気ままに映画評

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『プラネット・テラー in グラインドハウス』by 湯原史子(2006年4月期実践コース修了生

"本気の遊び心″満載、ロドリゲスワールド!


「デス・プルーフ」に続き、「グラインドハウス」に欠くべからざるもう1本の"片割れ"映画が公開されました。その名も「プラネット・テラー」。
ロバート・ロドリゲス監督が、B級映画に対する生真面目なまでの思いを惜しみなく注ぎ込んだ作品となっています。存在しない映画の予告である「ニセ予告編 ( fake trailer)」で始まったり、映画の途中で画面が突然暗転し「この場面のフィルムを一巻分紛失」と人を食ったテロップを出したり、当時を知らない人でも70年代アメリカ映画のいかがわしい雰囲気を味わえる作品になっています。
劇場で見る予告編は本編鑑賞前の心のウォームアップに必要不可欠なものですが、ニセ予告編で70年代アメリカの安劇場的雰囲気を作り出すという粋な計らいには嬉しくなりました。ロドリゲス映画の常連ダニー・トレホを主演に据えた「マチェーテ」というアクション映画の予告編は、思わず公開日を調べてしまいそうなくらい"いかにもありそう"なリアルさで、出色の出来栄え。
主人公カップルも、"まっとうな"B級映画の香りが漂うツボを突いたキャスティングでした。先日ロドリゲス監督がヒロインを演じた女優と婚約したことを知った時も、監督がこの映画へ抱く気持ちの深さと愛情を改めて感じたものです。内容はといえば、デス・プルーフをはるかに上回る過激な映像が満載。ギターケース仕込みのマシンガンを世に出したロドリゲス監督の面目躍如とも言うべき、脚に装着されたマシンガンによる乱射シーン壮観のひと言です。予想通りのありがちな展開も、予想を超えた仰天シーンもすべて観客を楽しませようというサービス精神に溢れていて最後まで目が離せません。
「グラインドハウス」は夢の競作です。願わくは池袋の新文芸座や上野のスタームービーといったような老舗の名画座のシートに身を沈め二本立てで鑑賞できれば、タランティーノ、ロドリゲス両監督ファンにとって至福の時となるのではないでしょうか。