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vol.105 「ブラウン管の思い出」 by 杉田洋子


4月のテーマ:テレビ

映像翻訳者の大切な仕事の供給源であることは、言うまでもないテレビ。
世界中の様々なコンテンツを日常的に見られるようになったおかげで、
こうして大好きな映像翻訳に関われるのだから、我々にとってはもはや神様のよ
うなものである。

そんなメディアとしてのテレビの進化が続く一方で、
受信機としてのテレビもまた、目覚ましい進化を遂げてきた。
果たしてテレビという名で呼び続けていいのだろうかと躊躇するほど、
すっかりスリムで多機能でスタイリッシュな存在になってしまったのだ。

子どもの頃、私が実家で最初に出会ったテレビは、1桁台のチャンネルはボタン
式、2桁台のチャンネルはラジオのようにダイヤルで回すタイプのものだった。
リモコンなんてもちろんなく、枠は木製だったような気がする。
おじいちゃんがチャンネルを変えようと立ち上がる度に、"見えな~~い!!"
と孫たちの声が上がった。そしてガチャガチャ音を立てながらチャンネルを変え
られるたびに、"またお相撲~~??"の声がこだました。

ブラックやシルバーのボディーにリモコン式という出で立ちが一般的になったの
は、小学生に入ってから。もちろんまだまだブラウン管の時代だ。
「東京ラブストーリー」をはじめ、テレビドラマの再放送を毎日食い入るように
見ていた5年生の私は、話したこともない隣のクラスの男の子に思いを寄せてい
た。名前は山田くんという。そんなに目立つタイプではないが、背が高く、清潔
感があり、運動神経もそこそこ。しかし何より私の心をつかんだのは、大好きな
はとこのお兄ちゃんに顔が似ていたことだろう。

ある晩のこと、近所を何台もの消防車が通り過ぎていった。さすがのサイレンの
多さに、私と母も、"怖いね、どこだろうね"などと気にしていた。
そして翌朝、学校に行くと何やらよからぬ噂が耳に飛び込んできた。

友人:"山田んち、火事になったんだって"

(え! 昨日の火事って、まさか山田くんちだったの?)

動揺を隠せない私。

私:"何で火事になったの? 天ぷら?*"

友人:"ううん。テレビから火が出たらしいよ"

私:"え..."

ブラウン管テレビの経年劣化による火災は、近年も取りざたされたが、当時小学
生だった私には、テレビが急に燃えるなんてかなりショッキングだった。
一瞬ギャグかとさえ思ったほどだ。
幸い山田君は無事で、私の恋の炎が鎮火することもなかった。


そして今...我が家の寝室には、上京時に故郷で購入した14インチのテレビデオが
鎮座している。故障したわけでもないので捨てられずにいるが、さすがにそろそ
ろ危ないのかもしれない。しかし、一緒に上京した仲間としての思い入れが邪魔
をする。
知人が譲ってくれた液晶テレビを見るようになってからは、快適な生活が続いて
いたが、先週急に故障してしまった。
エコポイントも3月いっぱいだし、修理代を払うのもな...ということで、実は一
昨日ようやく思い切って地デジ対応の50インチ購入に踏み切った。**
現在到着を楽しみに待っているところだ。

それにしても、テレビが平面化するにつれ、上に何も置けなくなったのはちょっ
と寂しい。テレビデオの上のカメの置物が、不安げにこちらを見ている(ような
気がする)。


*我が家はその数年前、天ぷら油でボヤを起こしていた。
**本日はエイプリルフールです。本当は32インチです。すみません。