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vol.115 『リトル・ランボーズ』 by 杉田洋子


10月のテーマ:憧れ

あまり肩ひじ張らない映画が観たいなと思い、特段前知識もなく借りてきたこの
作品。
よく考えると普段あんまり子どもが主役の作品って観てないかもしれない。
しかしふたを開けてみたら、観てる間始終笑ったり泣いたりで、見応えたっぷり
の映画だった。

舞台は1982年のイギリス郊外。同胞教会の厳しい戒律の元で育てられた内気な少
年ウィル・プラウドフットと、学校切っての問題児リー・カーター。一見対照的な
2人の小学生が出会い、ひょんなことから一緒に映画を作ることになる。

2人をつないだのは、あるときカーターの家で観た映画『ランボー』だった。カー
ターは裕福な家庭に暮らすものの、母親は年中家を留守にしており、ひそかに孤
独を抱えていた。一方で、映画製作にあこがれ、兄のビデオカメラをこっそり持
ち出しては映画を撮っていた。一方、テレビをはじめ娯楽を禁じられていたウィ
ルは、画面の中で活躍するたくましいスタローンの姿に衝撃を受ける。
そして"僕はランボーの息子だ!"と張り切って撮影に臨むことになったのだ。
こうして波乱万丈な2人の映画作りがスタートした。

子どものすごいところは、やる前に限界を決めてしまわないところだと思う。
大人に比べて、能力も手に入るものも限られているけど、"こんなこと無理!"
という壁を作らないぶん、可能性は無限大だ。見よう見まねで映画を撮り、過激
なスタントにもやる気満々で挑む。使える道具はなんだって使う。大人たちが鼻
からあきらめてしまうようなことを、純粋な憧れという動力でやってのけてしまう。
(そんな子どもたちが憧れているのは、他でもない大人たちのしていることだっ
たりするのだけれど...)

一方で、子どもの社会は大人社会の縮図でもある。そこには曲がりなりにも序列
があり、個々の立場はふとした瞬間に入れ替わる。じわじわと人望を得ていく者
や彗星のごとく現れるカリスマ的存在、逆に敵視され排除されていく者...。彼
らの盛衰は第三者であるその他大勢(取り巻きたち)に左右される。両者はたが
いに翻弄されながら、勢力図を日々塗り替えてゆくのだ。

そんな刹那的な人間関係の中でも、生き続けるものがある。夢、そして友情。
さまざまな障害に、絶望して打ち砕かれそうになっても、それが本物なら決して
失われはしないということを、子どもたちは教えてくれる。

ユーモアも満載で、脇役までキャラが立ってる。小気味よいテンポで、起承転結
が展開してゆく。ほっこりするのに笑える、かなりオススメの1本です!
個人的な注目ポイントはカーター役のウィル・ポールター君のいたずらっぽいは
にかみ笑顔。かなり母性本能をくすぐられます...。したり顔から憎しみ顔までい
ちいち表情が秀逸!

何かにまっすぐに突き進んでゆく、ピュアな情熱を忘れたくないあなたに!!!

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『リトル・ランボーズ』
監督:ガース・ジェニングス
出演:ビル・ミルナー、ウィル・ポールター、エド・ウェストウィック他
製作国:イギリス、フランス
製作年:2007年
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