今週の1本

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vol.119 『サンタクロース』 by藤田奈緒


12月のテーマ:プレゼント

朝から目まぐるしい1日を過ごし、冷たい雨の降る中、凍えながら帰宅すると、マンションの入り口にクリスマスツリーが出ていた。ああそうか、もうクリスマスシーズンなんだ。薄暗いスペースでチカチカと光るライトを見ていたら、何だか少し心が温かくなった気がした。

昔からクリスマスの時期になると思い出す大好きな映画がある。伝説のサンタクロースが悪人たちから子どもたちを救うというファンタジー映画、その名もずばり『サンタクロース』。私もいい大人なので、もちろんサンタクロースに幻想を抱いたりはしていないけれど、子どもの頃に映画館で観て以来、この映画に出てくるサンタとそれを取り巻く世界が、私のイメージする"クリスマス"となった。

毎年クリスマスの夜になると、近所の子どもたちにおもちゃのプレゼントを配って回る老人クラウス。ある年、トナカイに乗って妻と家に向かっていると、不思議な光に導かれて北極に向かう羽目に。クラウスはそこで待ち構えていた妖精たちに頼まれ、彼らの作ったおもちゃを世界中の子どもだちに配ることになる。これが"サンタクロース"の誕生秘話。

100年後、クラウスサンタの人気に嫉妬した悪い妖精が、人間界の悪徳おもちゃ会社と結託して悪巧みを働こうとする。彼らが売り出した、食べると体が軽くなり、熱をあてると爆発する危険な「パープル・キャンディー」のせいで世界は大混乱。事情を知ったサンタクロースは子どもたちを救うために立ち上がる...。

恐ろしくベタなストーリー展開であることは認めよう。それでも私はこの映画が大好きなのだ。もはや物語の内容など関係ないのかもしれない。妖精たちの住む世界、カラフルで楽しげなおもちゃ工場、ソリに乗って夜空をトナカイとひた走るサンタクロース。食べると体が宙にふわふわ浮いてしまう不思議なキャンディー。映画を観たあと、あのキャンディスティックを買いに連れていってくれと母親にねだったっけ。

おとぎの国と実社会の境界のまるでない映画の世界は、とんでもなく魅力的で、幼い私の心をガッチリつかんでいまだ離さない。大人になるまでのどこかの段階でサンタクロースは存在しないことを知ったけれど、実は今でもちょっぴり心の片隅で私は信じている。12月の肌寒い夜がやって来ると、どこかで忙しくしているサンタのためにホットココアを用意したくなるのだ。

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『サンタクロース』
監督:ジュノー・シュウォーク
出演:ダドリー・ムーア、ジョン・リスゴー他
製作国:アメリカ
製作年:1985年
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