今週の1本

« vol.151 『ワーキング・ガール』 by 浅川奈美 | 今週の1本 トップへ | vol.153 『チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ』 by 藤田奈緒 »

vol.152 『世界にひとつのプレイブック』 by 丸山雄一郎


4月のテーマ:涙

恥ずかしいほど号泣したドラマがある。日本でも大ヒットした米のドラマ『ER緊急救命室』だ。1stか2ndシーズンの中のエピソードで、ストーリーはうろ覚えだが、不治の病に侵された子どもとその母親、そしてその子の担当となる小児科医・ダグ(ジョージ・クルーニー)との話だった。
一人の子どもがERに運ばれてくる。シングルマザーであるその子の母親にダグは手術を勧めるが、母親は手術を拒否する。子どもを死なせることになると憤るダグに、母親は自分も病で長く生きられないこと告げ、「いま手術をして子どもが助かったとしても、この子はこの先ずっと治療を受けていかなければならない。自分が死んでしまったら、結局、この子は治療を続けることができず、死んでしまう。ならば、私が看取ってあげられるうちに天国に行かせたい」と手術を断った理由を話す。
当時付き合っていた彼女の部屋で見たのだが、ヒクッヒクッとするほど泣いてしまった。結婚前で、もちろん子どもはいなかった時代なので、いまもう一度見たら、もっと泣くのは間違いないので見返していない。思えば当時から、子どもものにはなぜか涙腺が弱かった。『ドラえもん』の映画版や、TV番組の『はじめてのおつかい』、病気の子どものドキュメンタリーなんかは確実に泣く。番組の予告だけで泣いていることもある。ちなみに、映画やドラマは人に泣いているところを見られないからいいのだが、本は困る。僕は通勤時間に必ず本を読んでいるのだが、思いがけず子どももの感動シーンが出てくると、思わず涙が出てきてしまう。40歳半ばのオッサンが電車の中で本を読みながら泣いているのは、周りから見たら、そうとうヤバい。なので、会社の行きかえりに読む本の内容には気を付けている。
そんな涙もろい僕がちょっと前に映画館で見たのが、『世界にひとつのプレイブック』。主演のジェニファー・ローレンスが今年のアカデミー主演女優賞に輝いたので、見た人も多いと思うし、まだ公式のHPもあるので、あらすじに興味のある方はこちらでどうぞ。
周りから"絶対、泣ける!"と勧められていたので、かなり期待して劇場に足を運んだのだが、まず驚くのが観客のほとんどの観客が女性かカップル。ちなみにたまたまかと思って映画館の売店の子に普段の客層を聞いてみたら(仕事柄とにかく気になったことは聞く!)、9割近くは女性で残りはカップルの男だそうだ。
映画の出来については「面白い!」と太鼓判を押せる。ジェニファー・ローレンスは本当に素晴らしい演技だったし、父親役のロバート・デ・ニーロも良かった。でも一番の見どころはラストシーンだろう。というか、このラストシーンで、観客のほとんどが泣くから見どころと言っていいだろう。実際にこのシーンの瞬間、劇場中の女性たちからすすり泣きが聞こえてきた。「ズズ~」(鼻をすする音)「カサカサ」(ティッシュを出す音)がこだまするのだ。う~ん、すごい。ストーリーなのか、もう一人の主演のブラッドリー・クーパーがカッコよすぎるからなのかは分からないが、とにかく"泣きのパワー"は凄まじい。残念ながら僕は泣けませんでしたが...。

オッサンが涙する子どももの。女性たちが涙する恋模様。とにかくどちらもお勧めです!


─────────────────────────────────
『世界にひとつのプレイブック』
監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、
ロバート・デ・ニーロ、クリス・タッカー
制作国:アメリカ
制作年:2012年
─────────────────────────────────