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2014年5月 アーカイブ

vol.179 『西遊記之大鬧天宮』 by李 寧


5月のテーマ:休み(holiday)

中国では、旧正月が近づくと「賀歳映画」が注目を集め始める。「賀歳映画」とは、新年が訪れる前に新しい年を祝うための、いわゆる新春映画だ。

今回紹介するのは2014年の賀歳映画の1つ、鄭保瑞(ソイ・チェン)監督の『西遊記之大鬧天宮』(英題:The Monkey King)。この映画は公開から 50日間で興行収入10.5億元(約147億円)を突破し、中国映画史上、興行収入10億元を超えた3作目の映画となった。ちなみに「大鬧天宮(だいとうてんきゅう)」とは、西遊記のうち、孫悟空が生まれてから五行山の下に封じられるまでの話を指す。

魔界の王である牛魔王と、天界を率いる玉帝が戦って天界は破壊されるが、女媧(じょか。古代中国神話に登場する、人類を創造したとされる女神)が自ら五色の石になって天を補修する。その時、かけらの1つが人間界に落ち、"石猿"の孫悟空となる。敗北した牛魔王は、妻の鉄扇公主と一族を火焰山に隠す。一方、須菩提祖師(すぼだいそし)に弟子入りした孫悟空は東海竜宮に行き、如意金箍棒(にょいきんこぼう)を無理矢理譲ってもらう。牛魔王は孫悟空の幼馴染である如雪(九尾の狐)を殺し、孫悟空の怒りを利用して、天界の転覆を図るが...。

『モーターウェイ』や『アクシデント』を監督した鄭保瑞(ソイ・チェン)がアクション・ファンタジーに初挑戦した作品で、ストーリーは全くの創作。83年に中国で大ヒットしたドラマ『西遊記』を見たことがある人ならすぐ分かるはずで、大鬧天宮に対してのイメージを完全に覆される。『西遊記』を全く知らない人には楽しめる映画だと思うが、私のように、つい過去の映画やアニメと比べてしまうタイプには、ちょっとやり過ぎかなと感じたところもある。でもあの孫悟空が恋に落ちるというのは新鮮で大胆だなと思った。

私にとってこの映画の何が一番凄かったかというと、衣装やCGだ。5時間かけたという孫悟空のメイクは、本当にイメージ通りの"孫悟空の顔"で実に素晴らしい! またチョウ・ユンファが、青い眼で神々しい衣装を着て宙を舞い、やさしい龍に変身して戦ったりする姿もとても綺麗だ。3D制作にはハリウッドの『アバター』や『ロード・オブ・ザ・リング』などを手がけたというチームが参加。韓国、日本、ドイツなどがチームで分担して処理したCGはシーンによって完成度にバラツキを感じたが、昔の中国映画より100倍いい出来だ。

中国映画が好きな人は、是非見てほしい。原作に詳しい人なら、いったん原作のことを忘れて、ハリウッドのスーパーヒーロー映画を見る気分で楽しむことをお勧めしたい。

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『西遊記之大鬧天宮』(英題:The Monkey King)
監督:ソイ・チェン
出演:甄子丹(ドニー・イェン)、周潤発(チョウ・ユンファ)、郭富城(アーロン・クォック)
製作国:中国 / 香港
製作年:2014年
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