今週の1本

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vol.146 『ライブテープ』 by 相原拓


1月のテーマ:初○○

クリスマスにまつわる映画は数え切れないほどあるが、「正月といえばこの映画」という作品はあまり耳にしない。そんな中、僕にとってこれぞ!という1本が、今回ご紹介する松江哲明監督の『ライブテープ』。というのも、撮影されたのが2009年元日の一日限りで、初詣のシーンから始まる文字通りの"正午映画"なのだ。

2009年の東京国際映画祭で「ある視点部門」の作品賞を受賞して話題になった本作は、ミュージシャン・前野健太がギターをぶら下げて、弾き語りながら吉祥寺の八幡神社から井の頭公園へと向かう姿を、74分間、ワンカット・ワンテイクで撮影した異色の音楽ドキュメンタリー。

正月つながりでタイムリーということもあるが、『ライブテープ』を選んだもうひとつの理由は、受講生時代に受けた初トライアルの課題素材であったこともあり、個人的に思い入れがある映画だからである。合格者が『ライブテープ』全編の英語字幕を担当するという臨時トライアルだった。人生初の字幕トライアル。ここはいいところを見せたいという一心で練りに練った自信作を提出したが、惜しくも願いは叶わず、「厳正な審査の結果、残念ながら・・」という一通のメールが届いただけだった。気合が入っていた分、ショックは大きかった。

ただ、幸運にもこのトライアルをきっかけに、担当だったディレクターがある日の講義後に声をかけてくれ、僕は後にMTCに入ることになる。そして昨年、松江監督から再び字幕の依頼があり、最新作の翻訳を担当させてもらうことになった。初トライアルに落ちてから3年、巡り巡ってきた念願のチャンスでようやくリベンジを果たすことができたのだ。

そんなわけで、毎年この時期になると『ライブテープ』を思い出す。そして感謝の気持ちも込めて初詣に向かう。嬉しいことに年明けに引いたおみくじは大吉だった。今年こそ飛躍の年にしたい。

挨拶が遅れましたが、明けましておめでとうございます。
皆さんにとって2013年がすばらしい年になりますように!

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『ライブテープ』
監督:松江哲明
出演:前野健太、長澤つぐみ他
製作国:日本
製作年:2009年
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