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vol.28 『さらば青春の光』 by 藤田庸司


3月のテーマ:旅立ち/別れ

映画に"別れ"や"旅立ち"はつきものである。悲しい別れ、胸躍る旅立ち、いくつもの名場面を思い出す。今日紹介する映画『さらば青春の光』にも、忘れられない別れと旅立ちが描かれている。

1965年のロンドン。主人公のジミーは将来に対する不安や、社会に対する疎外感を抱きつつ、日々パーティーに明け暮れるといった無意味な生活を送っていた。ある日、ジミーが所属するグループ"モッズ"と、敵対するグループ"ロッカーズ"との間に抗争が勃発。大暴動へと発展する。事件は警察沙汰となり、世間はこぞってジミーたちを非難。逮捕されたジミーは職場や親からも見捨てられ、やがて恋人からも...

この作品は、イギリスのロックバンド、ザ・フーの「四重人格」というアルバムをモチーフに作られた青春ドラマで、全編を流れるロックサウンドやファッションなど、60年代ロンドンのスタイリッシュで退廃的な雰囲気や、若者文化が存分に楽しめる。細身のスーツに細いネクタイ、さっそうとスクーターにまたがるジミーのモッズ・ファッションは、数十年経った今見ても、最高にクールだ。
そしてクライマックス。見る人によってはいろんな捉え方があると思うが、僕としては、一人の若者が、青春という誰もが通る一時代に別れを告げた瞬間であり、大人としての旅立ちを描いたシーンであると解釈している。また、ジミーを時代の産物と考えた場合、それは60年代という時代の終焉であり、きらびやかな70年代の幕開けではないだろうか。数あるロック・ムービーの中でも、僕の中では5本の指に入る傑作。ロックファンは必見だ!


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『さらば青春の光』
監督:フランク・ロッダム
出演:フィル・ダニエルズ、スティング
製作年::1979年
製作国:イギリス
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