気ままに映画評

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『プラネット・テラー in グラインドハウス』by 鈴木純一(2006年4月期実践コース修了生)

炎の映画監督、ロバート・ロドリゲス


ロバート・ロドリゲスは器用な監督だ。犯罪映画がホラー的な展開を見せる「フロム・ダスク・ティル・ドーン」、そして「スパイキッズ」みたいなファミリー向け映画まで、様々なジャンルの作品を撮っている。それはロドリゲスが実にたくさんの映画を観てきて、好きな映画も多種多様な時代やジャンルに渡っていたためだろう。だから映画監督になってからも、常に異なったスタイルの作品を撮り続けているのではないかと思う。そんな彼の最新作「プラネット・テラー」は、ホラー映画への情熱のありったけを注ぎ込んだ作品である。
物語の舞台はテキサス。化学兵器で人間がゾンビに変身し、生き残った人々を襲い始める。次第に追い詰められた主人公たちが取った行動とは...。
「28日後...」「ドーン・オブ・ザ・デッド」以降、ホラー映画には動きの素早いゾンビが登場するようになった。しかし本作では、ゆっくり歩く昔ながらのゾンビが登場する。おそらくロドリゲスは、ジョージ・A・ロメロ監督作「ゾンビ」に出てくるような古典的なゾンビ映画を再現しようとしたのだろう。しかもゾンビが銃で撃たれる場面は必要以上にやたらと血しぶきの量が多い。明らかにこれは、ホラーマニアへの"大出血サービス"だ。
「プラネット・テラー」にはクェンテイン・タランティーノ演じる変態兵士や、ある"モノ"を収集する科学者など、常軌を逸した特異なキャラが登場する。しかし何と言っても極めつけは"片脚マシンガン・レディー"だろう。「死霊のはらわた2」のように、失った腕に武器を装着するキャラは過去の映画にもいたが、脚に銃を装着させたケースはほとんど前例がない。美女が脚に装着したマシンガンを撃ちまくる場面は壮快で、文句なくカッコいいのである。オープニングのノリのいい音楽から始まり、美女、ゾンビ、血しぶき、爆発、そしてマシンガン!荒唐無稽でくだらないが、ホラー映画ファンには大満足なエンターテイメントである。ロドリゲスには、これからも映画への情熱の炎を燃やし続けてほしい。こんな"マジメにふざけてる映画"を撮れるのはロドリゲスしかいないのだから。