他の映画のフィルムを勝手に使う人らしく、同監督の遺作『ゾンビ2009』でもハリウッド映画『クリムゾン・タイド』のフッテージが無許可で使われている。)更に、ゾンビ映画の傑作『サンゲリア』に出てくる眼球を突き刺すという場面の再現シーンに至っては、なんと刺さらずに終わるといった肩透かし。その他、ゾンビがフラメンコを踊るなど、観ている者がひきつった笑いと脱力感に襲われる作品で、心が広くなった...というよりダラリと伸びた気がした。

この「ま~たダメ映画を観ちゃったよ」感は、高校生の頃に『吐きだめの悪魔』や『トロル2 悪魔の森』などのトンデモ映画を観た頃を思い出した(両方とも好きだが)。本作を観ながら、高校生時代のような「やっちまった」感に浸って甘酸っぱいシビレに酔ったのだった。『アイランド~』は3月にDVDがリリースされるので、ホラー映画好きで心の広さに自信がある方は是非。

zonbi4.jpg今回は第1回目の映画祭ということで、ゾンビ映画の教科書ともいうべき作品を選んだと語っていた江戸木氏だったが、確かにこれだけの数のゾンビ映画が集まる機会はそうない。レポートした2作品の他にも『サンゲリア』『ゾンビ』『死霊のえじき』などの名作や、日本から世界に向けて放つ注目のゾンビ映画『ヘルドライバー』などの作品が勢ぞろいしていた。

映画祭そのものは4日で終わりだが、興味を持った人はぜひDVDなどでチェックしてほしい。そして3/5から公開される『コリン LOVE OF THE DEAD』にも注目!

『コリン』公式サイト「東京国際ゾンビ映画際2011」告知:
http://www.colinmovie.jp/zombiefes/index.html