発見!今週のキラリ☆

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vol.129 「つかの間探偵団」 by 藤田奈緒


2月のテーマ:ハート

その夜、少し早めに仕事を切り上げた奈緒さんは、JR神田駅近くのバーへ急いで向かっていました。半年ぶりにアメリカのロサンゼルスから帰国した妹が、兄と先にお店で待っているのです。3人で集まって食事をするのは本当に久々のことでしたから、奈緒さんの心は浮き立っていました。何ヵ月も前から心待ちにしていた夜です。

数時間後、すっかり夜も更けた頃、兄と妹と別れた奈緒さんは、楽しい余韻に浸りながらタクシーに乗っていました。少しお酒も入っていたので知らない間に眠ってしまいます。ふと気づくと家の近所に差し掛かっていたので、慌てて運転手さんにお金を払い車から飛び降りました。家の中に入り鞄の中を見たところで、奈緒さんは顔面蒼白になります。お店では確かに手にした覚えのあるiPhoneが、どこにも見当たらないのです。

一瞬パニックになりはしたものの、私は状況を少し甘く見ていた。というのも携帯をiPhoneに変えて以来、お恥ずかしながら既に2回なくしていて、でもその2回ともすぐに手元に戻ってきたからだ。今回もきっとお店かタクシーの中に違いないと電話をかけたところ、両方ともありませんとの回答。あれ、これはいつもみたいに簡単にはいかない予感...。一気に酔いが吹っ飛んだ。

きっと誰か親切な人が拾ってくれたんだろう。もしかしたら電話に出てくれるかもしれない。しかし何度かけても反応はない。しまった、ミュート&バイブなしの設定にしてたんだった。あああ、何でそんなことしたんだろ。

早くもお手上げかと諦めそうになったその時、私は「iPhoneを探す」という便利アプリがあることを思い出した。なんでもGPS機能を使ってiPhoneの現在地を探し出せるらしい。そういえば数日前に、同じようにアプリで携帯が手元に戻った人の記事を新聞で読んだ気がする。待ってても見つからないんだから、一か八か私もやってみるしかない。

というわけで私はパソコンを立ち上げ、初めて「iPhoneを探す」にログインしてみた。するとすぐに地図上に私のiPhoneは銀座3丁目あたりにあると表示された。私は神田にいたわけだから、やっぱり誰かが拾ってくれたのかなと思いながら、再度現在地を確認するとさっきと違う場所が出た。あれ? おかしいな。もう一度見てみる。するとまた違う場所が表示された。

どうやら私のiPhoneは銀座から神田方面に向けて、ぐんぐんと移動しているようだった。このスピードは絶対、人間の歩くスピードじゃない。やっぱりタクシーに乗ってるとしか思えない。さらに動きを見ていると、日本橋に差し掛かったところでぱたりと表示されなくなってしまった。電話をかけたりし続けたせいか、iPhoneの電池が切れてしまったのだ。

今ならまだ間に合うかもしれない! 私はすぐさま、タクシー会社に電話をかけた。電話に出た親切なおじさんに、私の乗っていたタクシーがその時間帯に銀座から日本橋に向けて走行していたかどうか確認してほしいと伝える。きっとこれでもう見つかるはず。期待に胸をワクワクさせながら待っていると、電話口に戻ったおじさんは言った。「困りましたねえ、今夜は銀座は走ってないらしいんですよ」 えええええ... 脱力。

私の探偵ごっこは無念の結果に終わった。勘の冴えわたった名探偵のような気分で舞い上がっていたのに大ショックだ。少年探偵団の小林少年が横にいなかったのが残念でならない。

これが2012年、年明け早々、私の心(ハート)を大きくかき乱した一大事件の顛末です。