発見!今週のキラリ☆

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vol.45 「That's 映像翻訳!~私たちのコスチュームプレイ」  by杉田洋子


11月のテーマ:変身

さあ始めよう
  私たちのコスチュームプレイ

色取りどりの文字をまとって
   画面の上を駆け抜けてゆく


私たちの頭の中には、小さな扉がある。扉の向こうはウォークイン・クロゼット。
パソコンに向かい、扉を開ける。目の前に広がる、四次元ポケットみたいな異空
間。宙にはたくさんの引き出しが漂っている。

"さあ、今日は何に変身する?"

引き出しの中では、ひらがなやカタカナや漢字たちが、今か今かと出番を待ってる。
奥の方に浮いてる重い引き出しに手を伸ばす。ズラっと並ぶ、ゴツゴツとした熟
語たち。逮捕、容疑者、犯行時刻、動機...。そう、今から私は刑事になるのだ...!

映像翻訳者って、こんなふうに日々変身を繰り返していると思う。それも数秒ご
とに。国籍を問わず、性別を問わず、年齢を問わず、善人悪人を問わず。ある時
はドラマの刑事に、次の瞬間には囚人に。明日はニュースキャスターに。はたま
た翌週は取材に応じるハリウッドセレブに。文字という、私たちのコスチューム
をまとって。

アイテム(語彙)の豊富さとファッションセンス(メディアセンス)はコーディ
ネイトの決め手。私たちが語彙を増やせば増やすほど、頭の引き出しは増えてゆ
き、センスを磨けば磨くほど、バランスや流れにも磨きがかかる。セリフのTP
Oを適切に判断し、カラーやフォルムに気を遣いながら、1枚1枚をコーディネー
トしてゆく。

たかが文字、されど文字。膨大な日本語の文字の配列パターンは、正に天文学的
数値になる。それを私たちは、毎日毎日、規則の中で着こなしているのだ。だか
ら私たちは変身のプロ。文字に包まれた透明な体で、画面という名の舞台の上を、
今日もまた駆け抜けてゆく。