発見!今週のキラリ☆

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vol.51 「ビターがスイートに変わった時」 by 藤田奈緒


2月のテーマ:ビター&スイート

困った時の神頼みとは言うけれど、私の場合、幼い頃からここぞという時に願いごとをしてきたのは、母方の祖母だった。祖母は私が生まれる前に亡くなっているので、私は一度も会ったことがない。祖父の家に残されたアルバムの写真の中の顔しか知らないし、声だって聞いたことがないのに(いや、だからこそ、なのかもしれないが)、なぜか私は祖母に絶対の信頼を寄せ、何か強い願いごとをする時は、必ず夜空を見上げて祖母に話しかけてきた。その願いがすべて叶ったかは正直記憶にないのだが、どんなことがあっても祖母は私を見守っていてくれるに違いないと、幼い私は何の根拠もなかったが勝手に信じていたのだ。

残された祖父は7年程前に他界したが、祖父に関しては楽しかった思い出しかない。夏の日に一緒に川で泳いだこと、花火をしたこと、バイオリンを弾いて聴かせてくれたこと、冬には白い息を吐きながら雪合戦をしたこと...などなど。孫と一緒になって大はしゃぎしてくれるオチャメおじいさんだったので、休みのたびに会えるのがとても楽しみだったのを覚えている。

そんなわけで、私にとっては優しくて大好きな祖父だったが、娘である母はちょっと違った印象を持っていたようだ。というのも母の知る祖父は、とにかく亭主関白で、祖母に優しい言葉をかけているところを一度も見たことがなかったというのだ。母にとっては、いつも母親に対して威張った物言いばかりする、ちょっと怖い存在だったのである。

祖母が亡くなってしばらくした頃、母は親戚のおばさんの証言により、祖父が結婚以来、祖母の写真を肌身離さず持っていたことを知った。そしてその時、思い出したという。祖母が息を引き取る直前に会いたがったのは、毎日病院に付き添っていた母ではなく、祖父だったことを。

大人になった今、子供の頃のように神頼みをすることは滅多になくなったが、夜道を歩いていてふと空を見上げ思う。長い間、離れ離れだった2人は、今頃仲よく一緒にいるのだろうかと。そして最近は、どうしても願いごとがしたくなった時には、祖父と祖母の両方に同じだけ話しかけることにしている。