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vol.139 『恋人たちの予感』 by 藤田奈緒


9月のテーマ:食

食事の好みで性格がわかるとは聞くけれど、確かに言われてみればそうかもしれない。焼肉大好きな人はやっぱり何だか勢いがあって豪快な気がするし、お味噌汁にご飯、たくあんのようなシンプルな野菜中心の料理を食べてる人は、キリンのように基本穏やかでのんびりした性格のような気も。メキシカンやブラジル料理が好きな人は陽気でノリがよさそうだし、和食好みな人はもの静かでなんとなく早起きが得意そう。

...というのは、あくまで私の独断による勝手なイメージである。何の根拠もないけれど、まあだいたいのところ当たっているのではないだろうか。そしてこれと関連してよく思うことだけど、食事の注文の仕方にもまた、その人の性格・性質がにじみ出る。

例えば『恋人たちの予感』のサリー。例のデリカテッセンでサリーはサラダを注文する。
「シェフ・サラダをお願い。オイルとヴィネガーを添えて。それと、アップルパイ・ア・ラ・モードを。でもパイは温めてほしいの。で、アイスクリームはパイの上に乗せないで、横に添えてちょうだい。」

"添える"のがポイント。つまりサリーはサラダやパイがグショグショになるのが嫌なのだ。私もどちらかというと食べ物はベストな状態で食べたい方なので、彼女の気持ちはわからないでもないけれど、自分がレストランで注文する時にそこまで細かく具体的な指示を出すかと言ったら、正直そこまでのこだわりはない。ちょっと神経質で風変わりなサリーの性格がよく表れた注文だろう。

先日再会した前の職場の上司ときたら、かなり豪快だった。食事の約束の時間に遅れてやって来た彼に何を食べたいかと聞くと、あっさり一言。
「俺、メニューとかよくわかんないから、適当に持ってきてもらって!」
あまりの大胆さに私は思わず耳を疑った。でも思い返せば私が新人の頃、打ち合わせを控えているにもかかわらずランチでビールを飲んでしまい、慌てて私にブレスケアを買いに走らせるような上司だったっけ。それを考えれば、あの適当な性格だったらと納得もいく。

友人の旦那さんは、レストランで水が注文できない。とても人当たりがよく明るい性格の旦那さんなのになぜ?と友人に聞いたところ、忙しそうな店員さんの邪魔をするようで気が引ける、というのが理由だそう。ちょっとお人好しにも程があるのではと思わなくもないけれど、きっととても心優しい旦那さんなのだろう。

ちなみに今では、自ら店員さんを呼び止め注文することに何のためらいもない私。そんな私にも水が注文できない時期があった。友人の旦那さんと同じ理由だと言っても誰も信じてくれないだろうけど。

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『恋人たちの予感』
監督:ロブ・ライナー
出演:ビリー・クリスタル、メグ・ライアン、キャリー・フィッシャーほか
製作国:アメリカ
公開:1989年
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