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Vol.181「オンとオフの境目」 by藤田庸司


5月のテーマ:休み(holiday)

世間はGW真っ只中だが、フリーランスの映像翻訳者はいつも通り仕事をしている人たちが多い。携帯電話とパソコンさえあれば、大袈裟ではなく、世界中どこででも出来るのが、映像翻訳という仕事だ。旅行や帰省中でも、その気になれば移動中や深夜、早朝といった、少しの時間を見つけて作業ができる。

受講生との面談時に「将来はフリーランスとして働きたい」という声をよく聞くが、それは映像翻訳者が自分の生活スタイルや、スケジュールに合わせて仕事ができることに魅力があるからだろう。実際に盆や正月、GWなど、世間が休んでいるときに仕事を詰めて、世間が働いているときに旅行に出かけたり、趣味に興じたりするフリーランス翻訳者もいる。これだけ書けば、フリーランス翻訳者=自由奔放、何とも優雅な稼業だと思われるかもしれないが、もちろんその地位を築くには苦労が伴うし、努力や工夫も必要だ。例えば、いくら翻訳スキルが高くても、自室に篭っているだけでは、仕事にはありつけない。自ら仕事を生み出す営業術が必要だし、また単に仕事を増やせばいいというものでもなく、自分のスケジュールや目標収入に合わせて増やしていく計画性と案件管理能力が要求される。時々、共に仕事をしている翻訳者さんと話していると「この前の仕事は時給に換算すれば数百円ぐらいだったよ」という冗談交じりのボヤキを聞く。しかし、よくよく話を聞くと、よりしっかりしたスケジュール管理とワークフローで、作業効率を上げられるケースが多いように思える。そして、作業量と所用時間の関係、所要時間と報酬の関係を考えるとするならば、あとはその人の仕事に対する考え方だろう。

情報を収集しながら言葉を選び、訳文を練り上げていく翻訳作業にはある程度の時間がかかるのは仕方ない。とかく作品の世界にのめり込んでいくと時間が経つのを忘れがちになる。ドキュメンタリー番組を訳していると、テーマについて調べれば調べるほど、新たな発見が楽しくなり、気が付けば数時間経っていたりする。また、ドラマを訳していると、クライマックスなど登場人物の気持ちを表現するベストなセリフを求め、気が付けば夜が明けていたりする。翻訳は時間を掛けたければ掛けたいだけ掛けられるし、瞬時に片付けようと思えば片付けられるもの。だからこそ、楽しくもクリエイティブな時間をいかにコントロールするか? いかに自分なりの答えを導き出すか? 時間と創作の折り合いを上手くつけることが必要となってくるのだ。作品の世界に入り込むと、食事中や入浴中、寝ている間(=夢の中)ですら翻訳について考え続けていたりする。そうなってくると、もはやオン(就業)、オフ(休業)の境目は限りなく曖昧になり、究極的には生きている時間すべてが就業時間にあたると言えてしまう。

翻訳だけで生計を立てていくこと=フリーランスと捉えがちだが、実はオンとオフの境目が消えた時が、本当の意味での"フリーランス"であり、それは就業形態を示す言葉ではなく、人の生き方を示す言葉なのではないか? と考えたりする今日この頃である。