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vol.60 「君のこころ、安らかに」 by 藤田奈緒


6月のテーマ:憂鬱

前回の桜井さんじゃないが、どちらかというと日頃から"憂鬱"という言葉とは無縁のタイプだ。もちろんちょっとしたことで気が滅入ることはあるが、その気持ちが長続きしない。簡単に言えばノー天気ということだろうか。今回のテーマに関しても、昨夜寝る前までは「憂鬱って言ったって滅多にならないし困っちゃったわ」なんて余裕でいたのだが、朝起きたら衝撃のニュースが待っていた。

キング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソン死亡...。

ウソでしょ!? 心臓を冷たい手でつかまれたような感覚。
呆然としたまま家を出て、駅に向かい、電車に乗り、会社の席に着いて静かにパソコンを立ち上げてみた。言葉に出さなきゃ本当にならないかもなんて逃げてみたけど、友人から続々とメール。同僚たちも出勤するやいなや話題にしている。どうやら現実のことみたいだ...。

仕方がない、自らマイケルの思い出の中に飛び込んでしまえ。
ずいぶん前にちらっと告白したことがあるが、実は私にはマイケルの熱狂的ファンだった時期がある。ベストアルバムを聴きながら、そんな青春時代にしばし思いを馳せてみた。

マイケルを初めて見たのは恐らく1987年の初来日。テレビのニュースで取り上げられていたマイケルの姿は、小学生だった私の記憶にはぼんやりとしか残っていない。そして数年後、グラミー賞で目にしたスーパースターはすっかり顔が変わっていたが、そこで見た過去のパフォーマンス映像に私は心を奪われてしまった。そこから私と親友のマイケル漬けの日々が始まったのだった。

今のようにインターネットが普及している時代ではないから、情報収集は結構大変だった。マイナーなビデオを東京のビデオ屋さんから取り寄せたり、マイケルの記事が載っている海外の雑誌を買い漁ったり。辞書を引き引きマイケルネタを仕入れ、とにかく英語力がなくては!と意気込み、親友への手紙もなぜかすべて英語で書き続けた日々。(思春期の少女たちの例に漏れず、学校で毎日会う親友と交換日記ならぬ手紙交換をしていた) 歌詞カードの"She don't care..."という文を見て、なぜ"She doesn't care..."でないのかと英語の先生に尋ねた頃が懐かしい。

ここまで思い返してみて気づいたが、今の映像翻訳者としての自分があるのは、マイケルのおかげかもしれない。マイケルのことを知りたい一心で英語の勉強を始め、アメリカのドラマや映画に興味を持ち、翻訳の仕事をしたいと思うに至ったのだから。

キング・オブ・ポップはこの世から消えてしまったけど、消えてない。なーんだ。しばらくは喪に服す期間が続くかと思ってたけど、そう思ったらあっさりと喪は明けてしまった。

マイケル・ジャクソンの大ファンの1人として、彼の冥福を心から祈り、セブ島の囚人による素晴らしいパフォーマンスを捧げます。