発見!今週のキラリ☆

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2008年6月 アーカイブ

vol.34 「泳ぐこと、泳ぎ続けること」 by 桜井徹二


6月のテーマ:コツコツ続けていること

僕は物事を判断したり納得するのに、人一倍時間がかかるほうだ。そして日々の暮らしの中でやりたいこと、やりたくないことがわりとはっきりしている。だから新しいことにあれこれと挑戦するよりも、1つのことにじっくりと取り組むほうが性格的に向いているし、これまでも実際にそうしてきた。

その1つが水泳だ。8年前からプールに通い始め、それから短い中断期間をはさみながら、平均して週に4~5日ほど泳ぎ続けてきた。完全に独学なので、はっきり言って大したスイマーではない。でも8年間、誰に頼るでもなく自分1人の力でこつこつと泳ぎ続けてきたことは、僕にとって数少ない誇るべき事柄の1つだ。

今では1~2キロくらいならあまり苦もなく泳げるけれど、8年前にジム通いを始めた頃は、クロールに関しては15メートルも泳げなかった。僕は間違いなくカナヅチだったのだ。子供のころは、水泳の授業が何よりも嫌いだった。

しかしそれなりの大人になったころ、ふとした思い付きでジムに通い始めた(今となってはその理由ははっきりとは思い出せない)。僕は泳法を解説したテキストを熟読し、上手な人の泳ぎを観察し、何より足しげくプールに通うことで、徐々に正しい泳ぎ方を身につけていった。土台がほぼゼロだっただけに、泳げる距離は着実に伸びていった。大人になってからでも日々目に見えて成長できることがあるという事実に、心底驚かされた。

ある程度泳げるようになったころに、熱が冷めかけたこともある。だが改めて泳ぎ方を変えてみたり、より高度なテクニックを取り入れてみると、そこにまた新たな地平が開けた。そうしているうちに気が付けば8年が経ち、今では泳ぐことは僕の日常の一部となった。

水に入ると、まずはその日の調子を確かめるためにゆっくりと泳ぎ始める。そして今日も大丈夫だ、とわかると少しずつペースを上げる。泳いでいる間、聞こえるのは水の音だけだ。手足は淡々と一定のリズムを刻み続ける。

もし物好きな誰かに「なぜ泳ぐのか?」と問われたとしたら、迷わず「楽しいから」と答えるだろう。健康維持のためでも、やせるためでも、筋肉をつけるためでもない。そこはかとなくシンプルな理由だ。でもそれが一番大切なことだと、ひそかに思ってもいる。

* * *

先月よりMTC(旧・翻訳センター)のメンバーとなりました。どうぞよろしくお願いします。ちなみに水泳についてはMTCで勤務を始めてからは一時中断していますが、近々再開するつもりです。

Vol.35 「脱コツコツ・モラトリアム~きっかけはキラリ☆から!」  by 杉田洋子


6月のテーマ:コツコツ続けていること

いつぞやのピンクじゃないが、コツコツというのはおよそ私と縁のない言葉だ。
小さな頃から短期集中型。独立した小さなゴールを切っては次のゴールへ突き進
む日々。とりわけ大学に入ってからは、電車を片っ端から乗り継ぐように、刹那
的な生活を送ってしまった。おかげで後ろを振り向いてみても、通ってきた道が
分からない。

そもそもコツコツってどういうこと?コツコツ稼ぐ、貯金する、運動する勉強す
る、何かを集める...。誰に言われるでもなく、義務でもないけど、ためになる何
かを地道に続けること。とにかく、この"地道"というところが私の最も苦手と
するところだ。続けてることはあっても、コツコツというのとは違う気がする。

そんな私がここ数年、少なくとも毎日チェックし続けてきたものといえば、フィ
デル・カストロの健康状態と"ブログ"くらいだ。中でも、私はかなりのグルメ
ブログ好きで、いくつもお気に入りに登録している。
一度はグルメリポーターを夢見た私の見る目は、かなり厳しい(つもり)。やが
て選考の基準にも一貫性が出てきた。オンライン辞書の登録数を凌ぐライバルブ
ログたちを退け、お気に入りの座にとどまり続けるための第一条件...。それが、
"毎日更新している"、ということなのだ。クリックするたびに新しい記事がト
ップに現れるのだから、こちらとしても気合いが入る。ちなみに第二が写真の充
実度。第三が情報の充実度と視点である。

ブロガーたちは、その道にかなりのこだわりを持つ独学専門家だ。基本的に他者
の圧力を受けず、自由で正直な感想をつづるが、もちろんマナーも心得ている。
やがて同系統のブロガー間で尊敬を集め、その道のカリスマとなっていく者が現
れる。コメント欄や引用部にも、ブロガー間のパワーバランスが見て取れるほど
だ。この空気が、ますますその人のプロ意識や責任感をあおる。時にはそれが本
職となる者さえいる。もはや完全に自己プロデュースの世界である。

半職業くらいの勢いで毎日店に通い、箸を取る前にカメラを構え、地理情報やメ
ニュー、価格帯をリサーチし、所感や他店との比較研究を世に発信し続けるブロ
ガーたち。決して個人の感想に終始せず、読者の知りたい情報プラスαを網羅し
ている。彼らの日常的な研究の成果が記録されたブログは、人生の論文と言って
も過言ではない。

自分で吸収して満足するのではなく、世の中にそれを発信していくこと。自分の
持てる知識を共有すること。そのためにコツコツと経験を積むこと。振り向けば、
くっきりと道がある。これぞ憧れの大人像である。

そんなわけで、今のところ他人のコツコツに乗っかって、コツコツとブログを読
み漁る日々が続いている。