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vol.142 「世界最古の記録」 by 浅野一郎


8月のテーマ:記録

"今年は記録的な猛暑"という言葉を聞かない日はないのではないか? と思う今日この頃。
さて、今月のテーマは、その「記録」。記録という言葉にもいろいろな使い方があるが、私は"世界最古の記録"という表現に猛烈に心を惹かれる。

特に「記録」ということになると、やはり仕事柄か"文字"で記録を残すということに思いを馳せてしまう。

史上最古の文字は紀元前3200年に発明された楔形文字だと言われている。言葉を記録するためのものだそうだが、後世に文化や知識を後世に伝えるという目的もあったのだろう。
しかし、言葉という音声をベースとした情報を文字で記録することには困難がつきまとったに違いない。伝達体系がまったく違う2つのものを具現化しようとするのは、一見、不可能に思える。文字を発明した人も同じような苦労を味わったことは想像に難くない。だから誰でも分かるような象形文字を使うなどの工夫をしたのだろう。

いま、約15名程度の修了生に10月1日に開局する某チャンネルの子供向けアニメ番組の聴覚障害者向けクローズド・キャプションのライティングとディレクションを手掛けてもらっている。登場人物の行動や思惑を、音を聴いて理解している視聴者と聴覚障害者が同じ理解度に達するよう文字で表現するという作業は、コーヒーを飲んでいる人と水を飲でいる人に、同じ味覚を提供しようとするようなものだ。

素材の種類は、英語の発音やスペルを分かりやすく教える番組から物事の成り立ちなどを実験などを交えて教えるものまで実にさまざまだ。特に発音を教える番組を文字だけで表現するという作業には大きな困難が伴う。

この仕事は、まさに文化や知識を後の世に伝える、という文化的な大プロジェクトに他ならない。いま修了生のチームが苦労をして作っているクローズド・キャプションで番組を観たことがきっかけで、将来、アニメクリエーターになる子どもがいるかもしれない。
物理学者やスポーツ選手になるきっかけを作るかもしれない。今年を「クローズド・キャプション元年」として、後世に恥じない仕事をしようと心に誓った。