発見!今週のキラリ☆

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vol.116  「チーム翻訳」 by 藤田庸司


8月のテーマ:お祭り

JVTAでは国内外の様々な映画祭を支援し翻訳協力をしているが、今年も毎年恒例となった「UNHCR難民映画祭」の季節がやって来た。そして今秋は「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」の開催も同時期となり、スクール内でもお祭り気分が例年に比べ、一層盛り上がりを見せている。

前者は国連難民高等弁務官駐日事務所(UNHCR)と国連UNHCR協会が主催する映画祭で、世界各国で起きているさまざまな難民問題の実状を描いた作品を多数上映する映画祭。http://unhcr.refugeefilm.org/2011/
後者は、作品の上映を通してセクシュアル・マイノリティやHIV・AIDSに関する偏見や誤解を解き、より多様で自由な社会を創出するための教育と、情報提供を目的とする映画祭だ。
http://tokyo-lgff.org/2011/
両者共に個性的で主張する世界をしっかりと持った素晴らしい映画祭である。

現在それらの翻訳作業が進んでいるわけだが、MTCではディレクションを、こちらも恒例となった"チーム翻訳"で行っている。チームで翻訳?一般の方にはピンとこないかもしれない。チーム翻訳とは数名の翻訳者グループを作り、リーダーを決め、1つの作品の翻訳を納品までのスケジューリングなども含めチーム単位で行う作業形態だ。

翻訳作業にはともすれば孤独なイメージがつきまとう。部屋に篭り、ひたすら机に向かって原稿を書く。気が付けば数日誰とも話していないこともあったりして、久々に友達と会った日には人恋しさからか、「俺ってこんなにおしゃべりだっけ?」と思わんばかりにしゃべっていたりする(笑)。

チーム翻訳はその逆で、チームごとに作ったメーリングリストなどを活用することで、翻訳者同士が積極的に交流し、お互いの原稿をチェックし合い、意見交換しながら作業が進む。最も良い点は他人の原稿を見ることができることと自分の原稿を見てもらい他人の意見を仰ぐことができることだろう。
自分では思いもつかないアイデアや意見が飛び交う中、他メンバーの良い部分を積極的に盗み、良くない部分は自分の原稿のように反省しつつ、時間をかけてじっくりと訳文を練り上げていく。時には激しい意見の衝突もあるが、各々の気持ちは"作品の本意を視聴者に届けたい"の一言に尽きる。助け合い、一つの作品をチームで仕上げる一体感は、まるでお祭りで神輿を担ぐ一体感と似ていて、私もディレクションしていて、毎度のことながらその張り詰めた雰囲気に圧倒されるとともに、ある種の高揚感を感じる。
1チーム90~120分程度の長編を3週間ほどで作業するのだが、私の担当するチームは毎年素晴らしい字幕を仕上げてくれる。目下、難民映画祭の翻訳が進行中で84分の作品を6名の翻訳者チームで作業しているが、今年も素晴らしい字幕が上がりそうだ。傑作を観に、是非劇場にお越しいただきたい。