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vol.116 『ゼブラーマン』 by 藤田庸司


10月のテーマ:憧れ

先日の日曜日、自宅で作業をしていると、近所の子供たちが"何とかレンジャー?ごっこ"なるものをする声が聞こえてきた。最近の"正義のヒーロー"事情に詳しいわけではないが、彼らの「俺レッドだから、お前はブルーな。」、「いや、俺は前からレッドだったから、お前グリーンでいいんじゃね?」などというやりとりから、おおよそ色分けされたヒーロー戦隊のキャラ取りでもめているのだろうと察しがつく。昭和生まれの僕は仮面ライダーごっこをして育ったが、平成になってから23年経った今でも正義のヒーローに憧れる子供の心は変わらないようで何となくホッとした。窓から入ってくる金木犀の香りも手伝い、少々ノスタルジックな気分になった僕は、愛すべき正義のヒーローが登場する映画が観たくなりレンタルDVD店へ赴いた。

~白と黒のエクスタシー~『ゼブラーマン』

唐突だが、字幕翻訳におけるスキルアップの相談を受けたとき、僕はよく「番組の構成やストーリー展開のパターンを掴みましょう」と話す。それは洋画や海外のドラマ・ドキュメンタリー番組に限らず、民放のバラエティ番組、スポーツ番組、クイズ番組、すべてに存在していて、意識して観ると気づくはずだ。それを知り、番組の主張する世界感を掴めると、的外れな字幕の流れにはならない。そして『ゼブラーマン』には"ゴールデンルール"ともいうべき、正義のヒーローものには欠かせない要素が見事に盛り込まれている。
※以下、ネタバレ注意です。

~『ゼブラーマン』に見る正義のヒーローものゴールデンルール~
①主人公は正義のヒーローに変身するまでは冴えない一般人。
②正義のヒーローはマシン(バイク・車など)を操る。
③宿敵は異常に強く、ヒーローはピンチに陥るが危機一髪で逆転勝利する。
④正義のヒーローを信じる、心にキズを負った少年が登場する。少年はヒーローのおかげで心の病を克服する。
⑤敵キャラは悪者ではあるが極悪ではなく、ややオチャメな面あり。
⑥必ずハッピーエンド。

お決まりの展開だが、そのお決まりの展開を期待し、
結末は分かってはいるがヒーローを心から応援してしまう。
空を飛べなければ強敵には勝てないことを知り、空を飛ぶ特訓をするゼブラーマン。
ボロボロになりながら口にするセリフが心に響く。

「信じれば、必ず夢は叶う」。

⑦正義のヒーローは観る者に夢と希望を与えてくれる。

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『ゼブラーマン』
監督:三池崇史
出演:哀川翔、鈴木京香、渡部篤郎他
製作国:日本
製作年:2003年
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