発見!今週のキラリ☆

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2012年12月 アーカイブ

vol.149 「字幕と音声のプレゼント」 by 浅野一郎


12月のテーマ:サンタクロース

師走も迫り、世の中が慌しくなってきた。

今月のテーマはサンタ。もちろん、サンタクロースのことで、1年に1回、クリスマス前夜に欲しいものを持ってきてくれると言われている、とても奇特な人のことだ。皆さんは今年、サンタクロースに何をお願いしているだろう? ゲーム機かもしれないし、アクセサリーかもしれない。しかし、最低でも現時点で600万人近くの人が熱望していると思われるプレゼントがある。それは何か分かるだろうか?

唐突だが、私は今年の3月から「バリアフリー」という分野の仕事にかかわるようになった。現在は「バリアフリー」を専門で扱う事業部に籍を置いている。ご存知ない方のために、念のため「バリアフリー」の説明をしておこう。「バリアフリー」とは、視覚や聴覚にハンディキャップを持つ方たちのために、字幕や音声によるサポート情報を付与して、映像コンテンツの理解における障壁(バリア)を取り除くことだ。

その方法は大まかに分けて字幕と音声ガイドの2つ。ちなみに、字幕は主にテレビ放送用に作られるものを"クローズドキャプション=CC"、音声ガイドは"解説放送"と言われることもある。ちなみに字幕(CCも含む)は聴覚情報を補うもの(音情報を視覚化する)で、音声ガイドは視覚情報を補うためのもの(場面情報を音声で表現する)だ。

ここで、皆さんに想像してもらいたい。テレビを観ていて音が聴こえなくなる。画面では、突然、主人公が振り返る。何が原因で振り返ったのか、皆さんは疑問に思わないだろうか?または、ある映画で映像が消え、スピーカーからは延々と登場人物のセリフと効果音、もしくはBGMだけが流れてくる。どんな状況で、どんな表情で役者が演技をしているのか、皆さんは知りたいと思わないだろうか? しかし、何をどうやっても、聴こえないものが聴こえてくるはずがないし、見えないものが見えるようにはならない。これが「聴こえない」「見えない」というハンディを背負った方たちが、映像コンテンツに対して抱える現状だ。

皆さんは、言葉を使って、異文化間のコミュニケーションバリアを取り除くために、この学校で学習を続けてきたはずだ。外国語を解さない方のために、日本語字幕・吹替えを付与してコンテンツ理解を助ける、バリアフリーでやっていることと、考え方はまったく同じ。単に元の言語が日本語であるというだけで、映像翻訳とバリアフリーの違いはまったくない。バリアフリーを「日→日翻訳」とも言うのは、それが理由だ。最終的には日本語表現力で勝負が決まる、というところもまったく同じである。

私は十数年前に、"映画が好き"という理由でこの学校に入学した。その当時、私がバリアフリーのことを聞いたら、きっと、"だって日本語の番組なんでしょ"とまったく歯牙にもかけなかったに違いない。しかし、数ヵ月とはいえ、この分野に専門で関わってきた経験で、バリアフリーは映像翻訳で培ったスキルを、最大限に活かすことのできる分野だということを声を大にして言いたい。本当にチャレンジのしがいのあるものだということを分かってもらいたい。"私は英語のドラマの翻訳がしたいから"というだけで、バリアフリーをキャリアとして視野に入れないのであれば、大きな損失と言える。

この世には、映画やドラマ、音楽、スポーツ番組を楽しみたくても、それが叶わない人たちが大勢いる。"映像コンテンツの理解に困っている人たち"とは、なにも、英語作品の理解ができない人たちことだけを指すのではない。音が聴こえない(聴こえづらい)、映像が見えない(見えづらい)という視聴者のために、しっかりノウハウを体得して、映像翻訳のスキルを活かしてもらいたい。今年は何かをもらうのを期待するのではなく、字幕と音声ガイドのプレゼントができる人になってみてはどうだろう?

朝起きてテレビをつける、BluRayディスクを挿入する、すると当たり前のように字幕や音声ガイドが付いている、視聴覚に障害があるなしにかかわらず、皆が等しく映画やドラマの話題で盛り上がる。素晴らしいと思う。

vol.150 「誰もが誰かのサンタクロースに」 by 丸山雄一郎


12月のテーマ:サンタクロース

クリスマスシーズンが近づくと誰もが頭を悩ますクリスマスプレゼント。相手に喜んで欲しいからこそ、何を贈るかには迷うし、そんな時間も楽しい。でも反面、今年もお金がかかるな~と思ったり、ただでさえ忙しい時期に買い物に行く時間を作るのは面倒だと思う人もいるだろう。

先日、友人たちと食事をしたときもクリスマスプレゼントの話題になった。カミさんや夫、子ども、取引先の上司、頑張っている部下などなど、職業や立場によって贈る相手の数やプレゼントの中身が大きく違っていることも面白かったが、大なり小なりみんなの悩みの種になっていることが分かった。いっそ手数料は払うから、贈る相手のリストと予算を伝えて、一切合財を引き受けてくれるサンタクロース株式会社みたいなものがあるといいなという結論になった。
そんな話をしながら、僕自身も何をプレゼントしようか考えていると、1ヵ月ほど前に行った日本語表現の勉強会のテーマを思い出した。この期の受講生は優秀な方が多く、翻訳者として活躍している人が多いので、勉強会の課題にはあえて翻訳物を選ばず、講義のときと同じように決められたテーマの原稿を書いてくるというスタイルをとっている。このときのテーマは「自信を持って人に勧められるもの」。自分が普段から使っていて、"これは絶対にいい"というものを600W(ワード)で読み手に伝わる原稿に仕上げるというものだった。50代の女性参加者のお勧めは「耳栓」。いびきのうるさい夫を持つ女性には必需品で、その方はもちろんお友達の女性もほとんどが愛用しているそうだ。もっと高性能なものが欲しいというお友達からの要望もあるらしく、今度はプロのレーシングドライバーやレースのスタッフたちが使用しているというプロ用の製品をご自身で試してみると書いてあった。同じく50代の女性の方のお勧めは「お掃除ロボット」。自分で掃除するよりも家がキレイになるし、掃除機に声をかければ返事もするという高性能ぶりで、使えば使うほど愛着が湧き、いまではなくてはならない存在になっているとか。ますます高齢化が進む日本にはぴったりの商品だとも書いてあった。20代の女性は「袖付きのちゃんちゃんこ」。本人は雪国の出身ではないのだが、実家では昔から家族全員が愛用していて、上京して一人暮らしをしている現在も、毎日着ているそうだ。フリースのようないかにも着ているというか、"締め付けられ感"がないのがいいらしい。20代が昭和を感じさせるものを勧めていて、50代が流行の製品というのがおかしくて、勉強会自体はかなり盛り上がった。3人が勧めてくれた商品を送り物として考えてみると、年齢だけで贈り物を決めてしまうと失敗する可能性があるという証明だろう。

振り返ってみれば、子供のころはともかく、物心がついてからクリスマスプレゼントに何をもらったのかなんてあまり覚えていない。高価なものをあったし、いま欲しいものをこちらからリクエストしたこともあったが、薄情なことに中身は思い出せないのだ。でも不思議と送ってくれた人の顔だけは覚えているし、少なくともうれしかったという思い出だけはある。そう考えると、クリスマスプレゼントの中身なんて、きっと何でもいいのだろう。それより贈ってくれた人の「いつもありがとう」や「離れていても気にしているよ」や「大事に思っているからね」というメッセージが伝わることが大事なのだ。そんな気持ちだけは、薄情な僕のような人間にもずっと残るし、そんな気持ちを受け取った子どもたちは、大きくなっても、きっと自分の大事な人に同じようにしていくだろう。
総選挙が終わって、この国の未来がどうなっていくのかはまだ誰にも分からないし、誰もが不安だらけだ。でもクリスマスにプレゼントを「贈りたい」と思うような大人が多い社会なら、きっと大きく間違った方向にはいかないと僕自身は信じている。
「誰もが誰かのサンタクロース」なんてちょっと恥ずかしい言葉だけれど、ちょっと素敵だなとも思う。

Merry Christmas & Happy New Year!
みなさんにとって2013年がいい年であるようにJVTAのスタッフ、講師一同は心から願っています。また来年、みなさんと学校やこのページで会えることを楽しみにしています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!