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vol.106 『ヒドゥン』 by 浅野一郎


5月のテーマ:自転車

今回紹介しようと思っている映画は、前に桜井が書いていた、人生の入学試験では、間違いなく"不合格"の烙印を押される選択だろうが、好きなものは仕方がないので、勇気を出して紹介したいと思う。
自転車と聞いた瞬間に思い出す映画、僕の場合は「フラッシュダンス」だ。 映画のオープニングで、主人公の女性が自転車に乗って出勤するシーン。

70年代に日本で一世を風靡した"ロードマン"という型によく似た自転車で、颯爽と街を走る姿が強く記憶に残っている。だが、もっと記憶に残っているのが主演俳優のマイケル・ヌーリー。彼はこの5年後、「ヒドゥン」に出演し、僕にとって忘れられない俳優となった。

自転車→フラッシュダンス→ヌーリーという流れで話を進めたい。
かなり無理やりだが、というわけで、今回、自転車をテーマ(というか出発点)として紹介したい映画は「ヒドゥン」本作はアヴォリアッツ映画祭のグラ ンプリに輝き、映画界にSFホラー・刑事アクション・ヒューマンドラマ・コメディという新ジャンルを築いた名作だ。

映画は、 主人公のマイケル・ヌーリー演じる地元の刑事と、カイル・マクラクラン演じるFBI捜査官が、最初は反発しあいながらも、ある凶悪事件を解決していく刑事ストーリーが軸になっている。しかし、話はそんなにシンプルではない。
犯人は身の危険を感じると他人の身体に乗り移る寄生型エイリアンで、ヘヴィ・メタルとフェラーリが何より好きという性癖を持っている変わり者。しかも、乗り移る相手にも基準があり、最後は上院議員に標的を定め、大統領に立候補するという野望を燃やす向上心の高さも見せつける。

エイリアンには特殊な武器でないとダメージを与えられない(人間には、組成が違うとのことで効かない)、悪玉エイリアンはグチョグチョタイプ、一方、善玉のほうはキレイなエクトプラズムタイプ、準主役はなかなか乗っ取られない... 数え上げたらきりがないが、たしかにこの映画は安っぽいご都合主義に満ちている。

しかし、アクションシーンのリアリティを左右する小道具のディテール、そして、ラストの感動はそんな些末事を吹き飛ばしてくれるだろう。
チープな雰囲気を感じつつも、見始めたら最後までグイグイ引っ張られるスピード感に溢れているのも、魅力の一つだ。

ちなみに、刑務所のシーンでは、あのダニー・トレホが出演している。もちろん、警官役ではなく囚人役。おそらくカメオではなく、本当に単なる端役として出ているのだろうが、トレホファンにとっては、たまらないシーンだ。


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『ヒドゥン』
監督:ジャック・ショルダー
出演:カイル・マクラクラン、マイケル・ヌーリー他
製作国:アメリカ
製作年:1988年
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