日本映像翻訳アカデミー

最新ニュースアーカイブ

クリスチャン・ストームズさんインタビュー 前編
マルチな視点から生き生きとした表現が生まれる

現在、日本橋校では日英映像翻訳コースの第1期生が学んでいます。この春(2011年)より、第2期生が入学、第1期生はいよいよ実戦コースに進級するなど受講生の皆さんは着実に世界のフィールドへ向かって前進しています。この度、実践コースの主任講師として、メディアの第一線で多彩に活躍されるクリスチャン・ストームズさんをお迎えすることになりました。クリスチャンさんは映像翻訳者に留まらず、俳優、ディレクターなど様々な分野を手がけています。そんなクリスチャンさんに日本語を習得し映像翻訳に携わるようになった経緯や、翻訳にかける思いについてお話を伺いました。

まず、クリスチャンさんが日本語を習得された経緯を教えて下さい。


インディアナ州立大学と上智大学で日本語を学ぶ

子どもの頃、私の家には父の仕事の関係で多くの外国人が訪ねてきました。父は車の内装に使うプラスティック用のペンキを扱っていたのですが、主な取引先は車のメーカーだったため、日本からのゲストも多かったんですね。その度にさまざまなお土産をもらったのですが、中でも刀やハッピが面白くて、どんな国なんだろうと日本に魅かれるようになったんです。インディアナ州立大学で日本語と経済学を学んだのもその影響が大きかったと思いますね。大学を卒業したころ、経済的向上だけを追求するような当時のアメリカの雰囲気に嫌気がさしていたこともあり、思い切って来日しました。1年余りは大手英会話学校の講師をしていたのですが、さらに日本語に興味が湧いてきて、上智大学の比較文学科に入学しました。

その後、どのように映像翻訳に関わるようになったのですか?


きっかけは映画プロデューサーのアシスタント兼通訳

きっかけは上智大学の友人の紹介で、オーストラリア人映画プロデューサーのアシスタント兼通訳として働き始めたことですね。そこでオーストラリアと日本の合作映画『クルタ 夢大陸の子犬』に携わることになったんです。畑正憲監督のこの作品では、現場の通訳以外に配給の交渉など、映画の制作から公開にいたる工程にかかわる、あらゆる業務のイロハを学びました。また、常に通訳として彼らの言葉を英語から日本語へ、日本語から英語へと訳すうちに、映画業界で使われる用語をはじめ、多くの表現を覚えられたのも貴重な体験でしたね。

映像翻訳にこだわらず様々な現場を経験

その後、講談社との共同企画で優れたオリジナルストーリーを発掘し、日本での漫画化やアメリカでの映画化を企画するというプロジェクトのプロデューサーを担当。この時の主な業務は、台本や企画書の翻訳やLAの映画関係者に対するプレゼンなどでしたが、漫画独特の笑いのツボやドラマ性などを学ぶことができました。他にも東京国際映画祭のプログラムの英訳編集や、オーストラリア大使館のウェブサイトのプロデュースなど様々な経験を重ねると同時に人脈も広がり、そうしたすべてが今の仕事に繋がっていますね。

俳優としてもご活躍ですが、演技を専門的に学ばれたそうですね。


演技を学んだことで翻訳への取り組み方も変わった

奈良橋陽子さんが設立した俳優養成所、アップスアカデミーの2期生として週に20時間、演技を学びました。ちなみに1期生にはオダギリジョーさんがいます。演技を学んだことは、私の翻訳に対する考え方に大きな影響を与えました。1つひとつの台詞の行間や、背後にあるキャラクター性、登場人物の心情などをさらに深く掘り下げて考えるようになりましたね。例えば「こんにちは」なら「Hello.」や「Hi there!」というように通り一遍に訳していては、作品の魅力は伝わらない。時代背景や話者のキャラクター、相手との関係性などで的確な表現は変わっていくのですから。例えば、歴史大作で侍が「Hey guys ! What’s up?」じゃ、おかしいでしょう?(笑)

演じる視点から生き生きとした台詞が生まれる

私は常に「自分なら俳優として、どういう気持ちでこの台詞を表現するだろう」という視点で翻訳をしています。『十三人の刺客』(2010年、三池 崇史監督)の英語字幕を手がけた際は、当時の侍の心境を知るためにいくつもの時代劇を観ました。これは翻訳以前に必要な作業です。この作品の侍たちは、平和が続く世の中で行き場を失くしています。そんな彼らの立場を理解した上でそれぞれのキャラクターにあった口調や発音のトーンなどを考えることが大切なのです。そうして初めて、登場人物の気持ちを自然な言葉で、生き生きと伝える台詞が生み出せるのだと思います。「表現」に関わる人なら、俳優志願じゃなくても一度は演技を学んだほうがいいんじゃないかな。他人を演じることで新たな自分の一面を見ることができますよ。

過激なことで知られる大人気アニメ『サウスパーク』では和訳の監修をされたそうですね。


アメリカのネタを日本のネタに置き換えてジョークを再現

この作品では、日本語吹き替えの翻訳監修を桑原あつしさんと2人で担当しました。通常、ハリウッド映画は分厚い台本があり、「このネタはこういう意味です」といった細かい説明が記されています。でもこの作品の台本はファンがインターネットにあげたものしかなかったので、まず内容が合っているのかを私がチェックするところから始まりました。もちろん、細かい解説もありません。この作品はいわゆる下ネタなど過激な表現が多いことで知られています。特にアメリカの有名人をからかった内容が多いのですが、日本人にはなじみのない人も多い。そこでこの作品ならではのジョークを伝えるために、英語の台本を読みながら「これは70年代のバンドTOTOをネタにしているな」といったことをノートにまとめていました。例えばアメリカの長寿番組で人気だったサリー・ストラザースを皮肉る場面は、日本語では『徹子の部屋』風にもじって吹き替えを作りました。吹き替えの収録現場にも立ち会っていたので、日本人も笑えるように、声優に黒柳徹子さんの口調も真似してもらったりしてね(笑)

『サウスパーク』をきっかけにCM翻訳が舞い込む

この作品をきっかけに、「タグボート」というCM制作会社が手がけるCM翻訳を手がけることになりました。同社もブラックジョークやタブーを扱った作品が多いことから、「クリスならこのセンスがわかるだろう」と(笑)。小便小僧でおなじみのサントリーの『DAKARA』や大塚製薬の『カロリーメイト』の「不時着したヒーロー編」など個性的な作品が多かったですね。翻訳されたCMはカンヌ国際広告祭などに出品され、仕事の幅が広がりました。

いかがでしたか? 後編では三池 崇史監督の『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』の制作秘話や、“トランスライティング”の極意について、引き続きクリスチャンさんにお話を伺います。お楽しみに!

後編はこちら
http://www.jvtacademy.com/news/?id=401

 
 ●日英映像翻訳講座の詳細はこちら
  http://jvtacademy.com/chair/course4.php
一覧に戻る