気ままに映画評

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『ブーリン家の姉妹』
 by 小野寺壮(2008年10月期基礎コースI 水曜昼クラス)

英国ゴールデンエイジ前夜


一体、誰が主人公なのだろう?
激情を隠さず、持てる力全てを使って誰しもを手玉にとり、遂には王までも手中におさめた"光の悪女"アン・ブーリン。
思いやりに溢れ、ささやかな生活を望みながらも王と愛を交わすことになった"陰の淑女、愛の人"メアリー・ブーリン。
信仰の擁護者の称号を授けられつつも"王のアイデンティティー"のために自分の王国内外をねじまげたヘンリー8世。
ひたすらに、一途に。三者三様、己の信じる道を貫きとおす姿が圧倒的だ。
全編通してHDカメラで撮影された映像は中世の美しい自然や衣装、そして表情を克明に映し出している。
表情といえばヨハンソンとポートマンの文字通りの競演が見所の1つ。息遣いひとつから何気ない目線の投げ方までもプライドのぶつけあいをしている。
ヘンリー8世のエリック・バナも2人の引き立て役に留まらず威風堂々たる王様っぷりから歴史を産む狂気までを好演。
鬼気迫る主役陣と周りを固める舞台上がりの演技巧者たちがこの作品に息を吹き込んでいる。
テレビシリーズで名を馳せた監督らしくテンポの良さと巧みな引き込み方で観客を飽きさせることなくエンディングまで運んでいってくれる。その後には少し重たく、しかし後悔のない余韻が残るはずだ。