日本映像翻訳アカデミー

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6月4日、第4回City Lights映画祭鑑賞レポート 前編
JVTA代表 新楽直樹のトークショーも大好評

6月4日、バリアフリー映画鑑賞推進団体、シティ・ライツが主催する第4回City Lights映画祭が開催されました。団体設立10周年を祝うかのように良い天気に恵まれたこの日、会場となった江戸東京博物館大ホールは、付添者の方や盲導犬と共に足を運ぶ視覚障害者の方々や、一般の観客でにぎわいました。音声ガイド付きの映画3本の上映とトークショーという盛りだくさんの内容に会場からは笑いやため息、歓声が挙がるなど終始温かい雰囲気に溢れた1日となりました。トークショーには日本映像翻訳アカデミー代表の新楽直樹が登壇、音声ガイドと映像翻訳の共通点や楽しさ、難しさについて具体的に解説しました。

随所に感じられるスタッフのきめ細かいフォロー



入口ではFMラジオの貸出を行っており、誰もが音声ガイドを聴くことができます。あらかじめ周波数を合わせたラジオを受け取るとスタッフが音量調節など使い方を丁寧に教えてくれました。上映前にテスト放送を行うほか、会場内でもスタッフが声かけをし、ラジオの調子の悪い人には交換をするなどの細かい配慮も行き届いています。ラジオからは上映前に作品の簡単な概要なども流れており、まさに映画鑑賞の道標となっていました。

この映画祭の特徴は、作品の選定から当日の運営まで、視覚障害者と共につくり上げていることにあり、映画祭実行委員長も視覚障害者の斉藤恵子さんが務めています。斉藤さんは、開幕の挨拶時に、「非常口となる出口には常にスタッフが待機しているのでご安心ください」と呼びかけるなど、皆が同じように映画を楽しむための環境づくりに取り組んでいるのがこの映画祭の魅力なのです。

トークショーの始めは拍手で会場の様子を共有



トークショーには、同団体から代表の平塚千穂子さん、斉藤恵子さん、司会の武藤歌織さんと共にJVTAの新楽直樹が登壇。まず始めに男女に分かれて拍手をすることで、お客さんの数や会場の雰囲気を全員で分かち合ったのが印象的でした。

新楽「映像翻訳の使命は世界中の子どもから大人まですべての人が、同じ映画を観て泣いたり、笑ったり、怒ったりする環境を作ること。これは音声ガイドにも同じことが言えます。第1回の同映画祭で初めて音声ガイドに触れた時は衝撃で焦りを覚えました。映画を読みこんでその魅力を伝える音声ガイド作成者に映像翻訳者は負けてしまうのではないかと。以来、同じ目標に向かって共に学んでいきたいと思い、毎年この映画祭に通っています」

映像翻訳の多彩な技法の解説に会場から驚きの声



映像翻訳は映画の字幕だけではありません。海外ドラマから家族の会話の一場面の字幕と吹き替え、聖書について取り上げたドキュメンタリー番組のナレーション、スポーツ番組の試合中継シーンのボイスオーバーといったあらゆる番組の映像を紹介しながらそれぞれの手法やテクニックなどについて具体的に紐解いていきます。

同じ会話でも字幕と吹き替えでは情報量や言葉の使い方が違うことや、ドキュメンタリーの重厚なナレーションを日本語でも再現するための手法、スポーツ中継は時間との勝負の中で、スタジオに詰めた映像翻訳者が自らナレーションを入れているといった具体的なエピソードに、会場からは驚きの声があがりました。ちなみに字幕箇所はシティ・ライツのスタッフがその場で朗読してくれましたが、その見事な“台詞さばき”はさすがです。

武藤さん(司会)「映像翻訳というと映画の字幕しか、思い浮かびませんでした。こんなに多くの分野があることに皆さんも驚かれたのではないでしょうか」

さらに、映像翻訳者の苦労について、字幕は1秒4文字のルールの中での情報の取捨選択、吹き替えは口の動きに合わせるリップシンク、ボイスオーバーは多少長くても情報量を落とせないことなどを解説。「NO!」の口に合わせるためには「ダメ!」ではなく、「ウソー」と訳す例をあげると会場には笑いと感嘆の声が溢れます。

平塚さん「尺の制限や映像そのものを深く理解しなければならない苦労は、音声ガイドも同じですね。特にキリスト教など宗教関連の作品の調べ物は大変です。でも、映像の面白さや素晴らしさの伝え手になれることが私の喜びですね。映像の光に照らされているお客さんの笑顔や真剣な表情を見ているのが好きなんです(笑)」

さらに、斉藤さんが「みんなで映画の素晴らしさを共有できることこそが、この映画祭の楽しさですね」と続けると会場からは拍手が送られました。

トークショーの続きと上映作品の詳細をレポートした後編はこちらhttp://www.jvtacademy.com/news/?id=429
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