気ままに映画評

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2012年9月 アーカイブ

シリーズの中継ぎ!? でもやっぱり面白い!『バイオハザードⅤ:リトリビューション』

Text by 鈴木純一

バイオハザード.JPG今作『バイオハザードⅤ:リトリビューション』は、大ヒットゲームを映画化した『バイオハザード』の第5作目となる作品。2002年に第1作目が公開されてから10年間で5本が製作されているとこのシリーズは全作観ているので、今回は最新作の紹介とともにシリーズの魅力についても考えてみた。

バイオの魅力はまず作品毎のストーリーの変化だろう。ⅠとⅡでは都市を舞台にアンデッド(ゾンビ)との戦いが繰り広げられたが、Ⅲでは砂漠を舞台に『マッドマックス』のような世紀末感を出している。さらにⅣは、シリーズ初の3Dで製作され、刑務所を舞台に『プリズン・ブレイク』のような展開にするなど、常に新しいテイストを加えている。

次は何といってもアリスを演じるミラ・ジョヴォヴィッチの存在感だ。ミラ本人もゲームの「バイオハザード」の大ファンで、第1作が製作されると聞き、自ら出演に名乗り上げたほどだから、全裸に布をまとっただけのセクシーでショッキング姿を披露したり、ほとんどのアクションも自分で演じているなど、とにかくそののめり込み方というかアリスを演じることへのエネルギーが見ているこちらにも伝わってくる。そんなミラの情熱的な演技やアクションを観るだけでも価値はある。

もう一点、このシリーズが人気なのは、その"楽しさ"だろう。アクションとホラーを適度にちりばめており、『ダークナイト ライジング』のように重厚さ大作ではないが、まるで遊園地のアトラクションに乗っているようなワクワク感がある。終わった後には何も残らないが(褒めてます・笑)、とにかく楽しいのだ。シリーズのほとんどは上映時間が90分台で、鑑賞には適度な長さだ。「アクションでも観ようかな」と思う時にはおすすめである。昔、CMで「おせちもいいけど、カレーもね」というのがあったが、それと同じ。「『ダークナイト』もいいけど『バイオ』もね」である。

さて、最新作の『リトリビューション』だが、ホラー色は薄まって、激しい銃撃戦と爆発の連続で戦争映画のようになっている。冒頭から終わりまでアクションのつるべ打ちだ。加えて、第1作目のレイン(ミシェル・ロドリゲス)、Ⅱのジル・バレンタイン(シエンナ・ギロリー)といった名キャラクターたちも再登場するのもファンにはうれしいところだろう。そして全作同様、3D映画となっており、スクリーンに向かって投げられる武器や、弾丸が飛んでくるシーンにビクッとさせられる。Ⅳでは雨が降ったり、水しぶきを立てて戦うなど、"水"が印象的だったが、本作では雪の中でアリスとジルが『キル・ビル Vol.1』ラストのユマ・サーマンVSルーシー・リューのような迫力ある肉弾戦を繰り広げる。『バイオハザード』は次作で完結といわれている。『リトリビューション』は終わりに向けての中継ぎ映画の感はあるが、アクション映画として健闘している。完結編に期待したい。