突如、空から現れた怪人こうもり男が、仮面ライダーの腕をつかんで上空へと舞い上がる。かなりの高度に達したところで手を離し、ライダーは真っ逆さまに墜落していく。迫る地上の街並み。しかし、ライダーは鮮やかに身を翻して地上に降り立った。

これは、石ノ森章太郎作、漫画『仮面ライダー』の一場面だ。墜落し始めてから着地するまで、16コマかけてその様子がじっくり描かれる中、ライダーが膝を抱えてぐるぐる回転する1コマだけ、スローモーションに感じられる。そもそも絵が動かない漫画で、スローモーションとはどういうことか。その手法は、漫画の文法を逆手に取ったものだった。

漫画では通常、動いているものの周囲に効果線を描き入れたり、文字で擬音を入れたりして、動きを表現する。しかし、上記の1コマにはそれがない。その代わりに、ライダーの姿が連続写真のように重ねて描かれ、少しずつ動いていることが示される。さらに、このコマだけ黒のバックに白抜きの絵になっているため、ほかとは異なる時間が流れているように錯覚させられる。それらが相まって、あたかもスローモーションのように感じられるのだ。

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JVTA修了生コラム
明けの明星が輝く空に
by 田近裕志(JVTA修了生)

改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

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