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2010年8月 アーカイブ

vol.88 『世界が燃えつきる日』 by 浅野 一郎


8月のテーマ:虫

世の中は、すっかり"夏休み"モード。今年の夏は異例の猛暑とのことで、いつもよりも、夏を強く感じる今日この頃である。

さて、今月のテーマは「虫」 いきなりで恐縮だが、僕は「虫」があまり好きではない。あまり好きでないどころではない筆頭に上がるのが"ゴキ●リ"好きでない、あるいは嫌いを通り越して、もはやフォビアに近く、文字で書くのも嫌なので、これより先、"ゴキ●リ"のことは"ゴ"と表記することにする... (正直言って、"ゴ"と"キ"と"リ"の文字列が並んでいるだけでも、少々、気分が良くない)

話は"夏"に戻るが、僕の夏休みの生活で一番の楽しみだったのが、月曜日から金曜日・午後2時からの枠で放送されていた映画の時間。そこで放映される映画を毎日のように観ていたのだが、その後の人生に強烈なインパクトを与えることになる映画が、『世界が燃えつきる日』だ。

ストーリーは、70年代~80年代にかけて流行った、"核戦争後の世界"モノ。少数の生き残った人たちが生存をかけて奮闘するというものである。ストーリーはさておき、この映画の何が今月のテーマに合致するのかというと、サソリなどの虫が登場することだ。言うまでもないが、核戦争後の世界を描いた映画につきもので、サソリはなぜか巨大化している。

そして、サソリの他に登場するのが、人喰い"ゴ"。巨大化こそしていないものの、数が尋常ではない... 明らかな意図を持って、生存者たちを襲う"ゴ"の大集団... 大量の人喰い"ゴ"が人に襲い掛かり、皮膚を食い破り、体の中に入って内臓を食い破る。僕の"ゴ"フォビアは、この映画に起因しているようだ。このシーンがトラウマになっているらしく、今でも"ゴ"が家に出たりすると、少なくとも同じ建物からは退避して、誰かが退治してくれるのを待つ。そして、数週間は、かすかな物音にも怯えて暮らす日々が始まるのだ。僕は比較的怖いと思うものが少ないほうだと思う。だが"ゴ"だけは、何があろうとも克服できそうもない...

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『世界が燃えつきる日』
監督:ジャック・スマイト
原作:ロジャー・ゼラズニイ
出演:ジョージ・ペパード、ジャン=マイケル・ヴィンセント、ほか
製作国 アメリカ
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vol.89 『バッタ君町に行く』 by 杉田洋子


8月のテーマ:虫

前回の浅野に負けず劣らず、私も虫は苦手である。爬虫類は大好きだが、虫は嫌
いだ。蚊に至ってはこの世から消えればいいと小学生のころから思い続けている。
血を分けてやってるのに恩を仇で返すとはこのことだ。ついでに脂肪吸引なり、
コラーゲン注入なりして飛び去るのが礼儀というものではないか。そして残暑の
今、四方八方で突発的に爆発する"セミ爆弾"にビクビクする日々を送っている。

...などという私情はさておき、2回とも虫を敵視した映画ではちょっとフェアじゃ
ない気もするので、できるだけ虫が好きになれそうな作品を選んでみた。
クラシックなディズニーアニメ風のこの作品。スタジオジブリが配給している。制
作は1930年代を通じてディズニー最大のライバルだったというフライシャー・スタジ
オ。なるほど、どおりで。私たちにもなじみの深い『ベティ・ブープ』や『ポパイ』
などを世に送りだしたスタジオである。

公式サイトによると、"1937年にディズニーがカラー長編『白雪姫』を手がけた
のをきっかけに、フライシャーも長編制作に乗り出し......1941年暮れの真珠湾攻
撃の直後に長編第2作『バッタ君 町に行く』を公開する。しかし興行がふるわず、
経済的な理由によりフライシャー兄弟はスタジオを去り..."とある。

時代の荒波に飲まれてしまった良作に、今ジブリが再びスポットを当てたのだ。

さて、主人公は正義感が強くおっちょこちょいのバッタ、ホビティ(♂)。可愛い
ミツバチのハニーとは恋人同士。ホビティらの集落は都会の草むらにある。しかし
囲いが壊れたために人間たちが侵入し、平和な生活が脅かされることに。一方で、
安全な高台を独占し、ハニーを狙う悪役ビートルが、何かとホビティを陥れようと
する。数々の試練を乗り越え、ホビティは無事集落を守れるのか、そしてハニーと
の恋の行方は...!?

という、大枠はいわばお決まりの構図だが...
良かれと思ってしたことがうまくいかなかったり、仲間の信頼を失ったり、絶望の
淵に立たされた時の苦悩や奮起のプロセスは、バッタごととは思えぬほど共感して
しまうのである。

さらに『トムとジェリー』を彷彿とさせる、スリリングな音と画の競演が楽しい。
気になって調べてみると、『トムとジェリー』を制作したヴァン・ビューレン・スタ
ジオは、フライシャー・スタジオの向かいにあり、スタッフがヘルプに行ったりして
るうちに、2社の作品に類似点が見られるようになったそうだ。

私たちが小さな虫を恐れるよりずっと深刻に、人間たちの脅威にさらされる虫た
ち。こうして立場が逆転してみると、しかもこんなにかわいく描かれてしまうと、
なんだか虫にすまなさや愛しさすら覚える。

"頑張れ、虫!"、"危ない、よけるんだ!"

なんて、手のひら返したように虫を応援してしまうのだ。メディア操作に踊らされ
ているような気持ちになりながらも、今一度虫との付き合いを見つめ直せそうな...。

だが何よりも心に残ったのは、最後の方で虫たちがムスカじみたセリフ(「天空の
城ラピュタ」より)を吐いた瞬間であった。気になる方は、ぜひご覧ください。

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『バッタ君町に行く』
監督:デイヴ・フライシャー
製作年:1941年
製作国:アメリカ
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