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vol.59 「憂鬱にならない方法」 by 桜井徹二


6月のテーマ:憂鬱

我ながら能天気な発言だとは思うけれど、僕には「憂鬱で憂鬱で仕方がない」と思う出来事がほとんどない。多少は思い当たることもあるにはあるが、どれも強いて言えば、という程度のものにすぎない。

おそらく僕が憂鬱を感じない原因の1つは「人付き合いの少なさ」にある。平たく言ってしまえば、知人・友人が少ないということだ。いきなり恥部をさらすような話になってしまうが、「憂鬱にならない理由」ということに限って言えば、これはかなり大きなポイントだと思う。

人付き合いが多くなると、どうしても色々なしがらみが出てくる。僕はとくに儀礼的なことが大の苦手なので、例えば披露宴とかパーティーとか、そういうものは正直あまり気が進まない。といってきっぱり断るほどの度胸もないので、仕方なく重い足取りで出向くことになる。だが知り合いの数が少ないおかげで、こういったしがらみに遭遇する可能性も比較的少ない。つまり気が進まないことが減るので、憂鬱に陥らずに済むというわけだ。

そして、もう1つの理由として挙げられるのが「記憶力の悪さ」だ。大げさでも何でもなく、僕は見たこと・聞いたこと・話したことが片っ端から記憶から抜け落ちていく。栓のない風呂釜のように、記憶がどぼどぼと音を立てて流れ出していく。

そのせいで、もし憂鬱に思える出来事があっても、あっという間に忘れてしまって長く引きずることがない。長く覚えていてもせいぜいその日じゅうで、寝て起きるときれいさっぱり忘れて、「今日はいい天気だな」などとのんきに思っている。憂鬱を長引かせないためには「忘れる」のが1番手っ取り早い方法なのかもしれない。

ただし、もちろんこの2つの"長所"も、日々を滞りなく暮らしていくという点においてはマイナスばかりなのは言うまでもない。友人が少ないなんて、そもそもおおっぴらに言うことでさえない。

また記憶力が悪いことに関して言えば、僕は誰かに「○○って言ってたよね?」などと正面切って言われると、「言ったっけ?」と思いながらも反論できず、やりきれない思いを抱くことがしょっちゅうある。そもそもそのこと自体をよく覚えていないので、絶対に言ったとも言ってないとも言い切れず、いつも相手の言うことに押し切られてしまうのだ。見ず知らずの女性が小さな子供の手を引いて現れて、「桜井くん、責任取ってくれるって言ったよね?」などと言われたらと考えると、ちょっと恐ろしい。

さらに記憶力が悪い・プラス・友達も少ないとなると、どう考えても老後に不安を抱かざるを得ない。体も衰えて頭はどんどんぼんやりしていくのに、支えてくれる人はどこにもいない。なかなか胸ふたがれる状況だと言える。

結局のところ、今はそれなりに楽しく過ごせているとしても、僕はただ憂鬱を先延ばしにしているに過ぎないのかもしれない。