日本映像翻訳アカデミー

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目の不自由な人たちにも
“仮装大賞”の面白さを“言葉”で伝えたい
今年も第7回City Lights映画祭が6月14日に開催されます。この映画祭の特徴は目が不自由な人も映画を楽しめるよう、音声ガイドをつけた作品が上映され、会場内でもバリアフリーのための様々な取組みがされていること。今年は上映作品『グォさんの仮装大賞』(2012年・中国)の音声ガイドの制作に当校のバリアフリー講座修了生3人とバリアフリー事業部のチーフ・ディレクター浅野一郎が参加しています。制作メンバーの1人で講座修了生・有馬加奈子さんにお話をきいてみました。

この作品には、8人のチームで取り組んでいて、私はラストの13分を担当しています。まずはそれぞれが担当箇所を作成し、全員でその原稿を共有。その後、言葉の統一や分りやすさなどについて話しあっています。『グォさんの仮装大賞』は家族と上手くいかず老人ホームで暮らすグォさんの物語。元の仕事仲間のチョウさんをはじめとする仲間と共に、仮装大賞(『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』のような番組です)のテレビ番組に出場を目指して奮闘します。

苦労したのは登場人物が多い上に中国の作品なのでチャンさん、チエンさん、チェンさん、チョンさん、リーさん、リンさんと名前が紛らわしいこと。テロップでみても分かりにくいのに、これを音だけで認識するのはかなり難しいですよね。さらにグォさんの息子や孫、グォさんの仲間たちといった名前の設定のない登場人物も多く出てきます。例えば「歯が1本の老人」などにすると長くなりますし、視覚障害者の方々が混乱せずに、人物一人ひとりを言葉だけで認識できるにはどうしたらいいのかが悩みどころです。


また、老人たちが仮装を披露するシーンでは、観客が笑っている理由をガイドで面白く伝えなければなりません。どんなしぐさが面白いのか、それをどんな言葉で説明すればより視聴者も一緒に笑えるのかをみんなで話し合っています。困ったのはグォさんたちが集団で大きな麻雀牌の箱を被って並ぶ場面です。まず、作り手の私たちが麻雀を知らないこともあり、面白さがよく分かりませんでした。そこで麻雀のルールをいろいろと調べたところ、問題のシーンは、バラバラに並んだ牌が移動を繰り返し、テンパイ(あと一手でアガリ)からアガリになった際に牌を全て倒す様子だと分かりました。でもそれを言葉だけで正確に説明しても、麻雀を全く知らない人は笑えませんよね。音声ガイドを聴いている人が笑えるためには、ルールに沿って動く牌の並び方の細かい動きを説明すべきなのか、それとも大きな牌から覗いている老人のおどけた表情やよろよろとぶつかりながら移動する際のユーモアラスな動きそのものをガイドすべきなのかをチームで探りました。こんな風にリサーチが必要なのは映像翻訳と同じですね。

「監督が撮った映像に無駄なものは一つもない」。これはJVTAの音声ガイド講座の河野雅昭講師の言葉です。講座修了後いくつかのガイドづくりに参加した今、この言葉の意味を実感しています。音声ガイドづくりには、映像翻訳以上に細かい映像の読解力や観察力が必要です。まず画面の中のあらゆる情報をすべて逃さずに見た上で、大事な情報を選択して伝えることが求められますね。さらに、ガイドを聴く人は私が作った言葉を順番通りに頭の中に映像を描いていくので、語順も重要です。まず主語や述語を明確にした上で情報を加え、よりイメージしやすい言葉づくりを意識するようになりました。修飾語がどこにかかるかが曖昧だと、全く違うイメージになってしまうことも学びました。

有馬さんたちがチーム全体で話し合って完成した原稿は、モニター検討会を経てさらにブラッシュアップされます。モニター検討会とは、出来上がった音声ガイドを実際に視覚障害者のモニターさんに聞いてもらい、率直な意見を取り入れてさらに表現を練り直していく作業です。皆さんが懸命に話し合ったポイントはきちんと視聴者に伝わるのでしょうか? この模様は追ってお伝えしていきます。

★その後、行なわれたモニター検討会のレポートはこちら

『グォさんの仮装大賞』
© 2012 Desen International Media Co.,Ltd
配給:コンテンツセブン
http://www.guosan.jp/

第7回City Light映画祭 
http://www.citylights01.org/cl_eigasai.html
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