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vol.104 『カンバセーションズ』 by 野口博美


4月のテーマ:テレビ

この頃、映画といえば、もっぱらDVDをレンタルして家のテレビで観ることが多い。
私はラブストーリーがちょっと苦手であまり手を出さないのだが、出演している俳優を目当てに借りた作品が意外にすごく気に入ったので、皆さんにご紹介したいと思う。

華やかな結婚式の場面から物語は始まる。式場の中でタバコを吸える場所を探し求めているヘビースモーカーの女(ヘレナ・ボナム=カーター)。そんな女を見つめる男(アーロン・エッカート)は彼女に近づき、初対面であるかのように会話を始めるが、2人の間にはかつてほんの短い間、結婚していたという過去があった。

女は翌朝にはイギリスに帰らなければならない。数時間しかないわずかな時の中で会話を重ねながら、2人はお互いの変わってしまった部分にとまどいながらも昔と同じ思いをいまだに抱いていることを隠せない。

この作品の特徴を挙げると登場人物がえらく少ない。主人公たちの夫や彼女、妹などが登場するが、それもほんの一瞬で彼らと面と向かって会話をすることはない。
作品の大半はタイトルどおり、2人の会話によってのみ成り立っている。
主人公たちの名前すら最後まで明らかにならないのだ。

画面は常に2分割されていて、一方には男の視点、もう一方に女の視点が描かれることもあれば、2人が過ごしてきた過去の思い出と現在の状況だったり、実際に口に出すセリフと心の中の思いが同時に映し出されたりする。

サントラには全編をとおしてカーラ・ブルーニの曲が使われている。ちょっと切ない大人の恋の世界にぴったりだと思う。

かつての恋人といつか再会したら、こんな気分になるのかもと想像して勝手に切なくなってしまった。それにしても女は冷たいな、と思ってしまう作品だ。

何にしても映画は大きなスクリーンで観るのが一番。今後はテレビではなく、映画館に足を運ぶ時間を作れたらと思う。

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『カンバセーションズ』
監督:ハンス・カノーザ
出演:ヘレナ・ボナム=カーター、アーロン・エッカート他
製作国:アメリカ/イギリス
製作年:2005年
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