発見!今週のキラリ☆

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2011年1月 アーカイブ

vol.98 「豚汁」 by 桜井徹二


1月のテーマ:一番

よくNHKなどで「○○町で世界一ジャンボな柏餅づくりが行われました」というようなニュースを目にする。僕はわりと冷めた人間なので、かつてはこういうニュースを見るたびに「柏餅が世界一大きいからって、それが何なんだろう?」と思っていた。

もちろん、今ではいろんな町や村が「一番」に挑戦するのはよく分かる。ニュースになれば町の名がアピールできるし、"柏餅の町"みたいな町おこしにもつながるからだろう。それだけ「一番」というのは人を引き付けるものなのだ。

翻って、いざ自分が「一番」をテーマに原稿を書くことになって「これについては自分が一番」と言えるものを探してみたが、「一番」はそう簡単に見つかるものではない。

会社の中でとか親戚の中でとか、ごく小さなサークルで納得するのも何となく物足りない。世界一や日本一とまではいかなくても、もう少し大きなくくりでの一番がいい。となると、スポーツや頭脳などで一番になるのは到底無理だし、と言って「気配り」とか「包容力」とかも抽象的すぎる。「一番」というのは自分がそう思っているだけでは無意味で、やはり他者からの明確な承認があって初めて意味を持つものなのだ。

それでも、僕にも1つだけ「一番」といえることがあった。

大学を卒業して間もない頃、友達が何の連絡もなしに僕のアパートにやってきた。僕は部屋に人が来るのがあまり好きではない。酒を酌み交わすわけでもなければ手料理をふるまえるわけでもないし、ゲームをするわけでもない。人が来ても特にやることがないので落ち着かないのだ。

彼はそのことを知っていたが、帰りたくない理由でもあったようで、一向に帰る気配がなかった。初めは仕方なく話し相手になっていたが、そのうち少しずつ話にも興が乗り出し、結局ぽつぽつとながらも話をしているうちに気づくと朝になっていた。

前の晩から何も食べていなかったせいで2人ともお腹がすいていたので、前日の残りものの豚汁をコンロで温めて友達と食べた。彼は熱くなりすぎた豚汁をひと口食べると、驚いた顔で「今まで食べた豚汁で一番おいしい」と言った。僕が「一番は言いすぎだ」と言うと、彼はしばらく考えてから「いや、本当だよ」と答えた。

彼は数年前に精神的な病いを患い、それから彼とは会っていない。でも僕はあれ以来、「一番得意な料理は?」と聞かれた時には「豚汁」と答えるようにしている。そして実際に豚汁を作る時には、あの時の豚汁をできるだけ再現しようと努めている。一番であり続けるには、それなりの努力が必要なのだ。

vol.99 「州道1号線」 by 藤田彩乃


1月のテーマ:一番

ロサンゼルスで車は必要不可欠だ。ほぼ1日中続く大渋滞は嫌いだが、幸いにして私は
運転が苦ではない。どちらかと言うと好きなほうかもしれない。
5時間以上のロングドライブも不思議とあまり疲れないし、特にすいている道路をかっ飛ばすのは非常に気持ちがいい。お世辞にも決して運転がうまいとは言えないが、奇跡的にこれまで大きな事故もなく、順調に運転している。自分は下手だと自覚しているので無茶をしないのかもしれない。

故郷の富山にいた頃は、どちらかと言うとドライブは好きではなかった。富山は日照時間が短く天気が悪いせいか、乗り物に乗っている時間は単なる物理的な移動時間であって、無駄な時間だと思っていた。でも、ロサンゼルスに来てからは、ドライブを楽しんでいる。いくつかお気に入りの道はあるが、「これぞカリフォルニア!」と思わせるような絶景スポットが続くのが州道1号線。
英語ではPacific Coast Highway、略してPCHと呼ばれる。

PCHはサンタモニカから始まる海沿いを走る道で、そのままずっと北上するとサンフランシスコに至る。海岸ギリギリを走っているので景色は圧巻。場所によってはスポーツカーのCM撮影にも使われるスポットだそうだ。途中には、サーフスポットや高級住宅街が広がるマリブ、映画「サイドウェイ」の舞台となったサンタバーバラ、過去に4回全米オープンが開催されたことで有名なペブルビーチゴルフリンクスがあるモントレー、クリント・イーストウッドが市長を務めていたこともあるカーメル、息をのむような眺望が広がるビッグサー、シリコンバレーの中心的都市サンノゼなど、見所満載。時間はかかるが、寄り道しながら気ままに旅ができるのが車の旅の魅力だろう。

サンフランシスコまではなかなか行けないが、サンタモニカからマリブまでなど、ロサンゼルス周辺を走るだけでも、ずいぶん気持ちがいい。雲ひとつない青空、太陽の日差しに輝く海、涼しくて心地よい海風、緑豊かな山、迫力ある岩肌・・・。見晴らしの良い景色を見ると気分爽快、リフレッシュできる。マリブ周辺にはビーチはもちろん、美術館ゲッティー ヴィラや素敵なレストラン&ワイナリーもあるので、休みの日のお出かけには最高だ。ロサンゼルスにお越しの際は、ぜひ車での旅に挑戦していただきたい。

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