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Vol.14 『スタンド・バイ・ミー』 by 潮地 愛子


8月のテーマ:涼

今年は例年になく猛暑で、セミの声も一段と大きく聞こえたような気がします。ここにきてようやく暑さもやわらぎつつあり、セミの声も静かになってきました。彼らは地上での一週間を満喫できたのでしょうか。

夕方の空を見上げるともうすぐ秋が駆け足でやってくる気配すら感じる今日この頃、みなさんはいかがお過ごしですか?

私は、この夏、動物を扱った書籍編集に携わっていたのですが、その中にとても感動的な一文がありました。「ホッキョクギツネの子どもは、夏のあいだにおとなになる。」他のどの季節でもなく、ひと夏に、というところにぐっときます。そして、ぐっとさせちゃう魅力が夏にはあったりするわけです。


前置きが長くなりました。私が今回取り上げたい映画は、『スタンド・バイ・ミー』です。少年4人が、ひと夏の冒険をとおして成長していく物語。オススメするまでもなく、この映画はほとんどの人が見たことがあるのではないでしょうか。だから、内容をどうこういうのはやめます。もちろん、心に残るシーンはたくさんあります。でも、冒険にでかけた少年4人がともに時間を共有できたのは、恐らくあの夏だけ。何より、そのことに私は心惹かれるのです。彼ら4人は個性も家庭環境もさまざまで、別々の道を歩むことになります。ずっと一緒にはいられない。大人になるということは、さまざまな変化を体験していくということでもあるのかもしれません。そして、変化していかざるを得ないからこそ、あの、ひと夏の出来事が光輝くのでしょう。

はかなさゆえに、ひと夏は魅力的なのです。あんなに太陽がじりじりと照りつけていたのに、いったん涼しくなり始めると、まるでそんなことが幻だったかのようにすら感じます。でも、ふと自分の腕に目をやれば、図らずも日焼けしたあとに、確かに夏をすごした証が残っていたりして...。
『スタンド・バイ・ミー』を初めて見てから、いくつもの夏が過ぎ、私も世間的には大人と言われるようになりました。そして今年の夏も、もう過ぎ去ろうとしています。ここであらためて、ビール片手に今年の夏の出来事に思いを馳せながら、『スタンド・バイ・ミー』を追体験しようかと思っています。みなさんも、ぜひ。

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『スタンド・バイ・ミー』
出演: ウィル・ウィートン、 リヴァー・フェニックス コリー・フェルドマン、 ジェリー・オコンネル 他
監督: ロブ・ライナー
製作年: 1987年
製作国: アメリカ
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