発見!今週のキラリ☆

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vol.117 「Triumph by Fire」 by 浅野一郎


9月のテーマ:炎

修了生から次のような言葉を聞いた。"ここの日本語の意味が分かりません"という問いかけに対する答えだ。

「たしかに流れは悪いと思ったのですが、でも、原文にはそう書いてありますから...」

たしかに、原文にはそのように書いてある。しかし、その原文に書いてあるという情報は、視聴者にとって本当に必要な情報だろうか?
私たち、映像翻訳者の仕事とは何であるかを考えてほしい。≪外国語で作られたコンテンツを、その国の視聴者に分かりやすい形にする≫ことが、映像翻訳者の本分であるはずだ。

(たまたま、上の話をした素材のソース言語が英語だったため、言語を"英語"に特定をするが)決して、英文でこう言っているということを知らしめることではないはずだ。

ソース言語を正しく理解(正しい読解)し、そのウラに含まれている真意を読み取った(正確な解釈)上で、ローカライズをする国の文化や風俗、宗教観などに合わせて、当該国仕様にしていくことが映像翻訳だ。

つまり、映像翻訳者は「日本語版の脚本家」と言っていい。

映像翻訳者たる者、もちろん、これから映像翻訳を学ぶ方、これからトライアルにチャレンジする方は、このことを心に刻み付けてもらいたい。映像翻訳者は、英語という"炎"に対峙し、服従させ、自分の中に取り込むことができる勇気を持たねばならない。
怖くても眼を逸らしてはならないのだ。少しでも逃げるような素振りを見せた瞬間に炎は襲い掛かってきて、映像翻訳者に大打撃を与えるから。

カート・ラッセル主演の、映画「バックドラフト」を覚えているだろうか? 炎は意思を持っている。炎は美しいが、少しでも気を許すと飲み込まれて大ケガをする... 炎の虜になってしまう者もいる。しかし、炎がどのような動き方をして、どんな意思を持っているかを理解するれば、屈服させることができるのだ。

最初は小さなボヤ程度のものでも、英語という炎には油断をすべからず。気を許すと、業火にもなりかねないものだ。しかし、ひとたび炎を操る術を身に付けた者は、今度は、それを武器にできる。

単なるたとえと思わず、真剣に考えてみよう。