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2013年10月 アーカイブ

vol.164 『メリー・ポピンズ』 by 板垣七重


10月のテーマ:天使

好きな映画はたくさんあるけれど、特別な映画は限られている。私にとって特別な映画のひとつは、『メリー・ポピンズ』だ。8歳の誕生日に買ってもらったVHSを、テープが擦り切れるほど繰り返し見たのを覚えている。

厳格で仕事ひとすじの父と婦人参政権運動に夢中な母のもとで暮らすジェーンとマイケルは、いたずらが大好き。乳母はすぐにさじを投げて逃げ出してしまう。ある日そんな二人の前に現れるのが、バラ色の頬をした新しい乳母、メリー・ポピンズだ。この魔法使いとも守護天使ともいえるメリーにかかれば、部屋の片づけは楽しいゲームに、煤にまみれながらの煙突そうじは思いがけない冒険に変わる。メリーが来てから次々と起こる不思議で愉快なできごとを通して、子どもも親も成長し、やがて家族はひとつになる。

『メリー・ポピンズ』の魅力のひとつは、当時としては驚くようなアニメーションや特撮を駆使したシーンの数々。絨毯張りのバッグからは、帽子掛けや植木鉢、電気スタンドまで何でも出てくる。指を鳴らせば、おもちゃの兵隊が行進しながらおもちゃ箱へと帰っていく。絵の中に飛び込んだかと思えば、台から外れた回転木馬が自由に走り出す。どのシーンにも子ども心が大いにくすぐられた。

メリー・ポピンズ役のジュリー・アンドリュースとバート役のディック・ヴァン・ダイクの歌もたまらない。「お砂糖ひとさじで」や「チム・チム・チェリー」は、英語が分からないながらも真似をして口ずさんでいたし、幸せな気分になるという不思議な言葉、「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」はどうしても言えるようになりたくて紙に書いて練習した。

思えばこれが字幕で楽しんだ初めての映画かもしれない。小学生の私が思いきり映像を楽しめたのだから、よくできた字幕だったのだろう。そう考えると、私にとって今の仕事にもつながる大切な作品だ。

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『メリー・ポピンズ』
監督: ロバート・スティーヴンソン
出演: ジュリー・アンドリュース、ディック・ヴァン・ダイク、
デヴィッド・トムリンソン、グリニス・ジョンズ
製作国: アメリカ
製作年:1964年
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vol.165 『俺たちは天使だ!』 by 浅川奈美


10月のテーマ:天使

社会人になってまだ間もない頃、あの街に初めて連れていってもらった。木造長屋が立ち並んだ飲屋街。古くからジャーナリストや映画、演劇関係者らが集い、今なお多くの人に愛される場所、新宿ゴールデン街だ。立ち寄った店のカウンターの中には、ラスタカラーのニット帽にロン毛のマスター。腕には革やらミサンガなど大量のアクセ。当時の私の日常での遭遇率としてはかなりのレアキャラである。カウンターのそっち側とこっち側でのトークが避けられないという狭さで、このマスターと自分との共通トピックは何かを探っていた。

そんな時ふと流れてきた音楽が、私の海馬のどっかを刺激した。「あれ?この曲・・・」と、口を開いた私が言い終わらないうちに「わかるの?若いのに。いいねー、お客さん!」と、かなりのかぶせ気味でノってきたマスター。私としては、(なんか聞いた事ある。主題歌?なんだっけ?誰の歌?いつ?最近?でも、めちゃくちゃカッコイイじゃん。覚えてカラオケでうたいたいなー)ぐらいなレベルだったのに、マスターのはしゃぎぶりに、今更後戻り出来なくなっていた。そこからの私は、"ちょっと、ど忘れがひどい子"となり「あれーそうでしたっけ?ああ。そうだった、そうだった。」と高度な相づちテクを連打。なんとかアーティストと曲のタイトル、そしてそれがあるドラマの主題歌である事をマスターのトークから抽出し、止まらないマスターの情熱をしのいだのであった。

その曲はSHŌGUN(ショーグン)が歌う「男達のメロディー」
1979年に放映された沖雅也主演ドラマ『俺たちは天使だ!』の主題歌である。
(キターーーー!懐かしいっ!という人も、さっきから????マークが炸裂している人も、曲名ポチッとして聞いてみてください。名曲です)

曲は確かに聞いた事があった。ドラマのタイトルにある"天使"も記憶にある。
「あ、あれね。そのドラマ何となく知ってる」と感じた私の頭にあったのは「懐かしのあのドラマ」的なテレビの特番でみた『傷だらけの天使』のワンシーン(1974年のTVドラマ。萩原健一と水谷豊出演の探偵もの)。その後あろうことか、『俺たちは天使だ!』と『傷だらけの天使』を長年にわたり完全に混同していた。両作品とも未だ熱烈ファンがいるのは重々承知でここに告白する。恥ずかしい。

勘違い修正後もドラマの映像が全く浮かんでこない。再放送ですら未だかつて観た事がなかったのだった。その後ちょっと『俺天』について調べてみた。若くしてこの世を去った俳優、沖雅也主演のドラマ。 熱烈な沖雅也ファンの中には、『太陽にほえろ!』のスコッチ刑事以上に思いを寄せる人も多いといわれる作品。正統派二枚目でスコッチ刑事の冷静沈着なイメージが強かった沖雅也が本作で演じた麻生"CAP"は、変わらずのかっこよさにお茶目さが加わり、その無敵ギャップが人々を魅了したという。 貧乏探偵事務所のメンバーが、一攫千金を夢見て繰り広げるコメディアクションシリーズ。青山に構えた事務所を拠点に互いをCAP(沖雅也)、 YUKO(多岐川裕美 )、NAVI(渡辺篤史)、DARTS(柴田恭兵) 、JUN(神田正輝)と呼び合う仲間達たちがちょっとヤバいことぎりぎりで依頼を解決していく探偵モノ。なんてナウでおしゃれでイケてる設定!観たい。観なければ。

。。。と思いつつ月日は流れ。。。そして未だに観れずじまい。猛省。2011年2月にはスカパーで全20話が放映されたらしい。。。ちっくしょー。

という事で本日は、私の"観なきゃいけないリスト"に長年名を連ね続ける作品をご紹介した。
ちなみに「男達のメロディー」は、完璧に歌えます。

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『俺たちは天使だ!』
TVドラマシリーズ 全20話
監督:木下亮、土屋統吾郎
出演:沖雅也、多岐川裕美、渡辺篤史、柴田恭平、神田正輝 ほか
制作国:日本
製作年:1979年
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