気ままに映画評

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ジュリア・ロバーツ主演『食べて、祈って、恋をして』
"程よくスピリチュアル"な、ニュー・ライフスタイル・ムービー

                                                  Text by naiamao

8月19日、この9月に公開される、ジュリア・ロバーツ主演の最新作『食べて、祈って、恋をして』のジャパンプレミア試写会に行って来た。


この試写会には初来日のジュリアとプロデューサーのライアン・マーフィーが登場。今までスクリーンで観る分にはほとんど意識していなかったが、ジュリアはモデルさながらの長身で、客席からも「(以前よりもっと)きれいになったね」と感嘆の声が洩れていたほど美しかった。プロデューサーも女性で原作はエリザベス・ギルバートの自伝的小説とのこと、いかにもガールズシネマなのではと想像していた。その予想は、ある意味大当たり(笑)。

ただ、人間の根源的な欲求である「食べる」、「祈る」、「恋をする」という3つのテーマの中で、ウィットに富んだ言葉のスパイスが効いていて、男性が観ても楽しめる内容になっている。


あらすじは、非常にわかりやすい。ニューヨークでジャーナリストをしていたアラフォー女性エリザベス(ジュリア・ロバーツ)は、ある占い師に出会い人生の予言をされる。その後、予言通り離婚をした彼女は、失った何かを取り戻すべく1年をかけて「自分探しの旅」に出ることを決意。そして、イタリアで「食」を堪能し、インドで瞑想に励んで「祈り」、最終的にバリで運命の人と出会い「恋をする」のである。これだけ聞くと「自分探し?もしや単なる傷心旅行記→ハッピーエンドものなのでは...」という、他人の日記を見せられるかような一抹の気まずさを感じて、私などは引いてしまう。しかし、本作は違っていた。


あらすじは単なる設定であり、伝えたいメッセージは全て、旅で出会った人々との会話や、一つ一つの出来事の中での「気づき」として語られるのだ。


例えば、人間の三大欲求である食欲を取り戻すべく訪れたイタリア。このイタリアで、リズはある時友人から「あなたはどんな人なの?」と聞かれる。これに対して、彼女は上手く答えることができない。ここで初めて、彼女は気づく。自分が何者(どういう人間)で、本当は何を望んでいるのか。この根本的なことが、自分自身で分からなくなっていたのだ。

その後、リズはむさぼるように貪欲にイタリアの食を求め、同時に自分を形容する言葉を探し始める。自分の心や体が喜ぶ美味しい食べものを貪欲に追い求めること(=どこで、何を、誰と、どんな風に食べたいかを追求すること)は、誰でもない「自分」を知ることに他ならないからだ。


また、2国目に訪れたインドではメディテーションや祈りといったスピリチュアルな要素が登場し、物語の核になっているのも時代を反映していて興味深い。極端なオカルトではなく、あくまで叡智のエッセンスの一つとしてスピリチュアルな要素を生活に取り入れる。その「ゆるい」感覚が、バランスが取れていてとても新しい。また全編を通して、自然と調和したライフスタイルの提案がさり気なくされているのにも好感が持てる。

最近、特に都会で生活していると「個人レベルで心の平和を手にしたい」と考える人が増えていることを実感する。日本でのスピリチュアルブームもその現れで、戦前の日本人が日常持っていた精神への回帰なのかもしれない。そして、まさに本作は、今私たちがどうすれば心の平和を得られるのか、そのヒントをいくつも与えてくれる。


エンディングのバリは、「天国と地が出会う」場所というだけあり、選りすぐりのロケ映像が最高だ。どこまでもなだらかに広がる棚田(日本より緑が濃い)や、夕陽に照らされた海が金色に輝く断崖の風景に心洗われる。そのBGMにはべべウ・ジルベルトやジョアン・ジルベルトなどのブラジル音楽が絶妙なタイミングでかかり、新鮮かつしっくりと耳に響く。


何気ない台詞の中に散りばめられた、心の琴線に触れることばを見つけるのが楽しい本作は、いわば、ことばと旅の風景が織りなす一遍のタペストリー。観終わっても、心に残ったその美しく繊細な織物のイメージが、豊かな気持ちにさせてくれる。

この映画は、ありがちな「自分探し」というストーリーを追っていたのでは、決して堪能しきれない。観る側も、スピリチュアルに"感じ" "味わう"ための作品なのだ。


肩の力を抜いて自分の人生を考えてみるもよし、バーチャルの世界旅行を楽しむもよし。"程よいスピリチュアル感"で心の平安を得たいと考える人は、ぜひ本作を観に映画館に足を運んでほしい。