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vol.151 『ワーキング・ガール』 by 浅川奈美


3月のテーマ:応援


早速ですが今日のコラムは、BGMつきでどうぞ。
Let The River Run - Carly Simon

東京でも桜が咲き始めた。今年の開花は平年より10日前後早いとのこと。花見も、これから急いで予定を立てないと散り始めてしまう!あわただしいことこの上ない。
この春、何かを始めたり、新しい環境に身をおいたりする人も少なくないだろう。キャリアアップを果たした人たちもいるに違いない。そんな季節だ。

今、なんらかの仕事をしている人。自分の能力や労働を提供して賃金を得ている人。その仕事はどのように手にしただろうか?

映像に携わる仕事をするようになってから久しく経つ。今まで、いろんなことがあった。
始まりは国際映画祭の運営担当。まったく経験のない自分が、コアメンバーとして携わった。勤務初日は国内の映画・映像関連会社に何百通とFAXを送って終わった。翌日から覚えることが山ほどあった。というよりむしろ、わからないことがわからない状態だった。見るもの聞くことがすべて初めてで、業界の当り前が、自分にとっては未知との遭遇。不安ばかりだったが、自分がやるしかなかった。代わりはいないのだ。その後、いろいろなプロジェクトに参加した。新しいことを始めるたびに勉強した。人に教えを乞うた。仲間を頼った。失敗もたくさんした。迷惑もかけた。時に上司と口論になったこともあった。会社のトイレで号泣したことも少なくない。それでも前に進んだ。いろんな人に出会えた。いろんな経験をさせてもらった。

「みんな仕事は自分で選んでいるっていうけど、でも、結局のところ、自分のことを選んでもらえて、初めて仕事ってできるんだよね」

一緒にやってきた映画祭のチーフプロデューサーが言ったことばだ。彼はマルチクリエーターとして、今でもメディアをはじめ多方面で活躍する。誰もが認めるような才を備えた人であっても、この謙虚さだ。宴の席だったが、襟を正して聞いたものだ。どんなに実力があったとしても、努力して踏ん張ってその地位まで勝ち上がってきたとしても、最後は選ばれて何ぼなのだ。今、自分の目の前にあるもの。出会えた仕事、選んでいただいた仕事に感謝する。その姿勢を失わないで行きたい。その気持ちが必ず自分を次のチャンスにつなげていく。

『ワーキング・ガール』は、1980年代のマンハッタンが舞台。フェリーでウォール街に通勤する学歴もない主人公テスが最後にはウォール街の住人になっていくサクセストーリーだ。今、お聞きの主題歌、 Carly SimonのLet The River Runがオープニングとクロージングの空撮シーンを彩る。映し出されるマンハッタンに凛とそびえたつWTC。強いアメリカ経済の象徴でもあった今はなきその姿が痛々しくもある。純粋に「働く」ということに対し前向きにさせてくれる。前を向いて歩くあなたに見てもらいたい一本。

最後に、フレッシュマンたちに送りたい。『ピーター・パン』の作者の一言

幸福の秘訣は自分がやりたいことをするのではなく
自分がやるべきことを好きになることだ。
~サー・ジェームス・マシュー・バリー 劇作家~

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『ワーキング・ガール WORKING GIRL』
監督:マイク・ニコルズ
出演:メラニー・グリフィス、シガーニー・ウィーヴァー、ハリソン・フォード
製作国:アメリカ
製作年:1988年
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