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vol.62 『恋はデジャ・ブ』 by 潮地愛子


7月のテーマ:酒

『恋はデジャ・ブ』という作品をご存知だろうか。興行収入はふるわなかったようだが、隠れた名作と言われるビル・マーレイ主演のロマンティックコメディだ。
テレビの気象予報士フィルは、毎年2月2日に行われる春の訪れを占う聖燭節を取材するため、ある町を訪れる。彼はその晩を取材で訪れた町で過ごすことになるのだが、朝目覚めると、その日もなんと2月2日だった。時間のラビリンスに入りこんでしまったフィルは、何度も何度も同じ日を繰り返すことになる。

そもそもフィルは高慢ちきでイヤな男なのだが、何度も何度も同じ日を繰り返しているうちに善良な人間へと変わっていく。もちろん、その間には自暴自棄になってハチャメチャなことをしてみたり、ハデな自殺を試みたりする。だが、どうにもならないと人はそういう境地に達するものなのか分からないが、フィルは次第に丸くなり、人に優しくなっていく・・・。

で、どうしてこの作品を「酒」がテーマの今回に選んだのか。
初めて『恋はデジャ・ブ』を見たのは大学生の時だったのだが、ある酒場のシーンがとても印象深かったからだ。

フィルのとなりで酒を飲んでいる2人の男の片方が言う。
「人の幸せは考え方で決まる。ビールを飲んでいてふと気づいたとき、まだ半分も残っていると思うか、もうこれしか残ってないと思うか。」
胸がズキュンと痛んだ。確実に私も、「もう、これしか残ってない」と考えるタイプだったからだ。以来、『恋はデジャ・ブ』のこのシーンは、私の心の中に刻まれた。

だが、人の記憶とはいい加減なもので、今回久々にこの映画を観たら、「人の幸せは考え方で決まる」なんていうセリフはなかったし、たぶん今の私が初めて見たとしたらスルーしてしまうようななんてことのない場面だった。映画は出会いだとはよくいうが、その時の状況や心情といったものに感じ方が大きく左右されるんだなと改めて感じた。「人の幸せは、考え方で決まる」なんて勝手なセリフをつくりあげていた二十歳の頃の自分が、なんだかかわいく思えて笑ってしまった。あの頃はあの頃で、私なりにがんばっていたなあと。

年月を経ても「まだ、半分も残ってる!」的発想を確実にモノにはできていないが、「ビールがなくなっちゃったら、もう一杯頼めばいいや」ぐらいの気楽さはでてきたかもしれない。皆さん、くれぐれも飲みすぎには注意しましょう。

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『恋はデジャ・ブ』
出演:ビル・マーレイ、アンディ・マクダウェル ほか
監督:ハロルド・ライミス
製作年:1993年
製作国:アメリカ
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