発見!今週のキラリ☆

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2011年8月 アーカイブ

vol.115  「母校の祭り、今昔」 by 杉田洋子


8月のテーマ:お祭り

浴衣を来た女性の姿が目に涼しい今日この頃。
私も負けじと、近所のお寺の縁日で、野菜を買ったり、無料血圧測定をしたり、ぶよぶよの焼きそばを食べたりして雰囲気を楽しんでいる。次回は、包丁研ぎをしてもらおうかともくろんでいるところだ。(※比較的、年齢層が高い住宅地です)

そんな日本らしい祭り(?)はもちろん大好きだが、私がこれまでで一番深くかかわった祭りと言えば、異国情緒あふれる大学の学祭だった。
母校の東京外国語大学は、学祭にかなり力を入れている大学と言っていいだろう。
何しろ期間が5日間もある。
26言語の学科がそれぞれゆかりの国の料理や酒をふるまう模擬店や、各言語による語劇。ベリーダンスにフラメンコに...もはやミニ万博状態だ。
私はといえば、ブラジル音楽のサークルに所属しており、連日ライブをしたり見たりで
小屋に入り浸っていた。

折しも私が入学した年の秋には、キャンパス移転というビッグイベントがあった。
元のキャンパスはボロボロで、移転したとたんに猫とカラスの巣窟と化したが、
先輩たちは、"あの頃はよかった"、と口々にこぼしていた。
"あの頃の学祭の熱気は、こんなものじゃなかった"、と。

確かにすごい熱気だったのだろう。
私は旧キャンパスでの学祭を経験していないが、普段敷地でバーベキューひとつするにしても、きれいなキャンパスに移ってからは厳しく取り締まられた(当たり前か...)。

さらにその後、学校が法人化すると規制に拍車がかかる。
音を出せる時間も、1店舗が出せるお酒や料理の種類も制限されるようになって
いった。ライブ用の小屋を建てるにも、消防法やら何やらをクリアしなければならない
これまでと違い、何か起きればすべて学校の責任になるのだから、当然と言えば当然だろう。

その昔は、サークルでも朝の4時までサンバを歌い続けたという。
祭りの解放感(あまりハメを外しすぎてはいけませんが...)という点で言えば窮屈な感じは否めない。

次々と追加される新たなルールに戸惑う中、ついには祭りの期間を5日間から3日間にするという話が飛び出した。これにはさすがに多くの学生たちが反対した。
もちろん、私の所属したサークルは、この祭りに懸けているのだから大反対だった。中にはこの祭り中に海外旅行に行くことを楽しみにしている人々もいたが、彼らにとっても死活問題だっただろう。
"5日間なければ外語祭じゃない!"
学生たちの必死の反対で、日程の縮小は免れた。

こんな風に、何事にも守り続けるべき要素はあるのだろう。
大切なものを見失い、要となる魅力が失われてしまったら、祭りも途端に色あせてしまうかもしれない。

一方で、"昔はよかった""うらやましいな""私たちはツイてない"
はいくらでも言える。変化が起きた以上、適応し、改革していくが勝ちなのだ。
今でもほぼ毎年学祭には行っているが、現役の学生たちは規制を新たな糧やサービスに変え、祭りを盛り上げている。今だって十分魅力的で、そそられる祭りである。
あの祭りで飲む世界各国の昼ビールは、いつだって格別だ。

世界各国の衣・食・語がお手軽に味わえる外語祭。
まだまだ先(11月)ですが、未体験の方はぜひ一度足を運んでみてください!
何しろ5日間もあるのですから...。

vol.116  「チーム翻訳」 by 藤田庸司


8月のテーマ:お祭り

JVTAでは国内外の様々な映画祭を支援し翻訳協力をしているが、今年も毎年恒例となった「UNHCR難民映画祭」の季節がやって来た。そして今秋は「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」の開催も同時期となり、スクール内でもお祭り気分が例年に比べ、一層盛り上がりを見せている。

前者は国連難民高等弁務官駐日事務所(UNHCR)と国連UNHCR協会が主催する映画祭で、世界各国で起きているさまざまな難民問題の実状を描いた作品を多数上映する映画祭。http://unhcr.refugeefilm.org/2011/
後者は、作品の上映を通してセクシュアル・マイノリティやHIV・AIDSに関する偏見や誤解を解き、より多様で自由な社会を創出するための教育と、情報提供を目的とする映画祭だ。
http://tokyo-lgff.org/2011/
両者共に個性的で主張する世界をしっかりと持った素晴らしい映画祭である。

現在それらの翻訳作業が進んでいるわけだが、MTCではディレクションを、こちらも恒例となった"チーム翻訳"で行っている。チームで翻訳?一般の方にはピンとこないかもしれない。チーム翻訳とは数名の翻訳者グループを作り、リーダーを決め、1つの作品の翻訳を納品までのスケジューリングなども含めチーム単位で行う作業形態だ。

翻訳作業にはともすれば孤独なイメージがつきまとう。部屋に篭り、ひたすら机に向かって原稿を書く。気が付けば数日誰とも話していないこともあったりして、久々に友達と会った日には人恋しさからか、「俺ってこんなにおしゃべりだっけ?」と思わんばかりにしゃべっていたりする(笑)。

チーム翻訳はその逆で、チームごとに作ったメーリングリストなどを活用することで、翻訳者同士が積極的に交流し、お互いの原稿をチェックし合い、意見交換しながら作業が進む。最も良い点は他人の原稿を見ることができることと自分の原稿を見てもらい他人の意見を仰ぐことができることだろう。
自分では思いもつかないアイデアや意見が飛び交う中、他メンバーの良い部分を積極的に盗み、良くない部分は自分の原稿のように反省しつつ、時間をかけてじっくりと訳文を練り上げていく。時には激しい意見の衝突もあるが、各々の気持ちは"作品の本意を視聴者に届けたい"の一言に尽きる。助け合い、一つの作品をチームで仕上げる一体感は、まるでお祭りで神輿を担ぐ一体感と似ていて、私もディレクションしていて、毎度のことながらその張り詰めた雰囲気に圧倒されるとともに、ある種の高揚感を感じる。
1チーム90~120分程度の長編を3週間ほどで作業するのだが、私の担当するチームは毎年素晴らしい字幕を仕上げてくれる。目下、難民映画祭の翻訳が進行中で84分の作品を6名の翻訳者チームで作業しているが、今年も素晴らしい字幕が上がりそうだ。傑作を観に、是非劇場にお越しいただきたい。