今週の1本

« vol.155 『エターナル・サンシャイン』 by 中塚真子 | 今週の1本 トップへ | vol.157 『リアリティ・バイツ』 by桜井徹二 »

vol.156 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』 by藤田庸司


6月のテーマ:衣替え

何か新しい事、特に習い事やスポーツを始めようという時、"まずは見た目から入る"などとよく聞く。内容や向き不向き、上達のスピードはさておき、まずはそれっぽい服装や装備、いわゆる外見を整えてからスタートしようという考え方である。一歩間違えれば「あの人は見かけだけだ」、「見かけ倒しだ」などと後ろ指を指される恐れもあるが、そうしたプレッシャーをはねつけるエネルギーを生み、自分のモチベーションを高めることとができるという点では理にかなったアプローチと言える。また人の持つ先入観、固定観念、自己暗示力は驚くほど単純で、それっぽい格好をすることで、できるような気がしてきたり、よりその世界に入り込みやすくなったりする。そのうち次第に思考や技術、内面のほうが伴っていくこともある。

さて、今日紹介する1本はそんな"見た目"のトリックがストーリーを盛り上げるレオナルド・ディカプリオ主演の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』。実在した詐欺師、フランク・W・アバグネイル・Jrの自伝小説をベースにした脚本を基に、スティーヴン・スピルバーグがメガホンを取った大作である。

まるでカメレオンのごとく旅客機パイロット、医者、弁護士になりすまし、服装や振る舞いを巧みに変えつつ、偽造小切手で荒稼ぎするフランク(レオナルド・ディカプリオ)、それを追うちょっぴりマヌケなFBIの刑事カール・ハンラティ(トム・ハンクス)。二人の知恵比べ、頭脳戦が実にスリリングで面白い。その大胆不敵なフランクの詐欺手口が痛快で、悪者にもかかわらず観ていて思わず応援したくなる。また、豪華キャストにも注目したい。クリストファー・ウォーケンやマーティン・シーン、ひいては主人公フランクのモデルとなったフランク・W・アバグネイル・Jr本人(彼は逮捕後、刑期を全うし、後に実業家として成功した)もカメオ出演している。ただ、映像翻訳者としての立場から一言言わせてもらえば、作品を一言で表現できる、ポップでコミカルな邦題がほしいところ。『誰か僕を捕まえて!』とか(笑)。
─────────────────────────────────
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
製作:ウォルター・F・パークス、スティーヴン・スピルバーグ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ジェフ・ナサンソン
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン
製作国:アメリカ
製作年:2002年
─────────────────────────────────