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vol.135 『三国志 Three Kingdoms』 by 杉田洋子


7月のテーマ:変わらないもの

中国で総製作費25億円を投じ、6年の歳月をかけて作られた超大作ドラマ。
私は完全なにわか三国志ファンですが、この数カ月は何かというと三国志の話にこじつけて、ちょっと煙たがられるほどハマりました。先日ついに48巻(95話)を見終えて、ちょっぴり燃え尽き気味です。

三国志に詳しい人が五万といる中で、この作品について書くのは勇気が要りますが、映像翻訳者や女性としての視点も交えつつ、初心者でも十分に楽しめる魅力を我流でご紹介します!

① 吹き替え版の面白さ
これはぜひ吹き替えで見ていただきたいです。作風を重視した、歴史ドラマならではの言葉遣いにハマります。とはいえ私のような三国志初心者には、地名や肩書など、音声では分かりかねるところもあり、途中から日本語字幕も表示して視聴しました。
監修は三国志研究の第一人者である渡辺義浩氏。原文は分からないものの、難解な言葉遣いもものすごく自然に流れていて感激です。翻訳原稿の段階で、どのへんまでこの色を出したのかも気になるところ。声優陣もベテランぞろいで、ものすごく聞きごたえがあります。「面(おもて)を上げよ」とか「ありていに申せば」とか「朕は」とか、すごい活用したいのですが、実生活で活用する機会がなかなかないのが残念。

② 現代に通じる頭脳戦
どうして男性がこんなにもハマるのか、ようやく理解できた気がします。
日本で卑弥呼が祈祷をしている頃、隣の大陸ではこれほどの切れ者たちが集まり、近現代の戦術や企業戦略にも通じる頭脳戦を繰り広げていたなんて...。
文武を分け、水陸を分け、屯田制を導入して国を鍛えるメカニズムが、1800年も前に確立されていたのだから驚きです。人の心の裏の裏をかき、気候や地形といった自然条件をも駆使した策略の数々。なんてエコで科学的で、それでいて人間らしいのでしょうか。舌や筆で敵を破滅に追いやる離間の計も見ものです。
結局すべては、当たり前のような自然の道理に通じているのかもしれません。

③ 迫力の戦闘シーン
戦闘シーンはかなり長めで、グサグサ、ボーボー(火攻めの音)と描かれています。
私自身は刺されるシーンが大の苦手なので、ほとんど目を覆っていましたが(ごめんなさい)、名将同士の一騎打ちはかなりたっぷりと時間を取ってあり、見応えがあります。
ただ、馬が本当に死んでるんじゃないかというのが気がかりでなりません...。

④ 魅力溢れる登場人物たち
95話もあると、好きなキャラクターが戦闘や陰謀や病で命を落としていきますが、次から次へと魅力的な武将や軍師が出てくるので、比較的早く立ち直れます。
幸い私は前知識がないので先入観もなく、キャストがイメージと合わないというような落胆も一切ありませんでした。
曹操の名言と司馬懿の奇行に酔いしれる一方で、呂布役のピーター・ホーと、周瑜約のビクター・ホァン、そして陸遜役の...人は読み方が分かりませんが、彼らには本気で惚れました(女として)。家で見つけたクモに大都督と名付けたほどです。趙雲役のニエ・ユエンもかなりの男前。諸葛亮役のルー・イーも男前ですが、私はやはりしょうゆ顔に惹かれます。
関羽や荀彧や黄忠もキュートだし...。それぞれの勢力に好きな人がいるので、戦闘シーンではどっちも応援したくなってしまうという有様。
まあ、やっぱり最終的には曹操が好きなのですが。誰よりもぶれず、頭が切れ、文才もあり、茶目っ気もあり、豪快で俺様で、本当にいいキャラだな~、と。誰かこのドラマ見ている方がいたらオフ会でもして好きなキャラについてとことん語り合いたいものです。

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そんなわけで、ブルース・リーじゃないですが、三国志の道理はあらゆる事象に応用できると、そんな風にさえ感じる今日この頃。
次は孫子の兵法を観ようと経理のS氏と画策しております。しからば。

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『三国志 Three Kingdoms』
監督:ガオ・シーシー
出演:チェン・ジェンビン、ユー・ホーウェイ、ルー・イーほか
製作国:中国
公開:2010年
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