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vol.149 『エクスペンダブルズ』 by 藤田庸司


2月のテーマ:予感

子供の頃観た映画のインパクトは、大人になって観た作品のそれよりも、はるかに大きく感じるのは僕だけではないはずだ。僕が子供だった1980年代、テレビ番組におけるゴールデンタイムでは、たくさんの映画番組が放送されていた。そこで観た「ロッキー」や「少林寺」、「ダイ・ハード」、「ターミネーター」といった作品に心動かされていなければ、僕は今と同じ人生を歩んではいなかったと思う。映像翻訳者にもなっていなかったかもしれない。

現代のような3D技術や高度な特殊メイク技術などなかった当時、作品の良し悪しは役者の個性や演技に頼る部分が大きかった。先に挙げた作品をとっても、シルヴェスター・スタローン、ジェット・リー、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツェネッガーが演じていなければ、作品が放つ魅力は薄らいでいただろう。そんな名優たちが一堂に会した「エクスペンダブルズ」は、僕にとっては"アクションヒーローのオールスター戦"とも言うべき特別な一本なのである。

豪華キャストを寄せ集めて作られた映画は、観客の期待も空しく酷評されることが多い。正直、観賞する前は期待はずれの予感もしたが、冒頭の5分でそんな疑いも吹き飛んだ。名作「ロッキー」や「ランボー」同様、シルヴェスター・スタローン自身が脚本を書き、肉体を武器に主演に挑む作品には、単にパワーでゴリ押しするアクション映画とは一線を画す、友情や人情、義理と言った、人の心情や人間模様が常に描かれている。

ともすれば控え目というか、一歩引いた佇まいが美徳とされ、"草食系"という言葉が流行る昨今、時代の流れに逆らうがごとく、これほどまでの肉食系映画は痛快かつ斬新に感じられる。これぞエンターテインメント!できれば大画面で見たい。

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『エクスペンダブルズ』
監督: シルヴェスター・スタローン
出演:シルヴェスター・スタローン、ジェット・リー
製作国:アメリカ
製作年:2010年
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