JVTA代表 日本語表現力強化コース 新楽直樹

映像翻訳者やバリアフリー字幕・音声ガイド制作者は、これまでもこれからも、日本語のプロであり続けなければなりません。AIが汎用的な文章を生成する時代が来ている今こそ、その真価が問われていると強く感じています。

英日映像翻訳コースの教科書である『字幕翻訳とは何か 1枚の字幕に込められた技能と理論』の冒頭に、私は次のようなメッセージを記しました。2018年のことです。

時代は大きく変わろうとしている。AIが自動生成した字幕や、動画ファンが自身の機材で編集した吹き替えがプロの仕事と比較される日は、もう目の前に迫っている。「プロの映像翻訳者が生成した」というだけで、市場が字幕や吹き替えをありがたがる(相応の対価を支払う価値を認める)ことはなくなるだろう。最良の成果物を求める発注者は映像翻訳者にこう問いかけるはずだ。「あなたのようなプロが作る字幕や吹き替えは、他の方法で生成されたものと比べてどこが優れているのですか? 具体的に説明してくだい」。自らの成果物が確かな理論に基づいた技能から成り立っていることを説明できれば、映像翻訳者の仕事は選ばれ、相応の対価が維持されるだろう。しかし、この質問に答えられなければ「プロが作ったものは違うのだ」といくら主張しても相応の対価を維持することはできないだろう。

まさにその通りの時代になりました。ただし、今はまだ「AIが及第点の文章を生成することに世の人々が酔いしれている段階」。「AIにはその日本語が正しく、美しく、読者・視聴者・クライアントの求めに合致しているということを説明できないし、責任も取れない」という致命的な問題に焦点が当たるのはこれからです。

AIが生成した日本語には理論がない——。優れたファッション・デザイナーは、<見た目がいい>だけの服を作ろうとはしません。素材、細部の縫製、カラーのトレンド、時代にグルーブした(あるいは抗う)感性の表現……。様々な技能と理論、そして思いを自らの服に託し、求められればそれについていつでも語ることができるのです。

言葉を紡ぐ仕事もそれと同じではないでしょうか。AIに生成させた文章であっても、最終的に付加価値を与えて<売り物>に仕立てるのは、良質な文章の理論を学んだ「日本語のプロ」だけなのです。

JVTAの日本語表現力強化コースでは4回の課題と授業を通じて、プロの表現者に不可欠の「クリエイティブ・ライティング力」と「言語編集力」を身につけます。説得力のある構成、文頭・文末の処理、フレーズの取捨選択法、“ねじれ”のない文章を書く秘訣など、視聴者・読者が直感的に良文だと感じる書き方とその理論を学ぶコースです。

日本語を「苦手」から「得意」へ――。ぜひチャレンジしてください。