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vol.112 『ボトル・ショック』 by 藤田彩乃


8月のテーマ:お祭り

アメリカにもいろいろな種類の祭典がありますが、中でもWine Festivalが気に入っています。青い空においしいワインと食事。参加者全員が酔っ払いですから終始みなご機嫌。楽しくないわけがありません。

カリフォルニアのワインを語る上で忘れてはいけないのが、「パリ・テイスティング事件」。アメリカ建国200周年にあたる1976年にフランスで開かれたワインの品評会です。審査員を務めたのは一流のワイン専門家。もちろん全員フランス人です。フランスとカリフォルニアのワインをブラインドテイスティング(目隠し試飲)して、フランスワインのすばらしさを再認識するはずが、なんと結果はカリフォルニアの圧勝。名だたるフランスのワインを押さえて、スタッグス・リープ・ワインセラーズの「カベルネ・ソーヴィニヨン 1973」とシャトー・モンテリーナの「シャルドネ 1973」が1位に輝きました。王者フランスとってはどんなに屈辱的だったことか。この直後、「タイム」誌のジョージ・テイバーは、有名なギリシャ神話の挿話になぞらえて、「パリスの審判 Judgment of Paris」という記事を発表。こうしてカリフォルニアワインは世界的な評価を受けるようになりました。

この実話を映画化したのが「ボトル・ショック」です。「ボトル・ショック」とは、ワイン醸造におけるボトリング前とボトリング後のワインの状態の違いのこと言います。ワインを樽からボトルに詰めるときに沈殿していた固形物が入ってしまい、味が変わってしまうのです。高級なワインや複雑な香りのワインの場合は、回復するまでに時間がかかるため、ボトリングのあとにある程度ねかせてから出荷することも多いそうです。このボトリングによる変化がストーリーの鍵となります。

映画ならではの脚色も加わりますが、無名のカリフォルニアワインが、世界で実力を認められるサクセスストーリーは見ていて爽快。低予算のインディペンデント映画ながら、味のある役者もそろっています。また美しいブドウ畑を眺めてるとナパ・ソノマに行きたくなるはず。ワイン好きの方は、カリフォルニアにお越しの際は、ぜひワインカントリーも訪れてみてください。

ちなみに30年後の2006年にリターンマッチが開催されましたが、またしても1位から5位までをカリフォルニアワインが独占したそうです。

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『ボトル・ショック』
監督:ランドール・ミラー
出演:クリス・パイン、アラン・リックマン、ビル・プルマン
製作国:アメリカ
製作年:2008年
http://www.bottleshockmovie.com/

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<余談>
先日、ロサンゼルスのリトル・トーキョーで第71回Nisei Week Japanese Festivalが開催されました。
日系アメリカ人が主催する夏祭りで、レストランがたこ焼きや焼きそばなどお祭り料理を出したり、
ねぶたの山車や仙台七夕も登場したりと、本格的です。パレードでは地元の方々が民謡やJ-POPに合わせて踊ったり、神輿を担いで練り歩いたり、東京にいた時よりも日本の文化を満喫できました。公式ウェブサイト:http://niseiweek.org/

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