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vol.42 『Burn After Reading』 by 藤田彩乃


10月のテーマ:不思議

『No Country for Old Men』でアカデミー賞作品賞を受賞したコーエン兄弟の最新作は、なんとコメディ。クライムの要素を含むブラックコメディです。キャストはびっくりするくらい超豪華。聞いた話では、脚本は当て書きだそうですよ。

アルコール依存症でCIAを解雇されたオズボーンは、自宅で自叙伝を書き始めます。一方、密かにオズボーンとの離婚を考える妻は、オズボーンのコンピューターからCIAの機密データを盗み、資料として弁護士に渡します。しかし弁護士の秘書がうっかりジムにデータが入ったCDを忘れ、それを発見したジムの従業員が悪用してお金儲けを企み...というドタバタストーリーです。

ハイテンションなジム従業員を演じるブラッド・ピットのイケてないこと!一挙手一投足に爆笑です。セリフもとにかくダサくて面白い。会場からは笑い声が絶えず、脇役なのに華を奪っていました。そんな調子でのん気にゲラゲラ笑っていると、いきなり衝撃的なシーンが登場。観客を飽きさせません。

ネタバレしては面白さが半減するので詳しい結末を書くのは避けますが、コーエン兄弟の作品らしく不思議な終わり方をします。さまざまな偶然が重なって、とんでもない事態を巻き起こしていく。そして、くだらない理由のために命が失われ、結局何も解決しない。世界で絶え間なく行われる戦争や事件も、きっとそんなものなのかもしれませんね。

日本公開は未定のようですが、機会があればぜひご覧ください。

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『Burn After Reading』
監督:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
出演:ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコビッチ、ブラッド・ピット、
製作年:2008年
製作国:アメリカ
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